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2001年6月・水無月の巻
あとのない仮名 by 山本周五郎 |
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殺された道案内 八州廻り桑山十兵衛 (ころされたみちあんない・はっしゅうまわりくわやまじゅうべい)
佐藤雅美
装画:風間完 |
♪八州廻り・桑山十兵衛の活躍を描くシリーズ第2弾。八州廻りの十兵衛があちこちで起こる事件を解決するシリーズだが、今回は剣の師匠である、寺田五郎右衛門(中西派一刀流で学んだ跡、平常無敵流を学び、後に天真一刀流を開く。白井亨、高柳又四郎と並んで中西派の三羽烏とも呼ばれている)や若き日の千葉周作が登場したり、十兵衛の初恋の女・初枝が現れたりと、ファンには楽しめる作品。 木崎で女郎屋も営む問屋伊勢崎屋源兵衛が、シリーズを通していい味を出している。 物語●「木崎の色地蔵」桑山十兵衛は、饂飩屋で日光例幣使のお供の不正の話を聞いた…。「小幡に七蔵なければいい」嫌われ者のワル、七蔵が何者かに殺された。事件の始末を十兵衛に依頼された…。「順休さんの変死」目安箱に訴状があった。差出人は本所松坂町の百姓宿に逗留している旅の僧・順休だった…。「三筋立結城縞の子供着」掛取り金三百両を持って若い手代が失踪した。手代の跡を追って、十兵衛は上総へ向かった…。「殺された道案内」忍の道案内(関八州の岡っ引的存在)が殺されたが、十兵衛は事情があって忍の町に足を向けたことがなかった…。「公方様の気まぐれ」箱訴状をめぐっていたずらがあり、実状を解明する旨、十兵衛に命が下った…。「途方に暮れた顔」十兵衛は、天真一刀流寺田五郎右衛門門下の兄弟子で御家人の土屋聡五郎より千葉周作に意見するように命じられた…。「春の野に夢」前島で川留めにあった十兵衛のもとに伊勢崎屋源兵衛が、かつて抱えていた遊女・おそめのことでやってきた…。 目次■木崎の色地蔵|小幡に七蔵なければいい|順休さんの変死|三筋立結城縞の子供着|殺された道案内|公方様の気まぐれ|途方に暮れた顔|春の野に夢|八州廻りについて――あとがきに代えて ここから始まる本のリンク▼『八州殺し』(佐伯泰英著・日文文庫) |
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明治十一年の贋札(フェイク・マネー) (めいじじゅういちねんのふぇいく・まねー)
舞岡淳
カバーイラスト:山本タカト |
♪デビュー作『明治九年の謀略』が面白かった作者の第2弾。最近、明治初期の贋札事件を扱った作品(渡辺房男著『ゲルマン紙幣一億円』など)が続けて発表されて、ホットな題材の一つといえる。前作では、広沢真臣殺害事件の謎を盛り込んだが、今回は贋札事件の謎を織り込んでいる。 19世紀後半のパリを舞台の一つにしていることもあり、ハイカラな印象を与える時代小説になっている。男同士の友情そして、革命というテーマもフランス的か。 また、同時代人のロートレックを登場させるあたりは、山田風太郎さんの『警視庁草紙』を彷彿させる。 物語●司法省警保助兼大警視の川路利良は、パリの警察機構の視察のために、パリの地を踏んだ。土産物を探してパリの裏町に迷い込んだ川路は、小さないざこざからステッキをもった三十人ばかりの男たちに囲まれ窮地に陥った。そのとき、謎の日本人のリュウ(元水戸藩士・風戸龍三郎)に助けられ、親交を結んだ…。 目次■第一章 一八七三年 パリ/第二章 贋札は海を越えて/第三章 秘密結社《四季の会セゾン》/第四章 川路利良の孤影/第五章 尾張青松葉遺聞/第六章 対峙する二人/第七章 暗闘、影と影/第八章 裏切りへの罠/第九章 銀座夜想曲ノクチュルヌ/第十章 幻のコミューン/第十一章 竹橋事件の闇/第十二章 忍び寄る跫音/第十三章 政府大官の魔手/第十四章 死闘の果てに/第十五章 男たちの挽歌/第十六章 落日の再会/終章 再びパリへ/後記 ここから始まる本のリンク▼『警視庁草紙』(山田風太郎著・ちくま文庫) |
