時代小説によく出る用語集

【湯舟】
ゆぶね


『御宿かわせみ 長助の女房』(平岩弓枝著・文藝春秋)に収録されている「江戸の湯舟」の中のワンシーン。夏の夜更け、深川の大島川のふちを歩いていた神林東吾と畝源三郎は、湯舟から出てくる若い女を見かけたことから、事件に巻き込まれていく…。

湯舟というと、浴槽(バスタブ)のことを思い浮かべるが、この作品で描かれているのは、舟の湯屋である。

本所深川は埋立地なので、少々掘るとすぐに塩分を含んだ水がでて、井戸を掘っても使いようがなかった。湯屋は井戸がないと困るので、深川には湯屋が極めて少なかった。その代わり、水路を利用した湯舟というものが繁盛した。

要するに舟に据風呂を積み、板囲いをしたもので、入口をくぐると舟の幅いっぱいに洗い場があり、その奥に据風呂が置いてある。客は舳で衣類を脱いで丸裸で洗い場に入り、湯浴みが終ると、またその格好で外へ出て来て体を拭いて衣類をつけた。

客は、木場の連中や職人、武家奉公の中間、小者といったところで、入れ込み(混浴)なので若い女は敬遠したという。入浴料は、湯屋よりも安く一人五文程度。(99/08/09)


←もどる↑ヤ行