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幻の声 髪結い伊三次捕物余話

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幻の声 髪結い伊三次捕物余話
幻の声 髪結い伊三次捕物余話
(まぼろしのこえ・かみゆいいさじとりものよわ)
宇江佐真理
(うえざまり)
[捕物]
★★★★☆☆
[再読]

髪結いの伊三次と深川芸者・文吉の関係が、面白いシリーズの第一作。1998年2月に読んで以来の再読である。初めて読んだとき、捕物の部分に目がいってしまったが、この作品は主人公の伊三次やお文、不破を中心とした、人情にスポットを当てた市井小説の色合いが濃いことに気付く。その観点から読むと、一幕のすぐれた舞台のような構成力、人間描写の巧みさに舌を巻いてしまう。現在の活躍ぶりも当然といったところか。「捕物帳」ではなく「捕物余話」とタイトルについているところがミソ。

芸者というと、今まで可哀想な境遇という意識があったが、江戸時代、女性が自身の実力でつける唯一の職業といっていい。いわば江戸のキャリアウーマンといった側面もある。深川を代表する芸者・文吉ことお文の意地と張りもその表れであり、恋人・伊三次とのやりとりにも随所にそれが見れて面白い。

捕物の手伝いから足を洗い、廻り髪結いの身から一本立ちして、床(店)を構えたいと考える伊三次と、いつかは町家のおかみさんになることを夢見る芸者のお文。やはり普通がいちばんか。

物語●「幻の声」かどわかしの下手人が捕まった。その情婦の深川芸者が、下手人の代わりに名乗り出た…。「暁の雲」お文の先輩で、相思相愛の末、一緒になった、塩魚問屋のおかみの亭主が突然死んだ…。「赤い闇」隣家に住む同僚の同心が、不破にある悩みを打ち明けた…。「備後表」少年時代の伊三次を支えた畳表織りの“おっ母ァ”の最後の願いとは…。「星の降る夜」大晦日、伊三次は仕事を終えて裏店へ帰り、我が家で見つけたものは…。

目次■幻の声|暁の雲|赤い闇|備後表|星の降る夜|解説 常盤新平

装画:東啓三郎
装丁:坂田政則
解説:常盤新平
時代:寛政六、七年ぐらいか
場所:深川蛤町、茅場町、亀島町、畳町、京橋炭町ほか
(文春文庫・448円・00/04/10第1刷、00/05/30第2刷・276P)
購入日:00/11/23
読破日:00/11/24

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