おすすめの一冊
妖臣伝(上・下)


著者:小川良
幻冬舎
各648円+税

  97年4月に叢文社より『妖雲大内太平記』として刊行され、高い評価を得ながら入手困難だった作品が、改題・加筆訂正されて早くも文庫化。流浪の若武者・さぎりは、鐘の音に誘われ、大内義隆の重臣冷泉隆豊の妹・総子と出会い、幼い頼子姫を兄のもとへ届けることを依頼される。頼子には、家老・陶晴賢の謀反の証拠となる密書が託されていた。山口へ向かうさぎりを、晴賢配下の怪僧が襲う…。この「妖怪の寺」から物語は幕を開け、幻想的でまたワクワクさせる伝奇小説が展開してゆく。作者は、同時進行で、大内と陶の確執と毛利元就の台頭、厳島合戦へと続く正史を格調高い文体で綴り、戦国という激動の時代ゆえに凝縮された人間の愛憎ドラマをも描くことで、荒唐無稽なだけのものに終わらせていない。
1998.11.18

♪毎月、新刊の中でおすすめ本を取り上げることの難しさを感じたのが、この月だった。時代小説の単行本の刊行が何故かほとんどなかったのである。そこで、困った末に、紹介したのが文庫本のこの作品。新人作家というハンデもあり、しかも伝奇小説ということで、ビジネスマン向けではないと思いながらも、何とか掲載してもらった。 (小林理流)

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