薬屋の隠居が店より勝手に七百五十両の大金を持ち出し、隠居所の寮のどこかに隠してしまった。家族とのごたごたのさなか、寮に賊が押し入り隠居が殺された。殺害の犯人は? 大金の行方は? 事件解決の鍵は、掛軸に遺された一編の漢詩。この謎に挑むのは、後にベストセラー戯作『江戸繁昌記』を著す漢学者・寺門静軒(てらかどせいけん)と、その親友で直心流の名手・福永新十郎の二人。ホームズとワトソン博士、文と武の配役の妙と、巧みなプロット、歯切れいいストーリー展開は、上質の時代ミステリーだ。現代人にはとっつきにくい漢詩をわかりやすく作品に取り入れている。タイトルの平仄(ひょうそく)は、つじつまの意味であり、漢詩の規則(リズム)を表すことばでもある。
1999.02.17
♪永井さんについて、評価が辛口になってしまうことが多い(腹八分目のように物足りなさを感じさせて終わることが多く、この作者ならもっと書けるはずだという思いが強いせいだが)のだが、この作品は過不足なくピタリと平仄があった。寺門静軒は、『名主の裔』の杉本章子さんが卒論で取り上げた人だそうだ。 (小林理流)