介錯人別所龍玄始末


介錯人別所龍玄始末
介錯人別所龍玄始末
(かいしゃくにんべっしょりゅうげんしまつ)
辻堂魁
(つじどうかい)
[剣豪]
★★★★☆

「風の市兵衛」シリーズが、『この時代小説がすごい! 2015年版』で第3位にランクインした、辻堂魁さんの最新文庫書き下ろし。主人公の別所龍玄は、「風の市兵衛」第4弾『月夜行』で、市兵衛と剣を交えた、あの凄腕の剣豪です。

お家騒動で揺れる出石藩の姫君が江戸市中で命を狙われ、市兵衛は等々力村に身を潜めた姫の護衛を務め、潜伏先を知られ殺到する刺客相手に、風の剣を振るい立ち向かうお話でした。

さて、『介錯人別所龍玄始末』には、四話しゅうろくされている。
龍玄は、旗本の部屋住みの切腹の介錯人を依頼される。部屋住みの身でありながら、艶本の戯作者を裏稼業にしていたことが露見しての屠腹となった……(第一話 龍玄さん)。龍玄は、師の大沢虎次郎から呼ばれて、道場で奥羽廣川家の馬廻り役・新坂小次郎を引き合わされ、木刀で立ち合うことになった……(第二話 一期一会)。
龍玄は、幼馴染みで駆け落ちした八百屋の娘お峰の行方を知った。その夜、義父で旗本の丸山織之助から友の息子が刃傷沙汰を起こし腹を切らせることになり、介錯を依頼される(第三話 悲悲……)。

『月夜行』では、脇役で出番が少ないながらも光を放っていた龍玄。本作では、牢屋敷の死罪の首うち役にして、切腹の介錯人という生業への矜持が端正に描かれています。五尺五寸足らずの痩躯で男前の風貌に、評判だけで仕事を頼んだ者が後悔するほどながら、剣の腕前は本郷の一刀流・大沢道場で、十六歳にして壮年の巨漢の師範代を打ち負かすほど。とくに第四話「雨垂れ」での剣戟シーンは、圧巻です。

妻と子へ愛情を注ぐ姿が温かく、物語から血腥さを洗い流してくれて、読み味もすっきりです。剣の冴えもさることながら、魅力的なキャラクターに、読了後に、もう一度、『月夜行』を読み直してみたくなりました。

第一話「龍玄さん」は『大江戸「町」物語』に、第二話「一期一会」は『大江戸「町」物語 月』、第三話「悲悲……」は『大江戸「町」物語 光』に、初出で収録されています。第四話「雨垂れ」は文庫書き下ろしです。

目次■第一話 龍玄さん/第二話 一期一会/第三話 悲悲……/第四話 雨垂れ|大江戸「町」案内 湯島・本郷・板橋宿・志村

カバーイラスト:卯月みゆき
カバーデザイン:門田耕侍(SPRAY)
時代:明記されず
場所:湯島無縁坂講安寺門前町、神田明神下、湯島天神、菊坂臺町、箱崎町三俣、庚申塚、志村、府中、ほか
(宝島社・講談社文庫・650円+税・2015/03/19第1刷・303P)
入手日:2015/03/05
読破日:2015/03/11
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