灘酒はひとのためならず ものぐさ次郎酔狂日記


灘酒はひとのためならず―ものぐさ次郎酔狂日記 (文春文庫)
灘酒はひとのためならず ものぐさ次郎酔狂日記
(なだざけはひとのためならず ものぐさじろうすいきょうにっき)
祐光正
(すけみつただし)
[痛快]
★★★☆☆☆

文春文庫の書き下ろし痛快時代小説。主人公の三枝恭次郎は、北辰一刀流の大目録皆伝という剣の遣い手。しかしながら、真面目すぎることが欠点。そんな恭次郎が南町奉行遠山金四郎の隠密になる。隠密といっても、隠密廻り同心ではなくて、私的な隠れ密偵といった役目。

その役目を遂行するために、市中にもぐって道楽者の遊び人になることを命じられる。そして、遊び人修行とグレるためのきっかけづくりに長崎に留学するという話がユニークでふるっている。

真面目を絵に描くと恭次郎の顔になるといわれた恭次郎が、次第に遊び人ぶりが板についていくところが面白い。遊び人修行を続けるうちに、剣の腕が上がり、ついには〔まどろみ流安眠剣〕という秘剣を身に付ける。

「それがしの刀は〔備前長船祐光(びしゅうおさひめすけみつ)〕だ」
(『灘酒はひとのためならず』P.287より)


主人公の恭次郎が自分の刀を〔備前長船祐光〕と言う場面があるが、作者はペンネームを室町時代初期の刀工から取ったのだろうか?

主な登場人物
三枝恭次郎景光:町方与力の次男坊で、剣は北辰一刀流の大目録皆伝の腕前。二十四歳
三枝誠太郎:恭次郎の兄で、南町奉行所例繰方与力
千草:誠太郎の妻
遠山左衛門尉金四郎景元:南町奉行
美秋:遠山金四郎の隠密で、柳橋の芸者
千葉周作:北辰一刀流の祖
小松源之進:南町奉行所吟味方与力で、恭次郎の道場仲間
お敬:神田明神で出会った弁天娘
富士森:丸山遊廓の遊女
フィンセント・アーフェルカンプ:出島のドクトル(蘭方医)
森平桂一郎:御家人で金貸し
惣兵衛:上野池之端仲町の袋もの屋〔越山〕
半助:睡蓮の半助と呼ばれる遊び人
五郎八:下谷広小路の煮売り酒屋の主
おこう:神田明神下の升酒屋の娘で、小松の許婚
青木清之助:三十俵二人扶持の御家人
不知火源吾郎:用心棒の浪人
清兵衛:廻船問屋大野屋の主人

物語●町方与力の次男坊として生まれた三枝恭次郎は、お玉が池の玄武館で修行を積み、北辰一刀流の大目録を賜っている剣の名手。しかしながら、まじめを絵に描いたような堅物。師匠の千葉周作からは、「まじめな剣でありすぎる。さらに上をめざすなら、相手に対しおのれを殺し、水に映る月のようにならねばならぬ」と教授される。
師の助言の意味がわからぬ恭次郎は、南町奉行を拝命したばかりの遠山左衛門尉金四郎景元から、突如呼び出される。そして、遠山から命じられたのは、「これより江戸の市井にもぐって道楽者の遊び人となれ」という奇妙な話。そして、遊び人になるために長崎に留学することになる…。

目次■第一章 江戸の堅気は長崎で/第二章 いざ鎌倉河岸/第三章 灘酒はひとのためならず

イラスト:遠藤拓人
デザイン:関口聖司
時代:弘化二年三月十五日
場所:南町奉行所、お玉が池・玄武館、神田明神、長崎・立山役所、丸山遊廓、出島、八丁堀、上野池之端仲町、寛永寺黒門前、下谷広小路、池之端、鎌倉河岸の豊島屋、富沢町、鎌倉浄光明寺裏、妻恋稲荷、根岸、ほか
(文藝春秋・文春文庫・590円・2012/01/10第1刷・317P)
入手日:2012/02/01
読破日:2012/02/14

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