化粧の裏 御広敷用人 大奥記録(二)


化粧の裏 御広敷用人 大奥記録(二)
化粧の裏 御広敷用人 大奥記録(二)
(けしょうのうら おひろしきようにん おおおくきろく2)
上田秀人
(うえだひでと)
[伝奇]
★★★☆☆

公儀御広敷用人で、一放流の剣の達人・水城聡四郎が活躍する「御広敷用人 大奥記録」シリーズの第2弾。

「まずは、清閑寺家について調べねばなるまい」
「一応のお調べはなさってから、来られたのでございましょう」
「うむ、と申しても、幕府にある記録くらいだがな」
 歩きながら、聡四郎はうなずいた。
「清閑寺家は、藤原北家歓修寺系の支流。家格は名家。名家は、文官の筋で、蔵人頭、中納言を経て、大納言にまで進む。一度途絶えたが、江戸時代の初めに中御門家から養子をとって再興した。家禄は百八十石」
「たった……。大納言にあがれる家柄で」
 玄馬は目を剥いた。

(『化粧の裏 御広敷用人 大奥記録(二)』P.15より)


なるほど、武家で大納言といえば、御三家の尾張家と紀州家だけだが、公家とはそういうものか。力と名分を分けた徳川幕府の統治の要諦がここに。

 吉宗が手元の紙を加納久通の前へ滑らせた。
「これは……」
「数年前の幕府ご入り用払高積じゃ」
 問う加納久通へ、吉宗が答えた。

(『化粧の裏 御広敷用人 大奥記録(二)』P.31より)


ご入り用払高積とは、幕府の一年間の総収入と総支出を記した勘定方の記録で、この当時の総収入がおよそ百五十万両で、大奥の総支払額が二十六万八千両で二割近くを占めていた。この額は旗本・御家人の俸禄の半分に等しいという。吉宗は、財政再建のために大奥のコストカットに取り組もうとするのが、この物語の背景。


「神のほとんどが祟り神だ」

(中略)

「祟られぬためには、ていねいに扱わねばならぬ。怒りを買わぬよう、試行錯誤して受け継がれてきた作法。そこから生まれたのが礼だ。礼を尽くす。それは、相手を己より上の者として認めることよ」
「仰せのとおりでございまする」
 聡四郎も納得した。

(『化粧の裏 御広敷用人 大奥記録(二)』P.150より)


聡四郎が公家と大名家との婚姻で必要なものを権中納言の四条隆安に尋ねる。隆安は、金と名分だと答え、名分としては礼法についてくわしい公家の娘が大名家の奥へ礼儀作法を教えるために下るとするのだという。

さて、物語は、聡四郎と玄馬の主従に、大奥の権力者の命を受けた伊賀者が執拗に襲撃を繰り返す。その剣と忍び技の応酬が読みどころの一つ。将軍と大奥、そして公家を巻き込んだ暗闘の行方も気になるところ。(このシリーズは作者には珍しく、一巻ごとには完結しない)

主な登場人物
水城聡四郎:寄合旗本五百五十石
紅:人入れ屋相模屋伝兵衛の娘で、聡四郎の妻
大宮玄馬:水城家の家士筆頭
伊之介:相模屋の元番頭で、品川の茶店の主
二島喜左:御広敷伊賀者
藤林耕斎:伊賀の忍を束ねる郷士
源太:伊賀者
次郎:伊賀者
徳川吉宗:八代将軍
加納久通:御側御用取次
月光院:七代将軍家継生母喜世の方
天英院:天英院付きの六代将軍家宣の正室照姫
姉小路:大奥筆頭上臈
小出半太夫:御広敷用人
倉地文平:お庭番
柘植一郎兵衛:伊賀者元組頭
西田:伊賀者
外堂次郎:伊賀者の小頭
須川:伊賀者
田中:伊賀者
鴨屋兵衛:四条の旅籠の主
お孝:旅籠の女中
四条隆安:権中納言
近衛基熈:元関白で、天英院の父
一条兼香:権大納言
藤川義右衛門:御広敷伊賀者組頭
竹姫:五代将軍綱吉の養女で、清閑寺権大納言煕定の娘
鹿野:竹姫付きの中臈
八郎:伊賀者
矢太郎:伊賀者
佐太:伊賀者
他助:伊賀者
喜助:伊賀者
悟市:伊賀者
林:伊賀の女忍
相模屋伝兵衛:人入れ屋の主人で、紅の父
松島:月光院に近い上臈
川村弥五左衛門:お庭番
斎藤主税:加賀藩用人
弥須:前田家老女
相川左門:御広敷侍
多田野伊蔵:御広敷侍
清島:中臈
世津:大奥女中
湖衣:大奥女中
桔梗:大奥女中
多加:大奥女中
清閑寺煕定:竹姫の父
袖:伊賀の女忍
澪:伊賀の女忍

物語●八代将軍徳川吉宗の登用で御広敷用人となった水城聡四郎。将軍の命を受けて、幼くして大奥にいる竹姫の事情を調べるために、実家の清閑寺家の屋敷がある京に来ていた。京では、公家の事情を権中納言の四条隆安に尋ねた。しかし、その聡四郎の動きを大奥の実力者の命を受けた伊賀者が見張り、襲撃する機会を狙っていた…。
聡四郎は無事に江戸に戻れるのか。二度も許婚を輿入れ前に亡くした竹姫に隠された驚愕の真相とは…。

目次■第一章 都の人々/第二章 忍の掟/第三章 公武の隔/第四章 湊の攻防/第五章 過去の闇

カバーイラスト:西のぼる
カバーデザイン:多田和博
時代:享保元年(1716)
場所:京都四条、清閑寺家屋敷、江戸城、伏見稲荷、和歌山城、四条家屋敷、亀山、桑名、本郷弓町、加賀前田家上屋敷、ほか
(光文社・光文社文庫・619円・2012/07/20第1刷・337P)
入手日:2012/11/25
読破日:2012/12/03

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