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2000年3月・弥生の巻
剣法奥儀 by 五味康祐 |
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斑鳩宮始末記 (いかるがのみやしまつき)
黒岩重吾
装画:篠原貴之 |
♪現状ではとても古代ものまでは手が回らないので、黒岩作品は敬遠していたが…。「奈良の都の捕物帳!」というキャッチフレーズに抑えがきかなくなってしまった。聖徳太子が活躍した推古朝が舞台ということで、出てくる言葉や風俗などとても新鮮。通い婚や多妻制、奴婢などの風習が事件の背景にあり、興味深かった。ただ、登場人物たちの名前が子麻呂やその部下の魚足(うおたり)は、ともかくとして、上司の秦造河勝(はたのみやつこかわかつ)や、子麻呂の妻の縫郎女(ぬいのいらつめ)、難波吉士高雄(なにわのきしたかお)、阿刀連太(あとのむらじふと)、膳部菩岐岐美郎女(かしわでのほききみのいらつめ)など、舌を噛みそうなものが多く、読書のスピードが上がらなくて苦労した。 教科書でしか知らなかった、冠位十二階制にまつわるエピソードがあり、勉強になった。 物語●「子麻呂道」調首子麻呂(つぎのおびとねまろ)は、百済からの渡来系氏族で、廐戸(うまやど)皇太子(聖徳太子)に舎人(とねり)として仕えていた。憲法十七条や冠位十二階制で公平な官司制度を作ろうとする皇太子の命を受け、さまざまな事件の捜査にあたることになった…。「川岸の遺体」鋭い刃物で首を斬られた男子の遺体が川岸で発見された…。「子麻呂の恋」子麻呂は、村長の家を逃亡した奴婢アヤメと関係をもってしまった…。「『信』の疑惑」酒盛りをしていた子麻呂と魚足は、斑鳩宮で記録係をしている男子の死体を発見した…。「天罰」廐戸皇太子が所有する船を管理し、外交面でも活躍する有力者の妻が血まみれになって殺された…。「憲法の涙」子麻呂の妻の縫(ぬい)が食欲を失い痩せ始め、ついには倒れてしまった…。「暗殺者」四十の醜男の魚足が二番目の妻を迎えることになった。新妻は二十歳で、豪農の娘だという…。 目次■序/子麻呂道/川岸の遺体/子麻呂の恋/『信』の疑惑/天罰/憲法の涙/暗殺者 |
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遥かなり江戸祭囃子 風流大名松平斉貴 (はるかなりえどまつりばやし・ふうりゅうだいみょうまつだいらなりたか)
海野弘
カバーイラスト:村上豊 |
♪同じ作者の『江戸よ語れ』(河出書房新社)の掌編「馬鹿囃子」で、気になった第九代松江藩主・松平斉貴(なりたけ=鶴太郎)を描いた長篇。松江藩というと、家康の次男秀康の三男・松平出羽守直政が藩祖。斉貴の曽祖父で、松江の化物と呼ばれた六代・宗衍(むねのぶ=南海公)、祖父で、茶人として有名な松平不昧公こと、七代治郷(はるさと)など、一族の血の中には道楽に狂い取りつかれてしまうものをもっているようだが、第三者の目で見ると魅力的でもある。治郷は、宮本昌孝さんの『夕立太平記』にも登場する。本書のヒーロー松平斉貴が活躍する伝奇小説を読んでみたくなった。誰か書いてくれないかな。音楽を感じさせる小説は少ないが、この本は、作品を通して、太鼓のリズムが聞こえてくるようで、読了感が好ましい。 物語●千太らが江戸祭囃子の稽古をしていると、頭巾をかぶり、短い脇指を差していた町人とも武家ともわからない格好をした若い男がずかずかと踏みこんできて、太鼓を打たせてくれと頼みこんできた。これが赤坂の鶴太郎とお神楽の春次ら祭囃子五人組の出会いだった…。 目次■江戸祭囃子の誘惑/出雲の化物殿様/茶人松平不昧/松平斉貴の青春/松江の旅/鷹狩/斉貴幽閉/遠い太鼓 ここから始まる本のリンク▼『江戸よ語れ』(海野弘著・河出書房新社)、『夕立太平記』(宮本昌孝著・講談社文庫) |
