時代小説によく出る用語集

【上知】
あげち


『そろばん武士道』(大島昌宏著・学陽書房人物文庫)に出てきた言葉。

水野忠邦によって始められた改革では、物価騰貴の原因が、大坂、江戸の問屋仲間による商取引独占にあるとして、その解散を命じた。水野は通貨の総量削減を目指して節倹の励行を厳命した。歌舞伎小屋は閉鎖され、町人の絹物着用や婦人が金銀べっこうの髪飾りをつけることが禁じられた。歌舞音曲、女義太夫、女髪結、水茶屋なども禁止となり、野菜や魚の初物売買も停止となった。江戸市中には違反者を取り締まる隠密や隠し目付けが放たれ、火が消えたようなさびれようで、侍や町人を問わず不満の声が高まった。

しかし、水野の失脚の決め手となったのは、上知政策であった。それは、収入の低い幕府領と高い他藩領とを入れ替えて幕府の歳入増加を図り、また異国からの侵略に備えて江戸、大坂の支配体制を固めようとする思い切った施策だった。大坂周辺には大名、旗本合わせておよそ二十七万石の物成りが見込める領地が点在していた。知行地が変更されれば、大名たちにとってかなりの減禄が予想され、それらの大名や旗本に融資していた蔵元たちの金も、領主変更の名目で踏み倒される恐れがあった。紀州藩もその中に含まれていた。(00/05/07)


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