時代小説によく出る用語集

【得宗】
とくそう


高橋直樹さんの『鎌倉擾乱』(文春文庫)は、タイトル通り鎌倉時代の激動の瞬間を切り取った三篇の中・短編を収録した作品集である。鎌倉を舞台にした、時代小説をほとんど読んでこなかったせいか、ひどく新鮮で面白かった。

作品の背景となる鎌倉特有の言葉のひとつが、得宗である。武士の都、鎌倉は源頼朝によって創られたが、頼朝亡き後、政権の地位についたのが頼朝の妻の一族である北条氏だった。執権職をつとめる北条氏は、敵対する有力御家人を残らず倒していき、一族で政治の中枢を握った。そこから権力の裏付けが「執権」から北条本家の家督の地位である「得宗」に移っていく。

幕府の権力が、得宗の手に集中され、北条一門と得宗家を補佐する者たちの手によって運営されていくと、幕府の重要案件の審議は、得宗の私邸で開かれる「寄合」によって行われるようになる。そして、古くから北条家に仕えてきた中小御家人で、家政を預かってきた者たちが、得宗被官として「寄合」に加わるようになり力を持っていくようになる。

最後に収録された『北条高時の最期』の主人公、北条高時は九代目の得宗である。昔のNHK大河ドラマ「新太平記」では、片岡鶴太郎さんが演じていた。当時はなぜ、執権と呼ばないのか不思議だったが…。(99/07/25)


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