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用心棒日月抄 (ようじんぼうじつげつしょう)
藤沢周平
カバー:村上豊 |
♪十年ぶりに再読する。記憶していたよりも赤穂事件に係わる部分が多いのが意外だった。たぶん、シリーズの他の作品の印象が強かったのかもしれない。ともかく、藤沢さんの構成の見事さに脱帽した。連作形式ながら、話が進むごとに、主人公・青江又八郎と細谷源太夫、相模屋吉蔵との友情の深まり具合や赤穂事件に絡んで行く度合いなど、絶妙である。NHKテレビ『腕におぼえあり』がよかったせいか、やっぱり、青江又八郎は、村上弘明さんのイメージだな。 藩主毒殺の陰謀を知ったことから、許婚の父に斬りかかられて反射的に斬り、城下を出奔した浪人・青江又八郎が用心棒稼業で活躍する「用心棒日月抄」シリーズは、この後、『孤剣 用心棒日月抄』、『刺客 用心棒日月抄』、『凶刃 用心棒日月抄』と続く。 物語●「犬を飼う女」脱藩した青江又八郎が相模屋吉蔵にはじめてもらった仕事は、雪駄問屋の妾の飼い犬の番だった…。「娘が消えた」又八郎は、油屋の娘の稽古ごとのつきそいの仕事を引き受けた…。「梶川の姪」内匠頭刃傷のとき、妨害したとして梶川与惣兵衛が浅野家浪人の脅迫を受けているという…。「夜鷹斬り」又八郎は同じ長屋に住む、夜鷹のおさきの用心棒を務めることになった…。「夜の老中」細谷源太夫が用心棒をしていて怪我をしたという…。「内儀の腕」用心棒の仕事を受けて出向いた呉服問屋に、塚原という小男の浪人者がいた…。「代稽古」又八郎は、長江長左衛門の堀内流の道場で代稽古を務めることになった…。「内蔵助の宿」又八郎は、浅野浪人たちの動向を探る、小唄師匠のおりんと親しくなった…。「吉良邸の前日」又八郎と細谷は、仕事に困って吉良邸の用心棒を務めることになった…。「最後の用心棒」帰国する又八郎を、細谷と吉蔵が、千住宿まで見送って来た…。 目次■犬を飼う女/娘が消えた/梶川の姪/夜鷹斬り/夜の老中/内儀の腕/代稽古/内蔵助の宿/吉良邸の前日/最後の用心棒/解説 尾崎秀樹 ここから始まる本のリンク▼『孤剣 用心棒日月抄』(藤沢周平著・新潮文庫)、『密命 見参! 寒月霞斬り』(佐伯泰英著・祥伝社文庫) |
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密命 残月無想斬り (みつめい・ざんげつむそうぎり)
佐伯泰英
カバー装画:古賀政男 |
♪元豊後相良藩士で直心影流・金杉惣三郎が活躍する、「密命」シリーズ第3弾。齢百五十六歳の妖術剣士との対決が注目。今回、惣三郎は恒例の脱藩はしない、というよりも前回の事件が解決したにもかかわらず、帰藩できずに、相変わらず火事場始末の荒神屋喜八のもとで働いていたのだった。毎回スケールアップするこのシリーズ、トム・クランシーのジャック・ライアン(映画ではハリソン・フォードが演じるような)ばりの活躍を見せることになる。第五章の合戦深川冬木ヶ原は、まさに圧巻の一言に尽きる。 物語●元豊後相良藩江戸留守居役・金杉惣三郎は使命を果たしたが、なぜか藩に戻れないず、十四歳の息子・清之助と十一歳の娘みわの二人を抱えて、狭い長屋暮らしを続け、火事場始末の帳場で働くことで浪々の身を養っていた。旧知の北町定廻り同心西村桐十郎と南八丁堀の親分・花火の房之助が、惣三郎の仕事場にやってきて、江戸を騒がす妖しい老剣士から新任の町奉行・大岡越前守忠相の命を護るように依頼された…。 目次■一章 品川心中/二章 老武芸者/三章 甲州密行/四章 重左ヱ門の死/五章 合戦深川冬木ヶ原/六章 御鷹狩り/終章 惣三郎の祝言/解説 細谷正充 ここから始まる本のリンク▼『用心棒日月抄』(藤沢周平著・新潮文庫)、『あばれ奉行』(えとう乱星著・実業之日本社) |