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沖田総司・魔道剣 (おきたそうじ・まどうけん)
加野厚志
カバーイラスト:毛利彰 |
♪最強にして最悪の敵が、沖田総司の前に出現! ますます快調なシリーズ第3弾。小生の初の解説にご期待ください。実は加野さんに解説を依頼されたとき、作品は読んでいなかったが、前2作(『沖田総司・暗殺剣』『沖田総司・非情剣』)の総司と龍子のコンビネーションの妙を楽しんできたので、シノプシスだけ教えてもらって、シリーズの全体について解説させていただいた。 改めて物語を読み通してみると、史実と虚構がパラレルで展開してゆき、大いに楽しめる作品に仕上がっている。とくに、総司と龍子のコンビが、《偽総司》の実体に迫って行くところに捕物帳的な楽しみを感じる。 前作で総司と甘味を相伴した、見廻組与頭の佐々木只三郎が、重要な役回りで登場するのもポイント。新門辰五郎も登場する。 物語●祇園の路地を烏丸龍子と歩く新選組一番隊長沖田総司は、京の闇に跋扈する魑魅魍魎、罪のない女子どもまで手にかける剣鬼《沖田総司》に出会った。屋根の上から舞い降りた《沖田総司》は、鴨川ぞいを巡回する六人の見廻組の組士たちを斬殺した。目前で《偽総司》の凶行を目撃した新選組一番隊長である総司は…。 目次■地獄の傀儡師が闇に舞う|化野に邪鬼を追う|夢の中にまた夢を占う|乙女椿は春刻に散る|闇夜に地獄の蓋を開け|剣士は暗き魔道に生きる|奈落に魔除けの笛が鳴る|解説 理流 ここから始まる本のリンク▼『女陰陽師』(加野厚志著・祥伝社文庫) |
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政次、奔る 鎌倉河岸捕物控 (せいじ、はしる・かまくらがしとりものひかえ)
佐伯泰英
装画:浅野隆広 |
♪『橘花の仇』に続く、「鎌倉河岸捕物控」シリーズ第2弾。金座裏の宗五郎の金流しの長十手が悪を討つ!前作では、鎌倉河岸の酒問屋豊島屋で働く浪人の娘・しほが主人公だったが、今回は、タイトルにある通り、呉服屋の手代・政次を中心に物語は進む。 賢くて行動力があり、三人組(船頭の彦四郎、岡っ引の手先の亮吉)のリーダー格であり、前作では子どものいない金座裏の親分から跡を継がないかと打診されただけに、今回の活躍ぶりも期待されるところ。 作品は相変わらずの読み味の快さがあり、シリーズの今後の展開も気になるところ。
物語●正月二日、日本橋通二丁目の呉服屋松坂屋の隠居・松六は、手代の政次を供に、朝から年始廻りをしていた。その最後に愛宕下の鎧小路にある、荒れ果てた屋敷に立ち寄った。松六は廃墟と化した屋敷を見回して「あの日から十四年か……」と呟いた。すると、無住の廃屋から潜んでいた男たちが現れ、二人を襲った…。 目次■序章/第一話 噺家殺し/第二話 少女誘拐/第三話 薮入りの殺人/第四話 ちぼの庄太/第五話 むじな長屋の怪/第六話 天明四年の謎 ここから始まる本のリンク▼『密命』(佐伯泰英著・祥伝社文庫) |
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サムライの掟 (さむらいのおきて)
山本博文
カバー絵:村上豊 |
