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べらぼう村雨 女泣川ものがたり

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べらぼう村雨 女泣川ものがたりべらぼう村雨 女泣川ものがたり
(べらぼうむらさめ おなきがわものがたり)
都筑道夫
[市井]
★★★☆☆

新宿の紀伊國屋書店本店でようやく入手した都筑時代小説。続編の方もあわせて購入。

都筑さんは、十年ぐらい昔に、ぼくのハマッた推理小説畑の作家。角川文庫を中心に、講談社文庫からもたくさん作品が刊行されていた。今は、数タイトルしか流通していないのが残念。キリオン・スレイものなど、名シリーズも懐かしい。

その当時は、時代小説にはまったく興味なくこの作品も見逃していた。

サブタイトル「女泣川ものがたり」の謂れは、中川から隅田川まで、本所と深川のさかいを流れている川を、小名木川といって、「小さな名木の川と書きますねえ。でも、あたしは、女の泣く川と書いて、おなきがわと読ませたほうがいい、と思うんですよ。深川の岡場所が、さかっていたころから、この土地じゃあ、ずいぶん女が泣いています。あの川は、女の涙をあつめて、流れているんですよ」と、隠し売女・お関に説明させている。このサブタイトルと、「べらぼう村雨」の由来で、ほぼこの作品は成立している。

器用な筆致の作家であるが、とくに一幕の舞台のような「舌だし三番叟」と長屋の花見をテーマ(人気シリーズ「なめくじ長屋」をも連想させる)にした「玉屋でござい」が泣かせる。

また、主人公の「べらぼうの旦那」こと、左文字小弥太は、カート・キャノン(エド・マクベインの別名)にヒントを得て書いた「酔いどれ探偵」(タイトルを忘れてしまった)の時代小説版のようで面白い。

物語●泥酔の末に一夜やっかいになった隠し売女・お関の「どうせ地獄なら、鬼のいない地獄を作りたい」という言葉に惚れて、貧乏旗本の若隠居・左文字小弥太は売女長屋の用心棒となった…。

目次■べらぼう村雨/泣かぬお北/おばけ燈篭/六間堀しぐれ/舌だし三番叟/玉屋でござい

カバー:三井永一
解説:北村一男(「EQ」編集部)
時代:天保十三年(1841)の改革以降
(文春文庫・369円・88/12/10)
購入日:97/5/31
読破日:97/6/1

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