新・極楽の読書録
2000年11月・霜月の巻

阿哥の剣法 よろず請負い by 永井義男
野獣めざむる by 高橋直樹
蒙古来たる 上・下 by 海音寺潮五郎
啓順凶状旅 by 佐藤雅美
幻剣 蜻蛉 by 戸部新十郎
寛永無明剣 by 光瀬龍
蔡倫 紙を発明した宦官 by 恂{史
幻の声 髪結い伊三次捕物余話 by 宇江佐真理
尾張柳生秘剣 by 火坂雅志



尾張柳生秘剣
(おわりやぎゅうひけん)

火坂雅志
(ひさかまさし)
[剣豪]
★★★☆☆

カバー画:横山明
装丁:横山明
時代:寛永十四年(1637)
場所:尾張・小林郷、宮ノ宿、名古屋城下、伊吹山ほか
(祥伝社文庫・381円・00/11/10第1刷・150P)
購入日:00/11/03
読破日:00/11/30

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尾張柳生秘剣 『柳生烈堂』シリーズで活躍する火坂さんの柳生もの。柳生新陰流の道統を継ぐ、剣の達人で尾張徳川家の兵法指南役、柳生兵庫助利厳(としよし)の長男・新左衛門清厳(きよとし)を描く、中篇。江戸柳生家の総帥・宗矩に比べると、政治に淡白で、面白味に欠く印象があった、兵庫助の新しい面がうかがえて面白かった。
武道好きな火坂さんらしく、剣の対決場面の臨場感があっていい。

物語●二十三歳の柳生新左衛門清厳(きよとし)は、尾張徳川家の兵法指南役、柳生兵庫助利厳(としよし)の長男である。本来であれば、剣の名門柳生家の輝かしい栄光を一身に受け継ぐべき立場にあった。事実、尾張藩主徳川義直の小姓として三百石を得ていた。ところが、ある事件がもとで、尾張柳生家の別邸に蟄居させられてから、三月が経っていた…。

目次■第一章 蟄居/第二章 剣鬼/第三章 胡蝶

ここから始まる本のリンク▼『柳生非情剣』(隆慶一郎著・講談社文庫)

幻の声 髪結い伊三次捕物余話
(まぼろしのこえ・かみゆいいさじとりものよわ)

宇江佐真理
(うえざまり)
[市井]
★★★★☆☆
[再読]

装画:東啓三郎
装丁:坂田政則
解説:常盤新平
時代:寛政六、七年ぐらいか
場所:深川蛤町、茅場町、亀島町、畳町、京橋炭町ほか
(文春文庫・448円・00/04/10第1刷、00/05/30第2刷・276P)
購入日:00/11/23
読破日:00/11/24

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幻の声 髪結い伊三次捕物余話 髪結いの伊三次と深川芸者・文吉の関係が、面白いシリーズの第一作。1998年2月に読んで以来の再読である。初めて読んだとき、捕物の部分に目がいってしまったが、この作品は主人公の伊三次やお文、不破を中心とした、人情にスポットを当てた市井小説の色合いが濃いことに気付く。その観点から読むと、一幕のすぐれた舞台のような構成力、人間描写の巧みさに舌を巻いてしまう。現在の活躍ぶりも当然といったところか。「捕物帳」ではなく「捕物余話」とタイトルについているところがミソ。
芸者というと、今まで可哀想な境遇という意識があったが、江戸時代、女性が自身の実力でつける唯一の職業といっていい。いわば江戸のキャリアウーマンといった側面もある。深川を代表する芸者・文吉ことお文の意地と張りもその表れであり、恋人・伊三次とのやりとりにも随所にそれが見れて面白い。
捕物の手伝いから足を洗い、廻り髪結いの身から一本立ちして、床(店)を構えたいと考える伊三次と、いつかは町家のおかみさんになることを夢見る芸者のお文。やはり普通がいちばんか。