♪江戸時代研究で知られる筆者の肩の凝らない読み物。風呂読用に入手。『江戸お留守居役の日記』で日本エッセイストクラブ賞を受賞した後、『THIS IS 読売』誌から依頼されて執筆した歴史エッセイ集。 官僚化されていく武士社会がいろいろな事例を紹介しながら描かれていて、現代に通じる日本社会の特質が明らかにされていく。 萩藩江戸留守居役である、「福間彦右衛門覚書」を史料としてうまく使っていて、史料自体も面白そうなので、『江戸お留守居役の日記』の方も読んでみたい。 読みどころ●ビジネス月刊誌に連載した歴史エッセイということで、現代のサラリーマンに共感できるテーマを中心にわかりやすく綴られた歴史エッセイ。リストラや能力主義と年功序列など、武士道の本質に触れたパートと大岡越前守や鬼平などTVドラマでよく知られた人物の実像を紹介したパートなどから構成されている。 目次■はしがき|I 武士道の本質(権力者の影/加藤清正の夢/加藤清正は知将だったか/主君に叱責されたとき/薩摩藩のリストラ/能力主義と年功序列/女手形/官位と序列/お留守居役の子孫/忠臣蔵の真実/身柄「お預け」/武士道書の読み方/「利己的」な武士たち)|II 江戸の世相(江戸の屋敷売買/門前の捨て子/藩邸前の乱心者/奉公人の欠落/すご腕官僚/白は吉兆/大岡越前守の判決/無心のツケ/羊かんの味/流行りすたり今昔/鬼平の裁き/魚心あれば水心/江戸の夕暮れ族/女装するおとこ)|III 武士たちを動かすもの(参勤交代のはじまりと道中の苦労/熊本細川家の生き残り戦略/江戸初期の賄賂事情と大名留守居役/吉宗の人材登用神話の虚実)|初出誌一覧/文庫版へのあとがき |
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冬のつばめ 新選組外伝 京都町奉行所同心日記 (ふゆのつばめ)
澤田ふじ子
カバーイラスト・デザイン:蓬田やすひろ |
♪以前に新潮文庫版を読んだが、その後絶版になり残念に思っていた作品。幕末の京を舞台にした連作捕物帳。八王子の千人同心の二男で、武州日野に生まれ、十八歳のとき、江戸南町奉行所同心大仏(おさらぎ)権栄門の養子になり、南町奉行黒川備中守盛泰の口利きで京都東町奉行所同心として着任した大仏伝七郎が主人公。江戸・小石川小日向柳町の試衛館主近藤周助に、天然理心流の剣を学び、土方歳三や近藤勇、山南敬助、沖田総司らと竹刀を交えてきたというところがミソ。 幕末の動乱や新選組の活躍を綴りながら、京の市井で起こる事件を描くところが面白い。しかも事件解決の糸口を求めて新選組の屯所へ土方らを訪ねていったりもする。 物語●「冬のつばめ」表具師宗徳の家から出火し、焼け跡から真っ黒になった宗徳の焼死体が発見され、行方不明になった弟子の源次郎に嫌疑がかかった…。「夜寒の寺」鹿ケ谷村の庵に住む出家者・妙円が行方知れずになり、室内はひどく荒らされた。後には2首の発句が残されていた…。「池田屋の虫」祇園祭りの宵宮を控えてにぎわうところに、枡屋喜右衛門なる人物の捕縛が知らされ、奉行所の役人に緊急召集がかかった…。「高瀬船」伝七郎と配下の岡っ引宗助は、与力の篠田平兵衛に誘われて慈眼寺に墓参りに出かけた…。「人斬り」陶器商の肥前屋に押しこみ強盗が入り、店の者を人質に立てこもった…。「あいらぶゆう」二条の町番屋の弥七は、長屋の隣家の夫婦喧嘩の仲裁に呼ばれた…。「七条月夜」扇商の番頭利蔵は、夜なべ仕事を終えた後、油小路の斬り合いを目撃した…。「御用盗」御用盗(攘夷や徳川家に味方するためなどと勝手な理屈を並べて、商家に押し入って金を強要し、ときには一家を殺害している凶賊)が頻発する中で、茶商に押し込み強盗が入った…。 目次■冬のつばめ|夜寒の寺|池田屋の虫|高瀬船|人斬り|あいらぶゆう|七条月夜|御用盗|解説 大野由美子|澤田ふじ子 著書リスト ここから始まる本のリンク▼『まんがら茂平次』(北原亞以子著・新潮文庫) |
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新選組血風録 (しんせんぐみけっぷうろく)
司馬遼太郎
カバー:風間完 |
