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室の梅 おろく医者覚え帖

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室の梅 おろく医者覚え帖
室の梅 おろく医者覚え帖
(むろのうめ・おろくいしゃおぼえちょう)
宇江佐真理
(うえざまり)
[医術]
★★★★

「おろく」は「南無阿弥陀仏」の六字から来ているが、市井のものは死人の意に使っている。主人公の美馬正哲は奉行所検屍役で、「おろく医者」と呼ばれて、毎日のように死人と格闘していた。しかも図体がでかく容貌魁偉で自分の親から、半鐘泥棒と言われるほどだった。その正哲が一回り年下で細っこい体をした産婆のお杏と結婚していた。人の死と生に立ち向かう夫婦の姿が対照的であり象徴的である。

日本で初めて麻酔を使った手術に成功した、紀州の医師華岡青洲のもとへ、正哲が留学し、その間江戸に残されたお杏が、正哲の書き残した「おろく早見帖」をもとに事件解決に乗り出す話が秀逸だ。

今回は、主人公のひとりが産婆という設定が面白い。宇江佐さんは、作品数は多くないがどの作品もエンターテインメントとしてのクォリティが高く、オリジナリティがあり、いろいろなタイプの捕物ヒーロー創出にチャレンジする姿勢がいい。

◆主な登場人物
美馬正哲:検屍医者
お杏:正哲の妻で、産婆
風松:八丁堀松屋町に住む岡っ引きで、お杏の幼馴染
深町又衛門:北町奉行所定廻り同心
美馬洞哲:正哲の父、八丁堀の町医者
美馬玄哲:正哲の長兄、姫路藩酒井家藩医
美馬良哲:正哲の次兄、松前藩出入りの医者
おきん:正哲の母
お弓:風松の女房
おすが:風松の母で、酒の小売商い「二の倉屋」の女主人
善太郎:芝の中門前町の石屋「石善」の主
お杉:善太郎の女房
お千代:石善の女中
大木仙庵:築地鉄砲洲の蘭方医
清兵衛:絵草紙屋上総屋の若旦那
お島:山王権現御旅所の裏手に住む、清兵衛の妾
佐吉:茅場町の「鷺床」の亭主
お駒:佐吉の女房
小川笙船:小石川養生所の医師
和泉屋清右衛門:やっちゃ場の元締
お袖:清右衛門の女房
おてい:和泉屋の女中
留次:葛西村の百姓
美代治:本材木町の米屋仙台屋の手代
捨吉:深川の岡っ引き

物語●「おろく医者」大川端に娘の土左衛門が上がったが、死因は首吊りらしい…。「おろく早見帖」正哲は紀伊国平山村に住む華岡青洲のところへ、教えを請うために出かけた。後に残されたお杏の手元には“おろく早見帖”が残された…。「山くじら」紀伊から戻って来た正哲は、紀伊での質素な食事の反動で、“山くじら”と記した看板を出しているももんじ屋通いにはまっていた…。「室の梅」茅場町の植木市でお杏は、室で育てた小さな梅の木の鉢を買った…。

目次■おろく医者|おろく早見帖|山くじら|室の梅

装画:中一弥
装幀:丸尾靖子
時代:文化七年
舞台:八丁堀地蔵橋、大川端、芝の中門前町
(講談社・1,600円・98/08/20第1刷・232P)
購入日:98/02/22
読破日:98/08/26

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