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2001年5月・皐月の巻
新選組物語 by 子母澤寛 |
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幻の城 慶長十九年の凶気 (まぼろしのしろ・けいちょうじゅうきゅうねんのきょうき)
風野真知雄
カバーデザイン:野津明子(芦澤泰偉事務所) |
♪快作『水の城 いまだ落城せず』を連想させるタイトルにニヤリ。今度は真田幸村が活躍する大坂の陣ものだ。八丈島に流刑になった戦国武将宇喜多秀家を真田十勇士が奪還に行くという発想が楽しい。同時に、佐助や才蔵、根津甚八(俳優ではない)、海野六郎ら、十勇士たちの活躍の場の与え方と消し方に注目した。戦国時代を舞台にしているが、伝奇色の色濃い作品で、その観点から楽しみたい。 目次■序章 最後の夢/一章 九度山脱出/二章 黄金の城/三章 その人の名/四章 瓜二つ/五章 闇船/六章 海路/七章 中納言さま/八章 月を撃て/九章 赤い茶室/十章 面影/十一章 頬紅/十二章 美しき戦さ/十三章 豪姫/十四章 決戦/十五章 執念/十六章 炎上/終章 海辺の二人/あとがき/解説 菊池仁 ここから始まる本のリンク▼『真田太平記』(池波正太郎著・新潮文庫) |
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はやぶさ新八御用旅 東海道五十三次 (はやぶさしんぱちごようたび・とうかいどうごじゅうさんつぎ)
平岩弓枝
装画:西のぼる |
♪『はやぶさ新八』の最新作は東海道行という新趣向。旅情も楽しめて、東海道四百周年にふさわしい一冊。根岸肥前守の密命を帯びて京都に旅立つ隼新八郎。謎の姫君や商人の一人娘、遊芸の師匠ら、美女たちに囲まれながら旅を進めるのが何とも華やか。『はやぶさ』ファミリーの小かんも登場し、活躍。 『はやぶさ新八』シリーズの年代推定が間違っていたようなので、時間があるときにもう一度検証してみたい。
物語●南町奉行内与力隼新八郎は、京の一条家御用人まで根岸肥前守の代人として祝物を届けるために、京上りをすることになり、下僕の治助とともに江戸を旅だった。 目次■江戸より箱根二十四里二十八丁/箱根より江尻十七里七丁/江尻より藤枝八里四丁/藤枝より浜松十四里三十四丁/浜松より二川六里/二川より宮十五里十七丁/宮より四日市十里八丁(内 海上七里)/四日市より京二十六里十八丁(但し途中追分より白子まで廻り道を除く) ここから始まる本のリンク▼『水鳥の関』(平岩弓枝著・文春文庫) |
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大蛇の橋 (おろちのはし)
澤田ふじ子
装幀・装画:蓬田やすひろ |
♪祝能で『道成寺』のシテに選ばれた若い武士が、人々の妬みを買い、許嫁を死に追いやる…。悲劇と復讐劇が見所の時代小説。蓬田さんの装画が面白さを予感させる。厚顔無恥で悲惨な事件が続く、現代の世相を反映して、「弱い者いじめ」に対する警告・教訓的な作品。人として生きるに絶対必要なものを思い出させてくれる本でもある。 主人公の大滝五郎助の真面目さ、一途さ、思いがせつなく、作者の入魂ぶりが感じられる。『幾世の橋』『虹の橋』、『天空の橋』、『見えない橋』など「橋」をテーマにした作品が多いが、むしろ『空蝉の花』につながる怒りと烈しさをもった物語である。
物語●大滝五郎助は、篠山藩お徒士組に属し、家禄五十俵の軽輩。城代家老に進言して、お城の石垣に取り付いて、石垣調べにあたっていたが、そのことで大勢の中から目立ち、周囲の妬みを誘った。 目次■序章 落日の花/第一章 霧の橋/第二章 宝暦暮雪/第三章 大蛇の鐘/第四章 末期の櫛/第五章 深い藪/第六章 あとの贄/終章 夏の雲/あとがき ここから始まる本のリンク▼『空蝉の花』(澤田ふじ子著・新潮文庫=絶版) |
