江戸町奉行所吟味控 比翼塚


比翼塚 江戸町奉行所吟味控(2) (双葉文庫)
江戸町奉行所吟味控 比翼塚
(えどまちぶぎょうしょぎんみひかえ ひよくづか)
植松三十里
(うえまつみどり)
[捕物]
★★★★☆

八百屋お七を描いた『半鐘 江戸町奉行所吟味控』に続く、江戸時代に実際に起きた、謎だらけの事件に迫る、新しい形式の書き下ろし時代小説シリーズ第二弾。

捕物小説に分類したが、犯人探し(比較的前のページで犯人は明らかにされる)よりは、なぜ、その事件を起こしたか、また犯人はどういう人間像なのかに焦点を当てて物語は描かれている。

この物語で描かれている平井権八(ひらいごんぱち)は実在の人物で、彼が起こした事件は、四世鶴屋南北(「東海道四谷怪談」などで知られる江戸中期の狂言作者)によって、主人公の名を白井権八と変えて、「浮世柄比翼稲妻(うきよづかひよくのいなづま)」という芝居に書かれている。

芝居は、幡随院長兵衛という侠客が、逃走中の白井権八に「お若えの、お待ちなせえやし」の声をかける、「鈴ヶ森」の幕が有名。江戸から明治にかけての人にとっては、おなじみの人物である。

チャレンジングな手法で、今の時代では忘れられた事件を取り上げて、現代に生きるわれわれにも共感できる物語に仕上げて、最後まで一気に読ませる作者の手腕は見事。

探偵役をつとめる南町同心永田誠太郎の恋がサイドストーリーとして描かれていて、爽快な読了感を与えてくれる。

奉行所は南町と北町で、毎月、当番と非番を交代する。
奇数月は南町、偶数月は北町奉行所の当番月だ。
当番になると、奉行所は門を開け、新しい訴訟を受けつける。
非番の月には門を閉じ、前月からの未解決事件の調査を続ける。
(『江戸町奉行所吟味控 比翼塚』P.198より)


江戸町奉行所は、ひと月交代で当番と非番を繰り返していたことは知っていたが、奇数月は南町、偶数月は北町と当番月が決まっていたのか。

主な登場人物◆
永田誠太郎:南町奉行所定町廻同心
綿貫三郎右衛門:南町奉行所与力
お比佐:三郎右衛門の娘
お安:三郎右衛門の妻
裕之助:お比佐の兄で、与力見習い
利兵衛:吉原の揚屋小松楼の主
小紫:三浦屋の太夫(最も格の高い遊女)
平井正右衛門:鳥取藩池田家三十二万石の家臣で、六百石取り
平井権八:正右衛門の長男で、十七歳で剣術の奥儀を極め、翌年秋に父の同僚だった本庄助太夫を殺して脱藩した
お喜与:権八の母
随川:普化宗の僧で、目黒東昌寺の住職
三次:関所破りの案内人

物語●雨の日に吉原に向かう日本堤で、吉原一と評判の太夫小紫の馴染み客の裕福な商人が手代と一緒に殺された。南町奉行所定町廻同心の永田誠太郎は下手人を追うが、同じ場所で第二の事件が起こる…。
誠太郎は、鳥取池田藩を脱藩した平井権八が犯人らしいと突き止めるが、事件以後、その足取りは杳としてわからなくなる…。

目次■第一章 吉原大門/第二章 手配書/第三章 虚無僧の寺/第四章 それぞれの償い/第五章 馴れ初め/第六章 関所破り/第七章 与力吟味/第八章 獄門へ/第九章 誠太郎の恋

カバーイラストレーション:勢克史
カバーデザイン:沼田美奈子
時代:延宝六年(1678)
場所:日本堤、吉原、八丁堀、南町奉行所(後の北町奉行所の場所)、鳥取池田藩上屋敷、目黒東昌寺、瀧泉寺、小田原、箱根山、三島、鳥取城下、泪橋、ほか
(祥伝社・祥伝社文庫・600円・2011/10/16第1刷・277P)
入手日:2011/12/31
読破日:2012/01/02

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