物語●「幻の声」かどわかしの下手人が捕まった。その情婦の深川芸者が、下手人の代わりに名乗り出た…。「暁の雲」お文の先輩で、相思相愛の末、一緒になった、塩魚問屋のおかみの亭主が突然死んだ…。「赤い闇」隣家に住む同僚の同心が、不破にある悩みを打ち明けた…。「備後表」少年時代の伊三次を支えた畳表織りの“おっ母ァ”の最後の願いとは…。「星の降る夜」大晦日、伊三次は仕事を終えて裏店へ帰り、我が家で見つけたものは…。

目次■幻の声|暁の雲|赤い闇|備後表|星の降る夜|解説 常盤新平

ここから始まる本のリンク▼『御宿かわせみ』(平岩弓枝著・文春文庫)

蔡倫 紙を発明した宦官
(さいりん・かみをはつめいしたかんがん)

恂{史
(つかもとせいし)
[中国]
★★★☆☆☆

カバーイラスト:諏訪部博之
カバーデザイン:小泉孝司
時代:永平十八年(AD75年)
場所:後漢・洛陽、白馬寺ほか
(祥伝社文庫・381円・00/11/10第1刷・172P)
購入日:00/11/03
読破日:00/11/14

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蔡倫 紙を発明した宦官 大長編小説が多い中で、あえて読みやすい中篇小説に着目した祥伝社文庫の戦略は興味深い。もちろん、確かな作家選びがあってこそだが…。『霍去病』などで注目の中国時代小説の気鋭の作品が収録されたのは嬉しい。
紙を発明した宦官として知られる、後漢の蔡倫を主人公とした中国小説。中篇小説の中に、蔡倫が紙を発明するまでの過程を描くとともに、蔡倫が関わりを持つことになル当時の政治情勢も織り込まれていて、スピード感を持って読める。ずっと恂{さんの作品を読んでみたいと思っていたので、ウォーミングアップとしては最適だった。これは、中篇小説の長所のひとつかも。
当時の政治状況も描いているので、学者の班固やその異母弟・班超(西域で活躍した将軍)なども登場して、興趣をそそる。また、宦官が王宮内で力を持っていくようになった背景もよくわかった。

物語●王宮内の図書館にあたる東観(とうかん)で、書物を一心不乱に読んでいた宦官・蔡倫は、背後から罵声をあびて、背中を突かれて、書物を取り落とした。この当時の書物は、綴じ紐でまとめられた、竹簡であった。怒りの主は、校書郎の学者の班固だった。班固は、後に、『漢書』を著したことで知られる…。

目次■なし

寛永無明剣
(かんえいむみょうけん)

光瀬龍
(みつせりゅう)
[時代SF]
★★★★☆

装画:森流一郎
装幀:芦澤泰偉
解説:縄田一男
時代:寛永十一年。
場所:品川弘明院、四谷塩町、揚場町、矢の倉、村松立場、小石川柳町、駒込、四谷鷹匠町ほか
(角川春樹事務所ハルキ文庫・820円・00/10/18第1刷・368P)
購入日:00/10/14
読破日:00/11/13

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寛永無明剣 ハルキ文庫では、かつて角川文庫で人気を博した作品の復刊を続けている。なかなか賢いやり方である。いずれにしても幻の時代SFの傑作が甦ることは嬉しい。光瀬さんと聞くと、子どもの頃、マンガで見かけた『百億の昼と千億の夜』、『ロン先生の虫眼鏡』などの印象が濃くて、SF作家としてのイメージが強い。『寛永無明剣』は、時代小説の形を借りたSF小説。
時代小説には、伝奇小説といわれるジャンルがある。非サイエンスフィクションといったところか。また、SF時代小説の書き手としては、半村良さんのことが頭に浮かぶ。光瀬作品の特徴は、時代小説部分のリアリティとSF小説部分の科学性の高さと豊かな空想力が絶妙に融合されている点であるように思われる。
柳生一族(宗矩や十兵衛ら)や松平伊豆守、春日局らが登場し、時空を超えた戦いを繰り広げる。昭和44年(1969)に書かれた作品とは思えない新しさがある。

