お仙探索手帖 鐘の音


お仙探索手帖 鐘の音
(おせんたんさくてちょう かねのね)
山内美樹
(やまうちみき)
[捕物]
★★★★

文庫書き下ろし。

谷中の笠森稲荷前の水茶屋「鍵屋」の娘で、鈴木清信の浮世絵に描かれ、<明和の三大美女>として有名なお仙がヒロインの捕物小説。作者には、以前にも『十六夜華泥棒』や『善知鳥伝説闇小町』など、お仙を主人公にした著書がある。静山社文庫版では、山内美樹子から山内美樹にペンネームを変えている。(その後、元の山内美樹子に戻されたそうだ)

本書では、お仙は、大岡越前守忠相と、将軍吉宗の生母お由利の方の妹の娘お由真の間に生まれた忠宗の子という設定。つまり大岡越前の孫。しかし、男女の双子で生まれたために、忌み嫌われて、鍵屋を営む五兵衛とお徳の夫婦に預けられたことになっている。

お仙は祖父に似て正義感が強く、江戸市中で起きた事件を耳にするたびに、「大岡忠相日記」や「大岡政談」を紐解いて何度も読み返していた。祖父を敬愛し、今のお裁きに対して腹立たしさを覚えることも。

第五話の「義の黄八丈」は、「大岡政談」で有名な「白子屋お熊事件」を想起させる話になっていて、興味深い。

また、本作品では狂言回しのような役割で、少年時代の松平定信(田安賢丸)が登場するのも面白い。

主な登場人物
お仙:谷中の笠森稲荷前の水茶屋「鍵屋」の娘
五兵衛:「鍵屋」の主人
お徳:五兵衛の女房
大岡英之進:お仙の双子の兄。南町奉行所町方同心見習
倉地政之介満済:御休息御庭之者支配。飴売り土平に扮して江戸地廻り御用という裏の役目を担う
おつる:「鍵屋」の手伝いの婆さん
お三味の清吉:元端唄の三味線弾きで結婚詐欺
お政:風車売り
新之介:献残屋「丸角堂」の主人
お秋:新之介の娘
おちか:新之介の女房
銀作:丸角堂の番頭
徳一郎:献残屋「鶴亀堂」の主人で、お政の息子
三吉:鶴亀堂の小僧
川村仙次郎徳救:御庭番十七家の筆頭川村弥五左衛門家の三代目
田安賢丸:十一歳。後の松平定信
柳屋お藤:笠森お仙と並ぶ<明和の三大美女>。楊枝屋の看板娘で、仙次郎の妹
イチゲの冬馬と源八:駕籠かき
尾州の半左:尾州藩の伊賀者で、お三味の清吉の兄貴分
道三郎:古代裂商「上代屋」の主人
お君:道三郎の女房
善太郎:道三郎の息子
保三:品田屋の主人
お末:保三の女房
おりく:吹き矢場あがりの女
飛松:棒手振
おもよ:飛松の女房
春太:飛松と同じ長屋に住む、しじみ売り
お絹:春太の幼なじみ
琴三郎:大工の棟梁で、お絹のいいなずけ
粂二郎:材木商「島田屋」の主人
房太郎:材木商「堺屋」の主人
おつな:粂二郎の内儀
中村耕三:おつなの愛人
お義:おつなと耕三の娘
喜助:島田屋の下男
彦次:島田屋の番頭
流玄:鍼医
厚吉:粂二郎の甥
田沼意次:御側御用人

物語●「大岡裁き見習い」お三味の清吉という元端唄の三味線弾きで、川崎でと年増の女や後家の手相見をしては、結婚を餌にして金を貢がせたり、掏摸や盗みを働く悪党が江戸の町に入ったという。お仙は、町廻り同心見習の兄英之進が置いていった、清吉の似顔絵が描かれた瓦版を店に張った。風車売りのお政は、瓦版を見て顔色を変えた…。

「秘められた想い」お仙は、風車売りのお政のことで丸角堂の新之介を訪ねた。五年前に新之介のもとに嫁いできたおちかは、お秋を産んでも母親になりきれず、母娘の間はうまくいっていなかった。原因はお政にあるという…。

「お仙の杯」芝神明社の生姜市で、谷中にある鍵屋の看板娘のお仙が葉生姜を売っていた。店が潰れ、妻の実家がある谷中に一家で移り住み、実家の畑で葉生姜を育てている古代裂商上代屋の一家を助けるためだった…。

「伊達虚無僧の音色」旗本や御家人の次男、三男、商家の若者たちが扮した俄虚無僧を<伊達虚無僧>と呼んだ。その伊達虚無僧が立て続けに殺される事件が起こった。一人目は袈裟がけに斬られ、二人目は堀の中で首の骨をへし折られて死んでいるのが見つかった。お仙は伊達虚無僧の格好をして、事件の探索に出かけた…。

「義の黄八丈」材木商島田屋の主人粂二郎は、鍵屋で同業の堺屋房太郎と会い、二百両を融通してもらった。その話を背中越しに盗み聞きしていた編笠を被った浪人風の男が粂二郎の後を追うように店を出て行った。その場を目撃したお仙は、妙な胸騒ぎを覚えて、粂二郎が危ないと五兵衛に訴え、御庭番の政之介につなぎをつけた…。

目次■第一話 大岡裁き見習い/第二話 秘められた想い/第三話 お仙の杯/第四話 伊達虚無僧の音色/第五話 義の黄八丈/解説 森村誠一

装画:宮川雄一
ブックデザイン:石間淳
解説:森村誠一
時代:明和六(1769)九月
場所:谷中の笠森稲荷、浅草寺の境内、浅草安部川町、八丁堀北島町の同心組屋敷、田沼家浜町中屋敷、芝神明社境内、駒込片町、谷中、大円寺の境内、三ツ目之橋袂、大川端町、新材木町、和国橋、ほか
(静山社・静山社文庫・705円・2011/02/05第1刷・292P)
入手日:2012/04/25
読破日:2012/05/02

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