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降魔の剣 日向景一郎シリーズ2 (ごうまのけん・ひなたけいいちろうしりーず2)
北方謙三
カバー装画:宇野亞喜良 |
♪日向(ひなた)流の創始者の孫で非情の剣法者・日向景一郎が斬りまくるシリーズ第2弾。妖刀「来国行(らいくにゆき)」が冴える、ハードボイルド剣豪小説。スピーディーでダイナミズムに溢れる現代的な作品。今回、御禁制の薬物「阿芙蓉(あふよう)」が事件の鍵を握る。北町奉行所臨時廻り同心・保田新兵衛が主人公たちに絡む、狂言廻し的な役割を演じるが、いい味を出している。とくに鉄馬との絡みがいい。 物語●黙々と土を揉み、窯の火を見つめている焼物師。その正体は、剣法者・日向景一郎。第1作から5年が立ち、森之助は五歳になり、景一郎の弟として育てられ、伯父の小関鉄馬と起居をともにしていた。ある日、彼らが住む薬種屋・杉屋清六の向島の寮に、漁師あがりの若い男が傷を負って運び込まれてきた…。 目次■第一章 白日/第二章 かたち/第三章 茸/第四章 罅/第五章 淵/第六章 鬼/第七章 両断/解説 小梛治宣 ここから始まる本のリンク▼『眠狂四郎無頼控』(柴田錬三郎著・新潮文庫)、『鬼哭の剣』(鳥羽亮著・祥伝社文庫) |
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剣客商売 (けんかくしょうばい)
池波正太郎
カバー装画:中一弥 |
♪ゲストブックと「ミレニアム時代小説100」をもとに、「時代小説SHOW」の訪問者のベスト10を算出したところ、『剣客商売』が同道の1位だった。そこで、その魅力の一端に迫るべく、久しぶりに読み直してみた。『剣客商売』の魅力の一つは、対照の妙がある。白髪頭の小男・秋山小兵衛と浅黒く逞しい息子・大治郎。颯爽として凛々しい佐々木三冬と同年代ながらたおやかで女らしいおはる。その組み合わせでアットホームな感じと面白さを引き出している。 また、チャンバラを扱いながらも血腥さがないのは、秋山父子が揮う無外流の剣が、殺人剣ではなく、活人剣であることによる。 『鬼平犯科帳』や『仕掛人・藤枝梅安』シリーズと比べ、作品のもつ明るさが際立っている。 物語●「女武芸者」道場を開いたばかりの秋山大治郎のもとに、立派な風采の侍がやってきて、五十両で、人ひとり、その両腕を叩き折ってくれと依頼した…。「剣の誓約」大治郎のもとに、師の嶋岡礼蔵がやってきた。約定により真剣勝負をやるという…。「芸者変転」橋場の不二楼の座敷女中のおもとは、無頼御家人が、将軍側近の御側衆の旗本をゆするという話を盗み聞きしてしまった…。「井関道場・四天王」井関道場は、佐々木三冬を含む高弟四人で運営されていたが…。「雨の鈴鹿川」東海道を下っていた大治郎は関の宿で、いわくがありそうな男女と隣り合わせの部屋に泊まることになった…。「まゆ墨の金ちゃん」奥山念流の道場を構える牛堀九万之助のもとに、弟子の三浦金太郎がやってきた。三浦が言うには、秋山大治郎の一命が危ういという…。「御老中毒殺」雨宿りをしていた三冬は、父・田沼主殿頭意次の御膳番・飯田平助を偶然見つけたが、目の前で平助は掏摸に懐中物を掏り取られてしまう…。 目次■女武芸者|剣の誓約|芸者変転|井関道場・四天王|雨の鈴鹿川|まゆ墨の金ちゃん|御老中毒殺|解説 常盤新平 ここから始まる本のリンク▼『ないしょないしょ』(池波正太郎著・新潮文庫)、『黒白』(池波正太郎著・新潮文庫) |