物語●豊臣方の旧臣・石川修理が老中襲撃の意図を持って江戸に潜入した。老中松平伊豆守の特命を受けた、勘定頭支配諸国産物吟味方与力より北町奉行所へ与力添役として出向している六波羅密(ろくはらみ)たすくは、北町奉行所の役人たちと、一味が隠れ潜んでいる品川弘明院を取り囲んだ…。

目次■一 品川弘明院/ニ 乱刃/三 柳生来たる/四 柳生一族/五 丹阿弥由紀/六 町にひそむもの/七 襲撃/八 さざれ石/九 政商の動き、あわただし/十 背後の影/十一 忍び/十二 暗闇/十三 春日局/十四 お丁字長屋/十五 決戦村松立場/十六 焼打ち/十七 月光/十八 稲葉佐渡守/十九 紅蓮/二十 おれん/二十一 円二郎占い/二十ニ 江戸討入り/二十三 庄田喜左衛門/二十四 青の魚/二十五 舟宿のおかみ/二十六 時間局/二十七 審判の時/二十八 寛永御前試合/二十九 無明の敵/三十 決戦/解説 縄田一男

ここから始まる本のリンク▼『講談 碑夜十郎』(半村良著・講談社文庫)

幻剣 蜻蛉
(げんけんとんぼう)

戸部新十郎
(とべしんじゅうろう)
[剣豪]
★★★☆☆☆

カバーイラスト:菊池誠
カバーデザイン:中原達治
時代:慶長六年八月。
場所:金沢、人吉城下、道三河岸、目黒、一乗谷、嵯峨野、肥後ほか。
(祥伝社文庫・552円・00/09/20第1刷・303P)
購入日:00/09/24
読破日:00/11/09

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幻剣 蜻蛉 戸部さんの漢字二文字のタイトルが付いた剣豪もののファンである。余計なものを削ぎ落としたコンパクトな話の中で、剣技の精髄をわかりやすく見せてくれる。
剣豪小説の面白さを再認識させてくれる戸部さんの最新文庫。今回は、一人の剣豪を主人公とした短編集となっている。石川県生まれの作者にとって馴染みの深い、加賀藩の中条流(富田流)の富田一放を主人公としている。富田重政の庶子とされているが、寡聞にして実在かどうかわからないが…。
エラそうな柳生宗矩が、一放にへこまされるのが何とも楽しい。それにしても柳生宗矩というのは、敵役に据えると、スゴ悪で、物語の面白味がぐっと高まるなあ。
柳生と富田ばかりでなく、タイ捨流の丸目蔵人佐長恵やニセ宮本武蔵、山田浮月斎(『柳生武芸帳』でおなじみ)、松山主水なども関わってくる。

物語●加賀藩取り潰しを狙う幕府。将軍家のために、また〈治国・平天下の剣〉の成就を望む将軍家指南役・柳生宗矩。宗矩が密かに恐れた剣士がいた。大坂の陣で五十人の敵を斬りながら無欲恬淡な男、加賀藩中条流の富田越後守重政の庶子・一放(いっぽう)だ。謎の剣豪の技が冴える連作小説。

目次■頓閑|嵐勢|白露|手向|遊雲|蜻蛉|鏡見

ここから始まる本のリンク▼『秘剣水鏡』(戸部新十郎著・徳間文庫)、『秘剣花車』(戸部新十郎著・新潮文庫)

啓順凶状旅
(けいじゅんきょうじょうたび)

