てのひら


てのひら
てのひら
(てのひら)
谷津矢車
(やつやぐるま)
[幕末]
★★★★☆

『洛中洛外画狂伝』『蔦屋』で話題の新鋭時代小説家、谷津矢車さんが描く、幕末ラブストーリー。2015年NHK大河ドラマのヒロイン、吉田松陰の妹・杉文と、薩長同盟の真の立役者小田村伊之助が主人公なので、ドラマを楽しむための参考図書として読むこともできます。

江戸に留学中の小田村伊之助は、遅れて江戸にやってきた吉田寅次郎(後の松陰)の面倒をみることになる。やることが直線的で、天才肌の寅次郎に、伊之助は戸惑い、反発しながらも、引かれていく。そして、寅次郎の頼みで、妹の文に勉強の素晴らしさを教えることになる……。

杉家に出入りをするようになった伊之助は、文に次第に惹かれるようになっていく。ある日、文と寅次郎の兄である梅太郎から、「うちの妹を貰ってやってはくれませぬか」と言われ承諾するが、それは、文の姉の壽のほうだった。

それから三年、杉家に寅次郎を訪ねて若い客がやってくる。それが文と久坂玄瑞との出会いだった……。

互いに惹かれながらも、ボタンを掛け違えたように、別々のパートナーと結婚してしまい、義理の兄妹となってしまった、文と伊之助。幕末から維新へ激動する時代の中で、二組の夫婦の心の交流を端正に描いていきます。自分の思いを表現することができない二人を翻弄する壽の描き方が見事です。谷津作品の美点である、史実を巧みに取り入れ、軽快なタッチでスピーディーに物語が展開し、読み味がよい作品に仕上がっています。

これまで、長州藩を単純に幕末維新の勝者と思っていたが、この物語を読むと、順風満帆に成功を勝ち取ったというのではなく、戦いで少なくない人の血が流れ、明治に入ってからも萩の乱による蹉跌を経験したうえでのことというのが実感できました。

大河ドラマでスポットが当たっているときなので、もう少し長州藩を取り上げた時代小説を攻めてみたいと思います。

目次■プロローグ 文の記憶/伊之助の章 嘉永四(1851)年/文の章 嘉永五(1852)年/伊之助の章 嘉永六(1853)年/文の章 安政四(1857)年/伊之助の章 安政六(1859)年/文の章 元治元(1864)年/伊之助の章 慶応元(1865)年/美和の章 慶応三(1867)年/素彦の章 明治三(1870)年/美和の章 明治九(1876)年/ふたりの章 明治十四(1881)年/ふたりの章 明治十六(1883)年/エピローグ てのひら

挿画:丹地陽子
装幀:D-KNOTS
時代:嘉永四(1851)年
場所:長州藩江戸下屋敷、萩、山口、ほか
(学研マーケティング・1,350円+税・2014/12/09第1刷・338P)
入手日:2014/11/28
読破日:2015/01/10
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