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眠狂四郎無頼控(一) (ねむりきょうしろうぶらいひかえ1)
柴田錬三郎
カバー:中尾進 |
♪説明がいらないような著者の代表作。しかも、解説の遠藤周作さんが作品の魅力を絶妙に分析されていた。要約すると、1.現代人の感覚とタイミングにマッチしている。 2.小説の場面とその構成が刺激的にできている。 3.大衆小説の本質的な条件をみな持ち合わせている。 その本質的な条件とは、 イ.「宝物探し」の要素があること ロ.狂四郎が現代的感覚の強さをもっていること ハ.あぶな絵趣味が現代的であること ニ.狂四郎を除く副人物が他の読みなれた大衆小説のおなじみの人物に似ていること 狂四郎は、思っていたほど虚無的非人間的なヒーローではなく、悩みをもち、痛みを知る好漢であった。それはうれしい誤解であり、シリーズを続けて読みたくなった。それにしても、柴錬さんは章のタイトルの付け方が絶妙だな。いずれも読む気をくすぐる。 物語●素浪人・眠狂四郎は、掏摸の金八を手下に御老中水野越前守忠邦の上屋敷に押し込んだ。そこで、金八はお小直衣(このうし)雛という内裏様を盗み、狂四郎は奥女中、美保代を犯した…。実は、美保代を若年寄林肥後守のはなった密偵であると疑った、忠邦の側頭役武部仙十郎が、狂四郎を使って、その正体を暴くためにとった苦肉の策だった。 目次■雛の首/霧人亭異変/隠密の果て/躍る孤影/毒と柔肌/禁苑の怪/修羅の道/江戸っ子気質/悪魔祭/無想正宗/源氏館の娘/斬奸状/千両箱異聞/盲目円月殺法/仇討無情/切腹心中/処女侍/嵐と宿敵/夜鷹の宿/因果街道/解説 遠藤周作 ここから始まる本のリンク▼『邪しき者』(羽山信樹著・小学館文庫)、『砂絵呪縛』(土師清二著・講談社大衆文学館) |
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剣豪将軍義輝 上 鳳雛ノ太刀/中 孤雲ノ太刀/下 流星ノ太刀 (けんごうしょうぐんよしてる)
宮本昌孝
カバーイラスト:南伸坊 |
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やっぱり、南伸坊さんの絵だとしっくりくる。待望の文庫化! とくに3カ月目に出た下巻を購入と思ったら、間違って上巻を購入してしまい、再度買い直す。久々のドジだが、作品が素晴らしいだけにあまり悔しくない。仕事に追われて忙しい一週間だったが、この本のお陰で、楽しく過せた。子どもの頃、NHK大河ドラマ『国盗り物語』で見た義輝のイメージがずっと頭に残っていた。そのイメージを損なわず、このヒーローを主人公にした小説にようやく出合えた。こんな作品を待っていたのである。 3部構成の歴史大河ロマンといった趣きがある。第1部と第3部は文句なく素晴らしいが、この作品の他を圧する魅力は、第2部にある。物語はスピーディーにかつ波瀾万丈に展開する。一瞬もだれる所がない。かといって緊張しっぱなしというのではなく、ユーモアを交え弛緩する箇所が随所にある。登場人物たちの人物造形も魅力的である。何やら、隆慶一郎さんの作品を評しているようだが、まさにそれと同種の喜びがある。 下剋上の乱世を、流星の如く駆け抜けた剣豪将軍の光彩に満ちた生涯をロマン溢れる筆致で描いた畢生の名作。 