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沖田総司恋唄 (おきたそうしこいうた)
広瀬仁紀
カバーデザイン:安彦勝博 |
♪最近、新選組づいている。いままで血腥い感じがして敬遠していたが、読み始めると新選組はディープだ。尾崎秀樹さんが、新選組と忠臣蔵に共通するものについて触れておられたが、まさに慧眼である。宿痾ともいうべき労咳と闘いながら、剣一筋に生きた沖田総司の青春を描く時代小説。あとがきで、「従来に確定資料とされていた先達の著述は十数冊を参考としたが、この物語の作中で描いた近藤勇、土方歳三、山崎蒸などの原型は、多くを松本良順の関係文書によって設定したといっていい。単に、作者の想像だけで創作したわけではないのである。したがって、文中で使用したさまざまな書簡、談話あるいは斬奸状、投げ文にいたるまで、いずれも原典によって記述したと自負することができる」と書いているように、ともすると少女マンガ型のヒーローになりがちな沖田総司像をリアリティをもった人物に描きあげている。 ウェットになりすぎず、いつも笑っている総司の明るさが全編に漂い、気持ちよく読めた。とはいえ、沖田総司と少女の心の交流場面などはジーンとくる。スパイ的な役割のせいで、陰気なイメージをもつ山崎蒸が好人物に描かれているのが面白い。 作者は1995年に亡くなられているが、姉妹編として『土方歳三散華』があるので、こちらも読んでみたい。 物語●沖田総司は、十五年も前の近藤勇と土方歳三の逸話を兄弟子の井上源三郎らから聞いて、面白くてたまらないというふうに笑った。ぶすっと苦り切った調子でいる土方のかたわらで、馬鹿笑いをし、平気な顔で無駄口を叩いていた。この若者が誰もが一様に敬遠している土方を兄と思い、近藤勇を父のように慕っていた…。 目次■多摩の河原/剣戟往来/洛中夏冬/慕情仏心/剣鬼の鈴/生々流転/あとがき/解説 高橋千劔破 ここから始まる本のリンク▼『沖田総司・非情剣』(加野厚志著・廣済堂文庫) |
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べらんめえ侍 (べらんめえさむらい)
多岐川恭
カバーイラスト:蓬田やすひろ |
♪『江戸智能犯』(1989年、大陸文庫刊)を改題。剣客の中で異彩を放つ平山行蔵を主人公とした表題作ほか6編を収録した短篇集。『玄白歌麿捕物帳』(笹沢左保著・光文社文庫)を読んで以来、ずっと気になる人物に平山行蔵がいる。忠孝真貫流の剣客であり、武芸百般に通じた軍学者であり、超人的な修練の実践者であり、忠孝の人である、江戸屈指の奇人を描いた小説が読みたかったので、興味深く読めた。 「足軽義士」は、『四十七番目の浪士』を思い出させる、寺坂吉右衛門にスポットを与えた忠臣蔵もの。 しかしながら、多岐川さんの本領発揮といえるのは、アウトローたちが粋に魅力的に描かれている「江戸智能犯」「焼芋屋の娘」「黒頭巾」「新景牡丹灯籠」である。 物語●「江戸智能犯」上総の寺の破戒僧・芳念は、江戸・品川の遊女屋でお梅と出会い、請け出す決心をした…。「新景牡丹灯籠」円朝の怪談噺で有名な牡丹灯籠。その登場人物、源助が語る本当の話とは…。「黒頭巾」夫を亡くしたおよねは、娘おちかと女中の三人で深川のしもた屋で暮らしていた。幕末の巷は物騒で黒頭巾の押込み強盗が流行っていた…。「焼芋屋の娘」古鉄屋の前で、大男の伝三郎が行き倒れになっていたところを古鉄屋の女房に助けられた。