♪加野厚志さんの最新文庫の解説を依頼され、資料として購入。今度こそ、読まねばと心を入れ換えて読み始める。新選組隊士の生き様、死に様に焦点をあてた短編集、とくに時系列にはなっていない。有名・無名・架空?の隊士が登場し、彼らの行動を通して、新選組というものの成り立ち、存在理由、その果たした役割を浮き彫りにしている。 隊士一人一人のエピソードを通して、動乱の時代を生き抜いた男たちが魅力的に描かれていて、一世紀以上過ぎても、今なお、多くの人を惹きつけて止まない「新選組」パワーの一端を垣間見た思いがする。子母澤寛さんの新選組三部作や司馬さんの『燃えよ剣』と並んで、新選組を理解するために恰好のテキストである。 個人的には、「池田屋異聞」「鴨川銭取川」などでスポットを当たられた山崎蒸に興味を持った。 大島渚監督映画の「御法度」の原作となった、「前髪の惣三郎」も収録。 物語●「油小路の決闘」篠原泰之進は、ひまさえあれば耳の穴を洗うという癖をもっていた…。「芹沢鴨の暗殺」土方歳三がその男・芹沢鴨と初の顔合わせをしたのは、公儀肝いりによる浪士団に徴募された隊士の会合のときだった…。「長州の間者」京都浪人深町新作は、竹生島への代参のおり、小間物屋の娘おそのと出会った…。「池田屋異聞」鍼屋の又助と呼ばれた頃の山崎蒸は、鏡心明智流の道場で、“又助の突っころばし”として有名だった…。「鴨川銭取川」心形刀流の達人で新選組五番隊士・狛野千蔵が斬られた。監察の山崎蒸は、五番隊隊長の武田観柳斎の言動に不審を感じた…。「虎徹」近藤勇は、芝愛宕下の日蔭町の相模屋伊助の店で、ニ十両で虎徹を求めた…。「前髪の惣三郎」美貌で前髪を残す若者・加納惣三郎が新選組に応募し、勝ちぬき試合の最後で久留米藩脱藩浪士・田代彪蔵とあたった…。「胡沙笛を吹く武士」髪結いの小つるは、山の小寺で笛を吹く若い武士(新選組隊士・鹿内薫)に出会った…。「三条磧乱刃」芸州浪人国枝大二郎は新選組に入隊し、すぐに日向ぼっこをしている老武士と知り合った…。「海仙寺党異聞」一番隊の伍長で甲州浪人・中倉主膳は隊の中で評判がよくなかった。彼を弁護していたのは同国の出身の長坂小十郎だけだった…。「沖田総司の恋」総司が妙な咳をすることに、土方が気付いたのは元治元年三月のころだった…。「槍は宝蔵院流」斎藤一が宝蔵院流の槍の名手・谷三十郎と関わりをもったのは、淀川遡上の三十石船の中だった…。「弥兵衛奮迅」近藤は、私闘の末、相手の武士を殺した、薩摩藩士富山弥兵衛を入隊させた…。「四斤山砲」永倉新八を訪ねて出羽浪人大林兵庫が花昌町の屯営にやってきた…。「菊一文字」総司は、懇意の刀屋播磨屋道伯のもとに寄った帰りに、刺客に遭った…。 目次■油小路の決闘/芹沢鴨の暗殺/長州の間者/池田屋異聞/鴨川銭取川/虎徹/前髪の惣三郎/胡沙笛を吹く武士/三条磧乱刃/海仙寺党異聞/沖田総司の恋/槍は宝蔵院流/弥兵衛奮迅/四斤山砲/菊一文字/解説 巌谷大四 ここから始まる本のリンク▼『新選組始末記』(子母澤寛著・中公文庫) |
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大江戸美味草紙 (おおえどむまそうし)
杉浦日向子
カバー装画:平松礼二 |
♪最近また、東京の中に残る江戸情緒を探しに町歩きを始めた。そんな折に、気になるのが町で出会う食べ物。というわけで食指の動く一冊。江戸の川柳集から引用した川柳を随所に織り込み、江戸の食文化に触れた肩の凝らない江戸学入門書。“隠居生活”と宣言している著者らしい、脱力感が快い。 数の子、トロが、江戸時代は下賎な食べ物とされていたり、寿司、鰻、天ぷらなどが屋台で売られたファストフードだったり、女性や妻子持ちはふぐをたべなかったりと“目ウロコ”の話がいっぱい。著者のイラストをはじめ、多数の図版があり、ページ数も少なく、あっという間に読めた。 読みどころ●「どじやう」と「どぜう」の違い、なぜ江戸人は初鰹にこだわったのかをはじめ、寿司、そば、天ぷらなど江戸の食生活をテーマに、江戸情緒に浸れる一冊。 目次■ともあれ初春/まだ浅き春かな/野ゆき磯ゆき/初鰹ラプソディー/イキのいい奴/暑気払いの切り札/天竺浪人ふらり来て/初秋の便り/秋本番/たかがイモ、されどイモ/冬の足音/師走のぬくもり/甘いものがたり/酔い醒めて/くるわのグルメ/台所太平記/平成の安穏族へ 山本益博/引用図版出典/大江戸美味目録 ここから始まる本のリンク▼『風流江戸雀』(杉浦日向子著・新潮文庫) |
