読売屋 天一郎


読売屋 天一郎 (光文社時代小説文庫)
読売屋 天一郎
(よみうりやてんいちろう)
辻堂魁
(つじどうかい)
[痛快]
★★★★

江戸一番の読売屋(瓦版屋)が、悪を暴き、懲らしめるシリーズ第1弾。正義のために命を賭ける主人公、チャンバラシーンの迫力、人情に厚い登場人物、謎解き、そして江戸情緒、時代小説のエッセンスが詰まった作品。

主人公の水月天一郎(みなづきてんいちろう)は、数え四歳のときに母の孝江が千五百石の旗本村井五十左衛門の後妻となり、母親に手を引かれて村井家に入る。当初は五十左衛門の長女の婿になり家を継ぐ話があったが、七歳のときに弟が生まれたことで、部屋住みとなる。そして、八年前の二十二歳の冬に家を出て、読売屋「末成り屋」を始めた。

仲間は、御家人の三男で絵師の錦修斎、同じく御家人の二男で彫師と摺師を兼ねる鍬形三流、御家人の四男で瓦版の売り子をする蕪城和助の三人。いずれも貧乏御家人の部屋住みで、明日に望みがあるわけではない。

 無駄なものへの愛着や執着が己の性なら、無駄こそ己の命の営みの証なのだ。
 愛着や執着を無駄と切り捨てたとき、己の営みは終わるだろう。
 なぜなら読売屋天一郎の命の営みこそ、世間の無用者、この世の無駄だからだ。

(『読売屋 天一郎』P.65より)


そんな若者たちが、刀を捨てて読売屋として、世の中の人の知りたいこと、知りたくないこと、知られてはならないことを、遠眼鏡で眺めるように、世間の人に知らせることを生業とする。

そんな天一郎らが、瓦版のネタとして狙ったのは、老中田沼意次の縁者が、島帰りだという…。

主な登場人物
水月天一郎:築地の読売屋「末成り屋(うらなりや)」の主人。三十歳
村井孝江:天一郎の母で、村井五十左衛門の後妻
村井五十左衛門:千五百石の旗本
竹中慎右衛門:村井家の用人
蕪城和助:「末成り屋」の売り子
錦修斎:「末成り屋」の絵師
鍬形三流:「末成り屋」の彫し師で摺り師
玄の市:南小田原町に住む座頭
お久:玄の市の女房
壬生左衛門之丞:姫路酒井家江戸家老
壬生美鶴:左衛門之丞の一人娘
初瀬十五郎:南町奉行所定町廻り方同心
鍋島小右衛門:臨時廻り方同心
乙三郎:菓子職人で、八丈島に流罪になる
紫摩:流人の妻
摘実:紫摩の娘
高石友則:勘定吟味役
三文字屋善兵衛:宇田川町の水油仲買
伝蔵:三文字屋の番頭
辰次:芝神明前を縄張りにしている地廻り
筒井太七郎:公儀小納戸衆旗本
筒井安右衛門:太七郎の養父で隠居
雪乃:太七郎の妻で、安右衛門の娘
田沼治太夫:ご書院番頭四千石で太七郎の実父
赤江雨竜:権門師
お菊:町芸者
勝吉:品川駅歩行新宿の旅籠松葉の主人
刃八:鮫ヶ橋の地廻り
亮晏:八丁堀の蘭医

物語●築地で読売屋「末成り屋」を営む水月天一郎は、勘定吟味役の高石友則が、水油仲買の三文字屋善兵衛から、明かり用の魚油の商いができるように株仲間の結成を許されるように便宜を図って賄賂を受けているという情報が入った。その探索を始めた天一郎は、すぐに何者かに襲われる…。

目次■序 御赦免船/第一章 一天地六/第二章 木挽町広小路/第三章 権門師/第四章 流罪/第五章 友の情け/第六章 島の女/第七章 築地川/結 秋船

カバーイラスト:西のぼる
カバーデザイン:加藤聡(KINDAI)
時代:安永三年秋
場所:八丈島。裏四番町富士見坂、三田聖坂、木挽町広小路、采女ヶ原、木挽町四丁目、赤坂御門外牛啼坂、姫路酒井家上屋敷、南小田原町、宇田川町、麹町九丁目心法寺、南町奉行所、弥左衛門町、品川駅歩行新宿、ほか
(徳間書店・徳間文庫・619円・2011/12/20第1刷・333P)
入手日:2012/01/12
読破日:2012/04/21

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