佐藤雅美
(さとうまさよし)
[股旅]
★★★★☆☆

装画:横塚繁
装幀:幻冬舎デザイン室
時代:南町奉行が筒井紀伊守政憲の頃(文政四年〜天保十二年)
場所:秩父、甲府、三島、下田、川奈、大島、奥州石巻、下総行徳、下谷練塀小路、池之端仲町、品川町、中御徒町、八王子ほか
(幻冬舎・1,700円・00/10/10第1刷・352P)
購入日:00/09/30
読破日:00/11/05

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啓順凶状旅 帯のコピーを読んで、映画『逃亡者』を連想した。濡れ衣の町医者が逃亡生活を送り…、という話らしい。映画の『逃亡者』を見ていないので、どういう展開になるかはまったくわからないが、この作品の主人公は、義理のある人から身代わりを頼まれたことから逃げまわる羽目になる。その事情と義侠心あふれる主人公・啓順(啓次郎)の性格が何とも好ましい。追われる身で、関わり合いになりたくないと思いながらも、病に苦しんでいる人を見ると、ほって置けない。そこで見せる心の葛藤。
啓順の治療方法が、症状ごとに漢方薬を調合する本格的なもので、描写が細かくてとても興味深く、ためになった。
主人公が渡世人のように旅をするということで、ロードムービー風の楽しさもある。佐藤雅美さんの作品の魅力の一つである関八州の風物と人間模様も楽しめる。

物語●秩父の立場茶屋で、渡世人啓次郎こと、元医者の啓順は、腹痛に苦しむ茶屋の主人の様子を見るに見かねて、治療することになった。しかし、啓次郎は、娘浄瑠璃語りの千代春と町火消し十番組の頭取、聖天松五郎の倅を殺した犯人として、凶状持ちとして、聖天松一家に、その行方を追われていた…。

目次■立場茶屋の女/牢番の正体/頼朝街道/下田の旅芸人/波浮の湊/伊三郎の声/江戸の一日/消えた証拠人

ここから始まる本のリンク▼『木枯し紋次郎』(笹沢左保著・光文社文庫)

蒙古来たる 上・下
(もうこきたる)

海音寺潮五郎
(かいおんじちょうごろう)
[鎌倉]
★★★★

カバー:南伸坊
解説:磯貝勝太郎
時代:文永十一年(1274)
場所:京・東洞院三条上ル所、北山、船岡山、五条東洞院、鎌倉、箱根、大磯ほか
(文春文庫・上724円、下686円・00/09/01第1刷・上556P、下541P)
購入日:00/09/02
読破日:00/11/03

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蒙古来たる 来年度NHK大河ドラマの関連出版らしいが、南伸坊さんのカバーイラストが気に入ってしまった。鎌倉時代、とくに蒙古襲来に関して、ほとんど予備知識がないせいで、ハラハラしながら読めた。思いのほか、激動の時代だったことがわかり、勃然と興味が湧いてきた。
作者の後記によると、太平洋戦争後の、昭和28年に書かれたということで、一部の評者からは再軍備化に迎合した作品と見られたらしい。戦争観というよりは愛国心がテーマの一つになっていることは確かだと思う。また、作中にペルシャ人のキリスト教徒(ネストリウス派のキリスト教徒)を登場させたことで、親友の歴史作家・村雨退二郎(むらさめたいじろう)氏と、仲違いしたということで、なかなか興味深い。海音寺さんは、「小説は空想の所産だ。空想力なくしては書けない。しかし、ぼくは常に可能性ある空想を書こうと意図している。調べも考察も手のつくせるかぎりはつくさざるを得ないのである。」と著作のスタンスを示している。
この作品でも、史実を踏まえながらも、魅力的な伝奇的なキャラクターを登場させて、魅力的な物語に仕上げている。クグツが登場するのは、てっきり隆慶一郎さん以後かと思っていたが、この作品で登場し、重要な役割を果たしている。
ともかく、この本が原作というわけではないが、来年の大河ドラマの世界が楽しみになった。

