日暮し同心始末帖 冬の風鈴


日暮し同心始末帖 冬の風鈴 (学研M文庫)
日暮し同心始末帖 冬の風鈴
(ひぐらしどうしんしまつちょう ふゆのふうりん)
辻堂魁
(つじどうかい)
[捕物]
★★★★☆

文庫書き下ろし。

北町奉行所平同心の日暮龍平(ひぐらしりゅうへい)が活躍する「日暮し同心始末帖」シリーズの第三作め。

三年三月ぶりに石川島の人足寄場から出所したばかりの鉢助を、男たちが待ち伏せしていた。サスペンスに満ちた発端。そして鉢助が死体として見つかるが、探索を始めると鉢助は三年前に病死していた。鉢助と名乗る男は誰で、何のために人足寄場にいたのか、そして、男を殺したのは誰か? いくつもの謎が重なり、一気に物語に引き込まれた。

この「日暮し同心始末帖」シリーズの読みどころのひとつに、きめ細かい探索シーンの描写がある。わずかな手がかりをもとに、事件関係者の話を丹念に聞き込み隠れていた事実を掘り起こし、次第に事件の全容を明らかにしていくプロセスに無理がなく、ストーリー展開が面白い。

 ひゅうん……と青い閃光が走った。
 瞬時に反応した龍平は左足を大きく踏みこんで、抜刀した。
 両者は息も漏らさなかった。
 光が上下に激しく交差し、山頂に鋼と鋼が牙を剥き合ったうなりが響いた。
 宙を翻った龍平の刀が、平ノ介のかえす刀より早かった。
 龍平の二の太刀がおぼろ月を斬り裂いた。
 
(『日暮し同心始末帖 冬の風鈴』P.263より)


もちろん、剣戟シーンの迫力も凄い。それもそのはずで、龍平は小野派一刀流の遣い手で、彼の剣を間近で見た者は「旦那の剣は凄いよね。旦那の一刀流は、一刀の龍の一刀龍なんだぜ。凄いに決まっているさ」と言うほど。

主な登場人物
日暮龍平:北町奉行所平同心
麻奈:龍平の妻
俊太郎:龍平の息子
菜実:龍平の娘
日暮達広:麻奈の父で、龍平の舅
鈴与:龍平の姑
松助:日暮家の下男
宮三:口入れ稼業《梅宮》の主人
寛一:宮三の息子
吉弥:京風小料理屋《桔梗》の主人
お諏訪:吉弥の娘
永田備前守:北町奉行
福澤兼弘:北町奉行所筆頭与力
柚木常朝:北町奉行所詮議役筆頭与力
梨田冠右衛門:北町奉行所五番組組頭の年寄同心
柳原友助:北町奉行所同心
春原繁太:北町奉行所同心
鉢助:常州無宿
駒吉:佃島いな漁の漁師
青木周五郎:寄場の元締
太吉:竹笠職人
宇衛門:古石の店頭(女郎屋の主人)
耕次郎:石置場の物乞いの頭
馬之助:富久町の長屋馬之助店の家主
渡辺孫左衛門:火付盗賊改本役
土屋半助:火付盗賊改の同心
吉三郎:上野浅草界隈の盛り場の顔役で、土屋の手先
常次:吉三郎の下っ引
長左衛門:質屋朱鷺屋の主
長吾:長左衛門の倅
お林:長左衛門の妾
お末:お林の下女
伝七:質屋朱鷺屋の元手代
民助:一匹狼のやくざで金貸し
忍平ノ介:忍藩の浪人者
嵐竹蔵:忍藩足軽
蕎麦屋《滝乃家》の主人
お篠:《滝乃家》の手伝女の娘
北村洋之進:小姓組を勤める千石の旗本
伊藤陣八郎:北村の剣術指南役

物語●北町奉行所平同心日暮龍平が宿直をつとめた明け方、佃島の海に死体があがったという知らせがあり、龍平が験視をすることになった。死体は男で、酷い暴行を受けて殺されてから海に捨てられたものだった。身元の探索をした結果、男は石川島の人足寄場から出たばかりの無宿人鉢助だった…。

だが、調べを続けると、鉢助は三年前に死んでおり、火付盗賊改めの手先に追われる強盗犯が鉢助になりすましていたものと判明した…。

目次■序 三年三月/第一話 春蝉/第二話 冬の風鈴/第三話 おぼろ月/結 一刀龍

カバーイラスト:皆川幸輝
カバーデザイン:妹尾浩也
時代:文化十四年四月下旬
場所:石川島人足寄場、鉄砲洲浪よけ稲荷、北町奉行所、富久町、神田竪大工町、亀島町、鮫ヶ橋、小石川小日向清水谷町、赤城明神下水道町、高輪車町、ひぐらし道、王子権現裏、飛鳥山、神田お玉ヶ池稲荷、ほか
(学研パブリッシング・学研M文庫・629円・2010/11/22第1刷・292P)
入手日:2012/05/01
読破日:2012/05/09

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