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火天の城

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火天の城火天の城
(かてんのしろ)
山本兼一
(やまもとけんいち)
[戦国]
★★★★☆☆

浅田次郎さん、宮部みゆきさん、夢枕獏さんが熱烈支持した、第11回松本清張賞受賞作ということで、ハードカバーながら購入。

帯に新生松本清張受賞作の文字とともに、「野望に燃える信長の本拠・安土城築城を託された天下一の棟梁父子が挑んだ前代未聞のプロジェクトの全貌」と書かれていて、広告には「大工集団の戦国版プロジェクトX」の文字が躍っていた。NHKテレビの「プロジェクトX}をちゃんと通して見たことがないので、比較はできないが、読み始めるとたちまち、安土城築城という空前の大事業を活写した、この作品に心奪われた。

豊富な資料に裏付けされた築城のドラマが何と言っても面白い。設計から木材の調達、石垣の組み上げ、柱立て、瓦焼きなど、築城の各工程での匠たちの活躍ぶり、徐々にできあがっていく城の様子が生き生きと描かれている。

しかし、この作品が本当に魅力的なのは、単に史料の再構築による築城小説ではなく、岡部又右衛門、以俊(もちとし)の棟梁父子を中心として、安土城築城に関わった人たちのドラマであり、それぞれのキャラクターがしっかり描かれている点である。とくに物語を通じて、若き番匠・以俊が成長していくさまが見どころである。

安土城という、安土桃山時代ということばとともに、教科書に載るような著名な城にスポットをあてた作者の目の付け所は素晴らしい。現存しないゆえに、読み手によって無限に想像力が広がり、築城が一大スペクタクルとなって頭に浮かぶ。また、築城を妨害する乱破や抵抗勢力は登場するが、戦場シーンを描くことなく、しっかりと織田信長の時代を描ききったところも注目したい。

松本清張賞は、1回から10回までは、松本清張さんの功績を称えて、ミステリーと時代小説が主な対象分野であったが、11回目からは良質なエンターテインメント小説全般に対象が広がった。その最初に、山本さんの時代小説作品が受賞したのは、大変喜ばしい。

松本清張賞の受賞作品リスト
★第1回 平成6年度 葉治英哉 またぎ物見隊顛末
第2回 平成7年  該当作なし
★第3回 平成8年度 森福都 長安牡丹花異聞
第4回 平成9年度 村雨貞郎 マリ子の肖像
第5回 平成10年度 横山秀夫 陰の季節
★第6回 平成11年度 島村匠 芳年冥府彷徨
第7回 平成12年度 明野照葉 輪廻(RINKAI)
第8回 平成13年 三咲光郎 群蝶の空
★第9回 平成14年度 山本音也 偽書西鶴(『ひとは化けもんわれも化けもん』)
★第10回 平成15年度 岩井三四二 月ノ浦惣庄公事置書
★第11回 平成16年度 山本兼一 火天の城
★印は時代小説。

物語●熱田神宮の宮御修理番匠岡部又右衛門以言(おかべまたえもんもちとき)は、今川義元迎撃の戦勝祈願に訪れた織田信長に、小さな輿の製作を依頼された。突然の雷雨による天佑と熱田大神の加護により、今川義元を討ち取った信長は、義元のお歯黒首を、輿に乗せて清洲に凱旋した。清洲城に呼び出された又右衛門は、褒美に過分の銭をもらい、戦勝祝いとして、熱田の宮の門と塀を寄進したいので差配するように命じられた。このときより、又右衛門は信長のための番匠(大工)として仕えることになった。

それから十五年がたった、天正三年(1575)11月、又右衛門は、信長から近江の安土に、新しい城を築くという話を聞いた。信長の構想では、安土山のいただきに五重の天守櫓を持つ壮大な城で、天下一の城だという。又右衛門は、その仕事の総棟梁を任せられることになった…。

目次■なし

カバー・表紙装画:北村さゆり
装丁:大久保明子
題字:北村宗介
時代:永禄三年(1560)五月。
場所:熱田神宮、田楽狭間、清洲城、岐阜稲葉山山麓、安土山、四条坊門姥柳町、木曾ほか
(文藝春秋・1,524円・04/06/15第1刷・359P)
購入日:04/06/16
読破日:04/06/20

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