物語●天文十五年、十一歳の菊幢丸は元服して名を義藤(のちの義輝)に改め、父義晴から将軍職を譲られた。年改まり、権威回復を図り、挙兵した義晴だったが、管領細川晴元派に京を追われることになる。近江に逃れる途上、義藤は旅の武芸者の手練の技を目撃し、武術の稽古に目覚める。そして、運命の少女と終生のライバルとも出会うことになる… 目次■壱 初陣/弐 お玉/参 鬼若/肆 京/伍 歓喜楼/陸 血宴/切 刺客/捌 堺/仇 父子/什 炎上/宮本昌孝を推す 縄田一男(以上上巻)|壱 海へ/弐 異国の風/参 美濃暮色/肆 諏訪の雨/伍 躑躅ヶ崎/陸 烈女たちの夜/切 鬼神城夜討始末/捌 鹿島の空/仇 蝮の遺言/什 織田信長/解説 火坂雅志(以上中巻)|壱 悪御所/弐 竜鳳の契り/参 虎、来たる/肆 大牙の謀事/伍 げきしょうの間/陸 宿敵/切 麒麟児、盟す/捌 修羅、むらがりて/仇 三好崩れ/什 洛陽の暗雲/十一 雲の上まで/気魄という額の徴し 秋山駿(以上下巻) ここから始まる本のリンク▼『捨て童子松平忠輝』(隆慶一郎著・新潮文庫) |
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剣法奥儀 (けんぽうおうぎ)
五味康祐
題字:星野弘美 |
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武芸の各流派にはそれぞれ奥儀の太刀というものがある。秘伝というもので、唯一人の門弟以外には教えられなかったものらしい。それゆえ、名前は伝わっていても、どういう技かまではわからないケースが多い。作者は、これらの奥儀の剣の名前の興る機縁となったエピソードを小説風にまとめようとした。それが本書だ。大和の柳生家の菩提寺である芳徳寺にあった、諸流派の秘太刀に関する究明書をもとにしているという。それぞれのエピソードが面白く、それでいて読み終えた後に秘太刀の謎の部分を残しているのがいい。 各エピソードで印象に残るのは、以下の通り。心極流の祖師は、長谷川宗喜で、二代が栢木後藤兵衛の弟子の備前池田家の藩士と僧との意外な対決。知心流「雪柳」の美人剣士志賀梨香といなか剣士宗吉という取り合わせの妙。天心独明流「無拍子」に登場する妖術者のおどろおどろしさ。一刀流「青眼崩し」匿名で昔話のような形で始まりながら…。先意流「浦波」薙刀の名手信田里絵の可憐さ。風心流の秘太刀「畳返し」と、それに挑戦した武士の戦いぶり。柳生流「八重垣」については、柳生家の家系図で親子兄弟・縁戚関係を整理した方がよさそうだ。 物語●心極流「鷹之羽」市森佐大夫は、山道の難所で、京僧流の達人である旅僧・烏山永庵と出会う…。知心流「雪柳」兵法狂いの〔ねとこの宗吉〕のもとに膳所藩士が訪ねてきた…。天心独明流「無拍子」高階真十郎が妖術者・赤座賢乗に挑戦したのは、寛永五年秋であった…。一刀流「青眼崩し」天正の頃、下総国に一人の武芸者と二人の弟子がいた…。先意流「浦波」お蔭参りで賑わう信田道場の門前に編笠の武士が現れた…。風心流「畳返し」備前岡山池田家家中で、悪声の第一といえば、百々藤兵衛と山脇五郎右衛門だった。この二人に意外な運命が…。柳生流「八重垣」石舟斎の弟・七郎左衛門(松吟庵)の次男・喜七郎と、石舟斎の四男徳斎、喜七郎の姉志乃の婿・衆徒水ノ坊が諸国遍歴の旅に出た…。 目次■序|心極流「鷹之羽」|知心流「雪柳」|天心独明流「無拍子」|一刀流「青眼崩し」|先意流「浦波」|風心流「畳返し」|柳生流「八重垣」|解説 結城信孝 ここから始まる本のリンク▼『秘剣水鏡』(戸部新十郎著・徳間文庫)、『月下の剣法者』(伊藤桂一著・新潮文庫) |