無芸大食で取り得がなく、みんなからいじめられていた伝三郎に近所の芋屋の娘お時がいつもやさしく接していた…。「逃げ込んだ流れ者」渡世人・五十松は、女出入りでやくざの親分に追われて、茶店を営む百姓夫婦のところで匿ってもらうことになった…。「べらんめえ侍」江戸後期を、兵法家、剣客としてしかも無骨な軽輩の伊賀者として生きた平山行蔵の奇人ぶりをお紺という粋筋の女を通して描く短篇。「足軽義士」吉良邸討入りに、陪臣の足軽として加わった寺坂吉右衛門の事件前と後を描いた短篇。 目次■江戸智能犯|新景牡丹灯籠|黒頭巾|焼芋屋の娘|逃げ込んだ流れ者|べらんめえ侍|足軽義士|解説 縄田一男 ここから始まる本のリンク▼『玄白歌麿捕物帳』(笹沢左保著・光文社文庫)、『四十七番目の浪士』(池宮彰一郎著・新潮文庫) |
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大江戸奇術考 手妻・からくり・見立ての世界 (おおえどきじゅつこう)
泡坂妻夫
装幀:菊地信義 |
♪奇術家としても知られる泡坂さんによる、江戸のマジック事情。図版を多数使用していて、わかりやすくひきこまれる。『宝引の辰捕者帳』などで、江戸の奇術を垣間見せてくれる、泡坂さんらしいユニークな江戸風俗文化入門書。奇術家としても活躍され、石田天海賞を受賞された筆者らしく、演者らしい視点と細かさ、こだわり、臨場感がなんとも言えずいい。 鎖国下の江戸で、海外と同じように、コインやロープなどの奇術が発達していったことが面白い。また、日本人の大好きな“見立て”について「南京玉すだれ」を引き合いに出して解説している。先日、たまたま、深川で見た、「南京玉すだれ」を思い出した。 読みどころ●陰陽道や放下・幻術をルーツに、手妻として花開いた江戸奇術のからくり世界を、推理、奇術に精通した時代小説の名手が解き明かした江戸を愉しむ一冊。コインや紐を使った座敷手品、水芸、お椀と玉の手練奇術などのやり方やたねを当時の奇術書を引用して紹介しています。からくり細工や時計、歌舞伎の大道具などにも言及。 目次■はじめに|第一章 奇術前史(卑弥呼のマジック/修験道の法術/陰陽道の方術/安倍晴明のマジック)|第二章 放下と幻術(散楽雑伎の渡来/田楽法師と放下僧/果心居士の幻術/種瓜植樹/馬腹術/塩屋長次郎の馬呑術/消えていった幻術)|第三章 はじめての奇術書『神仙戯術』(中国渡来の翻訳書/『神仙戯術』にある奇術)|第四章 趣味人の座敷手品(初期の奇術書/カード奇術の文献/江戸の科学手品/当てもの(メンタルマジック)/トランプの渡来/コイン奇術とロープ奇術/可愛いトリック)|第五章 プロの舞台奇術(プロの技を取り上げた奇術書/江戸の脱出奇術(エスケープマジック)/水芸のはじめ/曲独楽の秘密)|第六章 江戸の手練奇術(スライスハンドマジック)(手練技を書き記した本/小豆割り/お椀と玉/リングの奇術/面白い原理のコイン奇術/「ヒョコ」という奇術)|第七章 からくりと時計(竹田からくり/からくりの書/からくりの数数/水銀や砂の動力と時計仕掛け)|第八章 江戸の怪奇趣味(化物製造法/幻灯機の術/手が込んでいった怪奇趣味)|第九章 歌舞伎のからくり(歌舞伎のケレン/人形浄瑠璃の影響/からくりの種明かし本/大道具のスペクタクル/世界一速い早変わり/小道具のトリック/歌舞伎の新しいからくり)|第一〇章 奇術と料理(珍本「料理こんだて手品伝授」/手品と料理の関係/驚異の黄身返し/再度の挑戦/現代の黄身返し)|第一一章 伝承の奇術(南京玉すだれ/玉すだれの起源は不明/南京玉すだれの構造/滝の白糸/太夫の芸の流れ/和妻は身体の動きが大切/手妻と見立て/手妻の衰退)|第一二章 世界との交流時代へ(外国人が驚嘆した胡蝶の舞/いざパリ万博へ/寄席から大舞台へ)|あとがき―緒方奇術文庫について ここから始まる本のリンク▼『江戸の見世物』(川添裕著・岩波新書) |
