時代小説によく出る用語集

【袈裟がけ】
けさがけ


澤田ふじ子さんの『遍照の海』(中公文庫)に、「袈裟がけ」という章がある。袈裟がけ―と聞くと、剣術での立合いシーンで見られる、一方の肩から他方の脇の下へ斬り下げること、つまり、袈裟斬りを思い浮かべてしまう。

ところがこの本を読んで、袈裟がけの本質は、まったく違うということを知った。袈裟がけの本来の意味はこれとまったく逆で、命の救済に発している。

江戸時代、処刑されかけた罪人を、公然と救う方法が一つだけあり、それが高僧による袈裟がけだった。処刑場に罪人が運ばれてくる。唐丸籠(とうまるかご)の場合もあれば、両手を後ろでくくられ、裸馬に乗せられてくる者もあった。高徳の僧がそれに向かい、遠くから着ている袈裟を投げかける。これが袈裟がけなのだ。

袈裟が見事に罪人にかかれば、処刑は中止され、僧侶はその罪人をもらいうけ、司直と相談し、当人の更正を考えるのである。(98/11/15)


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