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小石川御家人物語 (こいしかわごけにんものがたり)
氏家幹人
カバー装画・装丁:蓬田やすひろ |
♪幕臣・小野仙右衛門直賢の日記から御家人の悲喜こもごもの日常のドラマを活写する歴史ノンフィクション。日記の筆者の孫娘(といっても齢二百四十八歳の老嬢)小野銀子(ギン)が、日記を引用して、江戸時代中・後期の幕臣の家族の暮らしぶりをテーマ別に十五夜にわたって、夜話をするという、凝った形式をとっている。 現代に比較したり、家族や使用人、同僚などの話を交えたりして、結婚・離婚、仕事ぶり、衣食住、病気や刑罰などについて事細かに紹介し、興味深かった。 直賢の孫娘(ギンではない、従妹にあたる)の夫に根岸九郎左衛門鎮衛(=「耳嚢」の筆者として知られる南町奉行根岸肥前守)というので、ちょっと驚いた。 読みどころ●江戸中期、二十九年間一日も欠かさずに綴られた、幕臣・小野仙右衛門直賢の日記(『官府御沙汰略記』または『略日記』)をもとに、幕臣の生活ぶりがわかる書。 目次■発端/第一夜 結婚の条件/第二夜 優しい離婚/第三夜 女たちの就職/第四夜 大いなる出勤/第五夜 叔父さんは受験生/第六夜 大きな江戸の小さな屋敷/第七夜 耕やす人々/第八夜 転勤/第九夜 武士ってなに/第十夜 檻の中/第十一夜 病気の話/第十二夜 幕臣たちの生活倶楽部/第十三夜 婢女/第十四夜 おばあさんは忙しい/第十五夜 老いの愉しみ/後記/関係者家系図/文庫版あとがき |
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あとのない仮名 (あとのないかな)
山本周五郎
カバー:佐多芳郎 |
♪ゲストブックでお薦め度の高い本書を入手。思いっきり疲れたときにぴったりの一冊。「桑の木物語」は、「松風の門」を思い出させる佳編。「竹柏記」にジーンとくる。派手さはないが、疲れた心に染入る作品集。「討九郎(とうくろう)馳走」に出てきた水野忠善は、どこかで聞いた気がすると思ったら、「蕭々十三年」(『おごそかな渇き』)で出てきた殿様だった。 「しづやしづ」は、「将監さまの細みち」と同系列のちょっとせつない物語だ。「あとのない仮名」は“職人もの”に属する、作者の最晩年の作品の一つ。 物語●「討九郎馳走」無骨者で礼儀作法に疎い徒士組番頭・兼高討九郎は、主君の命で馳走番を命じられたが…。「義経の女」義経の遺児・千珠のもとに、京の義理の姉・讃岐より文が来た…。「主計は忙しい」原田道場の師範代を務める牧野主計(かずえ)は、病気がちな師に代わり道場を切り盛りし、いつも忙しがっていた…。「桑の木物語」その藩に伝わる“杏花亭筆記”には、土井悠二郎について、生まれつきの奔放無埒で勤め方よろしからずと記載されていた…。「竹柏記」“高安律儀之助”という仇名をもつ孝之助は、周囲の反対を押し切って、杉乃を妻に迎えた…。「妻の中の女」江戸から実力者の家老・信夫杏所が帰国したという報を受けて、藩の重臣たちは動揺した…。「しづやしづ」仲間たちと深川の岡場所にやってきた貞吉は、しづと出会った…。「あとのない仮名」植木職の源次(もとじ)は、才能に恵まれた職人で、天成の美男ぶりで女たらしといわれていたが…。 目次■討九郎馳走|義経の女|主計は忙しい|桑の木物語|竹柏記|妻の中の女|しづやしづ|あとのない仮名|解説 木村久邇典 ここから始まる本のリンク▼『松風の門』(山本周五郎著・新潮文庫) |