戦国繚乱


戦国繚乱 (文春文庫)
戦国繚乱
(せんごくりょうらん)
高橋直樹
(たかはしなおき)
[戦国]
★★★★

歴史時代小説で次々と傑作をリリースする、高橋直樹さんの最新文庫。こんな作品単行本で出ていたかなあ、と思っていたら『大友二階崩れ』(1998年8月・文藝春秋刊)のタイトルで出されたものを改題したということ。上杉謙信、大友宗麟、黒田官兵衛という歴史もので、描かれることが多い戦国武将を取り上げた中篇を3編収録している。未読だっただけに早く読みたい。

「城井一族の殉節」は、秀吉の九州征伐に際して、豊前随一の名門城井流(きいりゅう)宇都宮民部少輔鎮房と嫡子弥三郎朝房、小鶴姫らの最期をテーマにした中編。タイトルから悲劇性を類推させられるが、牧歌的なファーストシーンが印象的。黒田官兵衛が重要な役割で登場する。そろそろ司馬遼太郎さんの『播磨灘物語』に取り組んでみたい。

「大友二階崩れ」白石一郎さんの『火炎城』や遠藤周作さんの『王の挽歌』などで、描かれることが多い大友宗麟(義鎮)の若き日を描いた緊迫感あふれる中編。

「不識庵謙信の影」上杉謙信没後の三人の養子(喜平次景勝、三郎景虎、上条弥五郎)たちの後継者争いを描いた中編。謙信に比べて人気がなく、臣下の直江兼続の方がまだ、小説に描かれることが多いように思われる。そのせいか、あまりドラマティックな事件がなかったのかと思われた。後継者となる景勝の描かれ方が面白い。

三編とも、戦国時代とはいえ、中心から離れた目新しい題材を扱っている。その中で、戦国人の苛烈な生き様と死に様を描出していて興趣つきない。高橋さんには、『闇の松明』『山中鹿之介』(ともに文春文庫)など、戦国を舞台にした作品がほかにもあるので、注目していきたい。

物語●「城井一族の殉節(きいいちぞくのじゅんせつ)」豊前国城井谷を統治する、城井流宇都宮家は四百年続く名門。その総帥、民部少輔鎮房の娘・小鶴姫は、鎮房の小姓を務める松田小吉と馬の遠乗りに出かけた…。「大友二階崩れ(おおともにかいくずれ)」豊後国府内の大友館には、当主修理大夫義鑑(よしあき)の御殿と、その嫡子五郎義鎮(よししげ)の御殿の二つの主殿があった。当主の義鑑の御殿には、三歳の塩市丸と五郎とさして年の違わない北の方(当主の正室)がいた。五郎は、室町幕府四職の一つで丹後国の大名、一色左京大夫義孝の娘を嫁に迎えていた。その五郎の重臣たちのもとに、奇怪な注進がもたらされた…。「不識庵謙信の影(ふしきあんけんしんのかげ)」春日山城本丸から南へ一段下がった山腹に位置する中城(ちゅうじょう)と称される郭の主人・上杉喜平次景勝は居館の庭で、野猿に里芋を与えていた。そのもとに、樋口与六(後の直江兼続)が異変を伝えてきた。養父・上杉謙信が厠で中気(脳溢血)の発作で倒れたいう…。

目次■城井一族の殉節|大友二階崩れ|不識庵謙信の影|解説 寺田博

カバー:神長文夫
解説:寺田博
時代:「城井一族の殉節」天正十四年十月。「大友二階崩れ」天文十九年元旦。「不識庵謙信の影」天正六年三月
場所:「城井一族の殉節」豊前国城井谷、小倉。「大友二階崩れ」豊前国府内、別府。「不識庵謙信の影」越後春日山城ほか
(文春文庫・619円・04/12/10第1刷・319P)
購入日:04/12/17
読破日:05/01/12

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