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陰陽師 太極ノ巻

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陰陽師 太極ノ巻陰陽師 太極ノ巻

(おんみょうじ・たいきょくのまき)

夢枕漠

(ゆめまくらばく)
[平安]
★★★★☆

「陰陽師」シリーズ第七弾。このシリーズが楽しいのは、平安の都の怪事件をズバッと解決するという晴明の活躍ぶりが水際立っていることばかりでなく、晴明のパートナーとして事件現場に向かう博雅の存在、そして、二人の掛け合いにあるように思う。

「陰陽師」にはストーリー展開のゴールデンパターンがある。物語の発端で、晴明の屋敷で、二人が季節の趣きを肴に酒を酌み交わす。秋の陽光であったり、天から降りてくる雪であったり、闇の中で匂う桜であったり……。「まことに不思議なものだなあ、晴明よ」と博雅は心に浮かんだ思いを、溜め息のように言う。そのときの博雅は、詩人のようであり、哲学者のようであり、割り振られたワトソン役を逸脱した素敵な存在である。

今回は、博雅以外にも、素敵な登場人物がいる。一人は晴明の好敵手であり仲間でもある市井の陰陽師で蘆屋道満。「鬼小槌」と「針魔童子」に出てきてバイプレーヤーぶりを発揮する。もう一人は、『陰陽師 龍笛ノ巻』に収録された「むしめづる姫」で二人に助けられた露子姫。「二百六十二匹の黄金虫」で「むしめづる姫」ぶりを遺憾なく発揮してくれる。

マンネリといわれようともいつまでも読んでいたいシリーズである。

ブログ◆
2006-03-25 源博雅は好い漢だなあ

物語●「二百六十二匹の黄金虫」醍醐寺の恵増上人は、若いころから秀才で知られていた。『仁王経』や『涅槃経』をたちまち諳んじてしまい、読むよりも速く楽々と唱えることができるという。しかし、その次に覚えようとした『法華経』がうまくいかない。その中の二文字だけが、どうしても覚えられないのである……。「鬼小槌」左衛門府の平実盛がひと月前の夜出て行ったきり行方不明だという。そして、彼を可愛がっていた藤原中将が猿叫の病に罹り寝たきりだという……。「棗坊主」叡山の祥寿院に恵雲と名乗る奇妙なことを話す僧がやってきた。その恵雲の吐く息からは、ほのかに何かの果実の香が匂った……。「東国より上る人、鬼にあうこと」月の夜、酒を酌み交わしている晴明と博雅のもとに、鬼から追われている男が助けを求めてきた。男は東国の住人で平重清という者で所用で都まで上ってきたという……。「覚」紀道孝と橘秀時の二人が、覚(さとる)という気の病にかかったという……。「針魔童子」晴明は捜しものを、円教寺の性空聖人の身の回りのお世話をしている者に頼まれて、博雅と羅城門あたりまで出かけた……。

目次■二百六十二匹の黄金虫|鬼小槌|棗坊主|東国より上る人、鬼にあうこと|覚|針魔童子|あとがき

カバー:村上豊

時代:明記されず

(文春文庫・476円・06/03/10第1刷・275P)
購入日:06/03/12
読破日:06/03/25

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