双星の剣 疾風の義賊


双星の剣 疾風の義賊 (徳間文庫)
双星の剣 疾風の義賊
(そうせいのけん しっぷうのぎぞく)
辻堂魁
(つじどうかい)
[ピカレスク]
★★★★☆

文庫書き下ろし。

大坂で大塩平八郎の騒動が起こった翌年の天保九年が舞台。ここ数年来の天候異変で米の不作が続きひどい飢饉に見舞われたうえに、米問屋や仲買が米の買い占めや流通を操って米の値段はどんどん上がっていたころである。

「打毀しも飢饉も恐いですが、盗っ人強盗の類も増えていますね。八州では逃散した百姓らが無宿渡世に身を落とし、中には盗っ人強盗の仲間を作って、八州を荒し廻っているというじゃありませんか。今に、そういう八州の強盗団らが江戸にもひと稼ぎしにくると、そうれも読売がずいぶんと言い立てていますよ」

(『双星の剣』P.41より)


これは物語の始めで、江戸にやってくる主人公たちと同じ船に乗り合わせた商人の言葉。この商人は江戸の米仲買商蓬莱屋の番頭で、「江戸にはこの四月にお目付役に就かれた剃刀耀蔵こと鳥居耀蔵がいる」と続け、心配には及ばないと続けている。

不穏な時代だからこそ、鳥居耀蔵が頭角を現し、重用されたのかもしれない。

それはともかくとして、時代小説に鳥居耀蔵が登場すると、サスペンス度が2割増しになるぐらいのイメージがある。本書もその例外ではない。物語では、天保世直党と名乗る義賊集団が悪徳米仲買をかどわかす事件が描かれる。ところが、事件の裏には十二年前の出来事が関係していた…。

政道(政治)が歪んだ時代だからこそ、既成の法律の枠外で行動する義賊を求めるのか。
今後のストーリー展開から目が離せない、ハラハラドキドキするシリーズがまた生まれた。

主な登場人物
船宿の亭主:安房平塚出身の吉治郎
代助:吉治郎の仲間
羊太:代助の弟で吉治郎の仲間
惣吉:吉治郎の仲間
甘粕孝康:公儀十人目付
甘粕克衛(あまかすかつもり):孝康の父で隠居
森安郷(もりやすさと):孝康の配下の小人目付小人頭
斎権兵衛:克衛の元の配下で小人目付頭
斎乱之介:権兵衛の養子
鳥居耀蔵:目付
辻政之進:鳥居耀蔵配下の小人目付頭
蓬莱屋岸右衛門:堀江町の米仲買商
白石屋六三郎:伊勢町の米仲買商
山福屋太兵衛:本船町の米仲買商
寺坂正軒:陽明学を修めた儒学者
寺坂三和:正軒の娘
藤次:寺坂家の下男
大江勘句郎:北町奉行所定町廻り方同心
文彦:大江の手先
お杉:年老いた遊女、元人買
花田勘弥:読売屋
大草能登守:北町奉行
川北文吾:北町奉行所年番方筆頭与力
青木慎太郎:北町奉行所廻り方同心
与五右衛門:常州潮来の侠客

物語●天保九年夏のはじめ、木更津から四人の若者が櫓付きの五大力船で江戸にやってきた。男たちの一人、吉治郎と名乗る若い男は、洲崎弁天の店じまいをしていた船宿を買い取り、改装して商いを再開した。吉治郎のもとには、幼なじみの代助、羊太、惣吉の三人の仲間がいた。そのころ江戸では、諸国の米不足に便乗して、米仲買が米を買い占め、流通を抑え、米の値段を操っていた。
そんな折り、高級料亭での寄合帰りの米仲買商の蓬莱屋岸右衛門、白石屋六三郎、山福屋太兵衛が、翁や烏、鬼、猿の面をかぶった全身黒装束の四人にかどわかされる事件が起こった…。

目次■緒 捨て子/一之章 弁天屋主人/二之章 米仲買商/三之章 米河岸一揆/四之章 奪還/結 故郷

カバーイラスト:卯月みゆき
カバーデザイン:ムシカゴグラフィックス、鈴木俊文
時代:天保九年(1838)夏の初め
場所:木更津、浮世小路、深川洲崎弁天前町、三年坂、初音の馬場、深川元町代地、木挽町三丁目、新網北町、日本橋大高札場、永代寺、深川黒江町、深川摩利支天横町、南茅場町大番屋、吉祥寺、下総小岩村、ほか
(徳間書店・徳間文庫・629円・2011/07/15第1刷・325P)
入手日:2012/04/25
読破日:2012/05/27

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