物語●異母兄達に土地を奪われ、公儀の裁判を仰ぐために母とともに京に上った、獅子島小一郎は、市中の警備の武士たちに追われていた、坊主然の異国の大男イスマイルを助けた。このことで、小一郎は逆に捕らわれの身になったが、西園寺中納言実兼の家来として引き取られることで縛めを解かれた。実兼は、朝廷における昇進と権力掌握を狙っていた…。

目次■えびす弓/異国の神/北山の雨/楊柳の宿/クグツ/晩菊/日月の旗/イスマイル/北条時宗/辻角力/乗合船/色は匂えど/鎌倉港/亡国の賦/網/火華/炎の中に/悪魔の薬/もろこしヶ原/立正安国論/夕雲の涯(以上上巻)|春の海/赤と黒/桐の紋/野心とクーデター/暗い情熱/?瑰花/巌下の雷/投網/灯とり虫/祈る/大三島大明神/竜ノ口/西来の意/弘安四年夏/科戸の風/円成真覚/後記/解説・磯貝勝太郎(以上下巻)

野獣めざむる
(やじゅうめざむる)

高橋直樹
(たかはしなおき)
[伝奇]
★★★☆☆

カバーデザイン:野津明子(芹澤泰偉事務所)
時代:明記されず(江戸中後期か)
場所:飛騨国・小名栗村ほか
(祥伝社文庫・381円・00/11/10第1刷・156P)
購入日:00/10/31
読破日:00/11/03

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野獣めざむる 祥伝社文庫15周年記念特別企画の一冊。書下ろしで400円の文庫本。山村を舞台にした異色時代ホラー。ページ数が少なくすぐ読めた。
山間の寒村を舞台に、狂気と極限状態におかれた人間模様を、スピーディーに緊迫感あるストーリー展開で描いた伝奇小説。
戦国時代の「金塊伝説」と抑圧された人間の獣性がテーマの作品。

物語●旗本の次男坊井倉甲子太郎は、高山町年寄川上家のひとり娘で、許婚の美代と婚礼のために、飛騨国高山を目指した。途中、山間のわずかな隙間にへばりついたような寒村・小名栗村で、崖崩れのために、閉じ込められてしまった…。

目次■なし

ここから始まる本のリンク▼『虚空伝説 餓鬼草子の章』(高橋直樹著・祥伝社ノン・ブックス)

阿哥の剣法 よろず請負い 
(あごのけんぽう)

永井義男
(ながいよしお)
[剣豪]
★★★☆

カバー画:村上豊
カバーデザイン:中原達治
時代:江戸三大道場が隆盛を極めたころ
場所:四谷西念寺横丁、四谷大木戸、太宗寺ほか
(祥伝社文庫・381円・00/11/10第1刷・153P)
購入日:00/10/31
読破日:00/11/02

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阿哥の剣法 よろず請負い 書下ろしで400円は安い。流通のことを考えると、こういう方法もありかなと思う。
『算学奇人伝』や『大江戸謎解き帳』など、ミステリー色の強い時代小説で活躍している永井さんの、初の剣豪小説。
ここに登場する剣豪ヒーローも、やはり一筋縄でいかない、一癖あるものになっている。清朝康熙帝の末裔で、今は四谷の旗本家に居候する浪人・阿郷十四郎(あごじゅうしろう)。彼が操る剣も奇天烈で、倭寇の戦闘に端を発する明の刀法(中国では、剣は両刃のものをいい、片刃のものは刀という)から編み出された“阿哥(あご、満州語で貴公子の意)流”である。
その彼の稼業は、道場破り除けと揉め事解決。その活躍やいかに。

物語●池の中の棒杭の上で、剣術の稽古をしている阿郷十四郎のもとに、剣術道場の石井道場の内弟子・藤田角之助が、手ごわい道場破りが現れたということで、十四郎を助っ人として呼びに来た…。

目次■なし

ここから始まる本のリンク▼『損料屋喜八郎始末控え』(山本一力著・文藝春秋)