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桂の花 幕末純愛伝 (かつらのはな)
加野厚志
装画:蓬田やすひろ |
♪『鮫』や『沖田総司・暗殺剣』などで、登場する桂小五郎と幾松。いままでとは別の側から見た二人にスポットを当てていて興味深い。逃げる桂小五郎、幾夜も待ち続ける芸妓・幾松、幾松を蔭で支える男衆・甚助。三人の愛憎関係が見事に描かれている。 桂小五郎というと、幕末時の活躍ぶりに比べて維新後にその影が薄くなった印象がある。その理由の一端がこの作品を読んでわかった気がする。逃げることでのみアイデンティティを感じていた小五郎が、逃げる必然性をなくした途端、精彩を欠いてしまった、といったところだろうか。 坂本龍馬(北辰一刀流)もそうだが、桂小五郎も神道無念流の名剣士にも関わらず、人を斬ることを避けつづけてきたところが、人間として興味深い。 物語●祇園祭の祭囃子が鳴り渡る中、三本木の芸妓・幾松は、八坂神社に無言詣りをしていた。たとえ打たれても、いったん始めた無言の行はつづけねばならない詣りの最中に、二人の酔漢に絡まれた幾松を、長身のハンサム侍が石つぶてを投げて助けた。――このお人だ! わたしが待っていたのは……。幾松はとりのぼせ、生娘のように身がすくみ、動きがとれない。しかも無言詣りの半ばで声を出して礼が言えない。十日後、無言詣りの霊験は現れ、幾松は〈待人〉にまた出会えた。それは、対馬藩の大島友之允が長州藩留守居役の乃美織江と桂小五郎を招いての宴席だった…。 目次■一章 祇園祭/二章 嵯峨の秋/三章 勤王芸者/四章 女密偵/五章 春嵐/六章 池田屋襲撃/七章 禁門の変/八章 脱出/九章 高杉挙兵/終章 再会/あとがき ここから始まる本のリンク▼ 『沖田総司・暗殺剣』(加野厚志著・廣済堂文庫) |
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新選組物語 (しんせんぐみものがたり)
子母澤寛
カバー画:蓬田やすひろ |
♪新選組研究のバイブル、子母澤さんの「新選組三部作」の完結篇。多くの新選組小説・時代劇の素材になっている。『新選組始末記』、『新選組遺聞』と読んできた人へのボーナスのような新選組小説集。著者が集めた資料や聞書きした話を小説の形で再構成し、われわれの前にわかりやすい形で著したもの。「流山の朝」がドラマチックで印象に残る。 『燃えよ剣』の土方歳三や、薄幸の美剣士として描かれることの多い沖田総司に比べて、なんか損な役回りと思っていた近藤勇がしっかりと描かれていて好感がもてる。逆に言えば、ここで近藤勇がしっかりと描かれているために、多くの作家たちは、他の新選組隊士にスポットを当てようとしたのかもしれない。 読みどころ●新選組銘々伝といった観のする「新選組物語」、鳥羽伏見の戦いから流山までの近藤勇の敗走を描いた「新選組」、新選組隊士・稗田利八への聞書き、近藤勇の最期を描いた「流山の朝」などを収録。 目次■新選組物語(隊士絶命記/人斬り鍬次郎/死損ねの左之助/隊中美男五人衆/近藤勇の屍を掘る/壬生心中/かくし女郎/月下の死骸)|新選組(一 流るる水/ニ 黄昏れ近く/三 笑窪/四 吟声/五 墨染/六 敗れて/七 大阪/八 紀州沖/九 江戸の春/一〇 春雨/一一 黒い猫/一二 青年たち/一三 ただ一人/一四 またも敗れて/最後 最後の陣容)|新選組聞書―稗田利八翁思出話|流山の朝|解説 尾崎秀樹 ここから始まる本のリンク▼『幕末袖がらみ』(東郷隆著・文藝春秋) |