源氏の流儀 源義朝伝


源氏の流儀―源義朝伝 (文春文庫)
源氏の流儀 源義朝伝
(げんじのりゅうぎ みなもとのよしともでん)
高橋直樹
(たかはしなおき)
[源平]
★★★★☆☆

2012年のNHK大河ドラマ「清盛」のライバルともいうべき人物で、今年俄然注目される源義朝を主人公にした、文庫書き下ろし。惜しむらくは、肝心の大河ドラマの視聴率が上がらないこと。

本書は、「源氏の流儀」というタイトルどおり、平家とは異なる源氏の武士としての在り方を鮮やかに描き出している。この時代を理解するためのツボともいうべきものが押さえられていて読み得である。

「三浦、中村、おまえたちは誰の郎等だ」
 おどろいたように三浦義明と中村宗平は顔を見合わせる。義朝の表情を探り見ながら答えた。
「われら源氏の郎等にございます」
 やおら義朝が、大きくかぶりを振る。
「源氏の郎等などというものは、この世におらぬ」
 これを聞いて、二人の武士は、はっと平伏する。
 源氏の流儀だ。彼らは源氏の流儀をわすれていたのだ。平伏した二人の頭上で、義朝の声が響いた。
「おまえたちは、この義朝の郎等か。それとも父為義の郎等か。はっきりせよ」

(『源氏の流儀』P.14より)


棟梁は一人。そいて負けたほうを根絶やしにするのが源氏。一方の平家は一族の力を結集することに重きを置いている。

 清盛が居並ぶ弟たちに、力強くいい聞かせる。
「おまえたちのうちから、もし誰か一人でも欠けるようなことがあれば、平家はそこでお終いだ。確かにひとりひとりに立場がある。立場が違えば、争いたくなる時もあるだろう。だが一門の誰かと争いたくなった時は、まず己れの足元を確かめてみることだ。そして己れの足元を確かめたなら、次に相手の足元もよく見ることだ。おまえたちは必ず気がつくはずだ。同じ平家であることに。相手の立場を掘り崩すことは、己れの立場を掘り崩す結果となるのだ。そのことに気づけば、一門内で争う気持ちなど、どうして起きようか

(『源氏の流儀』P.42より)


そして、源氏の棟梁に伝えられるのが髭切の太刀。家督の証でもあるこの太刀の、物語の中での扱いが絶妙である。

主な登場人物

源義朝:源為義の嫡男
源義平:義朝の長男
源頼朝:義朝の嫡男
源源次朝長:義平の異母弟
源為義:源氏の棟梁、六条判官
帯刀先生義賢:為義の子で、義朝の異母弟
廷尉頼賢:為義の子で、義朝の異母弟
十郎行家:義朝の異母弟、熊野新宮の衆徒
平清盛:平家の棟梁忠盛の嫡男
平重盛:清盛の嫡男
平頼盛:清盛の異母弟、常陸介
池ノ禅尼:頼盛の母で、忠盛の正妻
弥兵衛宗清:頼盛の郎等
上総権介常重:関東一の豪族上総家の惣領
三浦義明:源氏に従う武士の惣領
三浦荒次郎義澄:義明の息子
中村宗平:源氏に従う武士
波多野次郎義通:相模の武士
目代:相模の国司代官
大庭景宗:伊勢神宮に所領を寄進している武士
鎌田次郎正清:義朝の一之郎等
長田忠致:尾張の知多半島を縄張りとする武士で、正清の舅
足利義康:義朝と同族の殿上人
鳥羽上皇
後白河天皇:鳥羽上皇の子
二条天皇:後白河天皇の子
上西門院:後白河天皇の姉
美福門院:鳥羽上皇の皇后
信西入道:宮中第一の智恵者、藤原通憲
俊憲:信西の子
藤原頼長:摂関家の長者で、左大臣
藤原忠通:関白
藤原尹明:天皇に近仕する非蔵人
藤原信頼:中納言
三条公教:内大臣で、院近臣の中心的人物
坊門信隆:院近臣の子弟
吉田経房:院近臣の子弟

物語●十二歳になった源義朝は、父の為義の命で関東へ下れと言われた。熊野水軍の船で関東に下った義朝は、上総国畦蒜で、関東一の豪族、上総家の武士団に迎えられる。元服前の少年だった義朝は、十年を経て押しも押されもせぬ武者へと成長する。その名は関東に轟いていた。そんな義朝…。

目次■第一部 保元の乱/第二部 平治の乱/関連系譜

カバー写真:平治物語絵巻 待賢門院之巻(模本)東京国立博物館・蔵 TNM Image Archives
デザイン:神長文夫+松岡昌代
時代:大治四年(1129)三月十六日
場所:京・石清水、上総・畦蒜、真鶴の浜、大庭御厨、瀬田橋、京・六波羅、六条堀河、池殿、白河殿、三条烏丸、一本御書所、六条河原、堅田、守山、青墓、関ヶ原、ほか
(文藝春秋・文春文庫・562円・2012/3/10第1刷・198P)
入手日:2012/05/19
読破日:2012/05/19

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