ささやかな幸せを願って慎ましく暮らしつつも、ふと悪事に手を染めたり、ちょいと色恋に溺れ、刃傷沙汰を起こしたり。人は、罪と紙一重のところにいる。「放っておいたら可哀そうじゃねえか」と、隠居して寮番(別荘の管理人のようなもの)を勤める元南町奉行所同心・森口慶次郎は、その度ごとに、事件解決に乗り出すこととなる…。「貧乏人に迷惑をかけぬこと」、「身内に迷惑をかけぬこと」の二つを座右の銘とする、心やさしい(?)空巣狙いの話など、江戸っ子の心意気あふれる、粋な連作捕物帳。慶次郎が最愛の一人娘を亡くすことになる事件の顛末を描く第一話を加えて、全十一話を収録。生活に疲れ、人間関係に悩んでいる人に、“癒し”としておすすめの一冊。
1998.10.16
♪2回目では、いかにも時代小説の真髄といったような作品を扱いたかったので、この作品と松井今朝子さんの『幕末あどれさん』(PHP研究所)を候補として考えていた。実は『幕末あどれさん』の方で書評を用意していた。しかし、実際に掲載したのは、『傷』の方だった。 (小林理流)