時代小説 読切御免第一巻


時代小説―読切御免〈第1巻〉 (新潮文庫)
時代小説 読切御免第一巻
(じだいしょうせつ・よみきりごめん1)
新潮社編
(しんちょうしゃ・へん)
[アンソロジー]
★★★★

単刀直入・明快なタイトルと、『ノルウェイの森』を彷彿させる装幀に惹かれてGet!

平成九年新潮社より刊行された単行本『歴史の息吹』『白刃光る』『市井図会』の一部を再編集し、新たにコラムを加えたもの。

アンソロジー(CDでいうところのコンピレーション・アルバムといったところか)としてのテーマは、とくにないように思われている。テーマやトーンは、バラバラであるだけに、何でもありの時代小説の懐の深さを感じさせる。収録作家も豪華で、時代小説に興味を持ってもらうにはよい試みだ。中江克己さんのコラムが作品に関連するトピックについてのもので、時代小説ファンにとってありがたい。

宮部みゆきさんの「謀りごと」(『堪忍箱』新潮文庫・収録)と南原幹雄さんの「決闘小栗坂」(『札差平十郎』角川文庫・収録)は既読であったが、他ははじめて読んだ。

安西篤子さんの「刈萱」が淡々とした筆致の中にも不思議な味で印象に残る。冒険小説でおなじみの船戸与一さんの珍しい短篇時代小説を収録したのが新鮮だ。「杖下」は北方さんらしさが出ている現代風の時代小説。「一生不犯異聞」は小松さんらしいひねりが利いた謙信の秘密に迫る短篇。「土場浄瑠璃の」は皆川さんの得意とする幻想ものと芸能ものの融合が楽しめる。それぞれの物語が短い中で、作家たちの個性がしっかり出ているところは見逃せない。

物語●「杖下」南町同心の古市総十郎は、医師の矢野圭順が四人の武士に連れ去られそうになるところに出くわした…。「謀りごと」深川吉水町の丸源長屋は、十年間、たった一度の火事にも遭っていないというのが、差配人の黒兵衛の自慢だった…。「一生不犯異聞」十四歳の長尾景虎(のちの上杉謙信)は栃尾城で、初陣のときを迎えていた…。「刈萱」権現山のかいどり峠で、彦作とかのの夫婦が営む茶店に二人の武士がやってきた…。「決闘小栗坂」大晦日の節季を控えたある日、武家の若奥方ふうの女が初老の用人を連れて、天王町の札差辰巳屋の暖簾をくぐった…。「土場浄瑠璃の」野天小屋でうつ、鳴渡太夫の土場浄瑠璃で、茶汲みをする爺の由次郎のもとに、仇っぽい女がやってきた…。「夜叉鴉」長州藩に身を寄せている尊攘派公家の急先鋒の中山忠光は、急進派の高杉晋作を支持する長府藩士らに命を狙われた…。

目次■北方謙三 杖下|≪コラム≫恐るべし! 江戸の医術|宮部みゆき 謀りごと|≪コラム≫ちょっとうらやましい!? 長屋暮らし|小松重男 一生不犯異聞|≪コラム≫上杉謙信はホモか? インポか?|安西篤子 刈萱|≪コラム≫茶屋のアイドルはどこへいった?|南原幹雄 決闘小栗坂|≪コラム≫江戸のサラ金ビジネス|皆川博子 土場浄瑠璃の|≪コラム≫蛇から猫へと進化した三味線|船戸与一 夜叉鴉|≪コラム≫維新を陰で支えた商人|著者略歴

カバー装幀:大貫卓也
時代:「一生不犯異聞」天文十二年。「夜叉鴉」元治元年。
場所:「杖下」柳原土手、日暮里。「謀りごと」深川吉水町。「一生不犯異聞」栃尾城。「刈萱」かいどり峠。「決闘小栗坂」天王町、小栗坂。「土場浄瑠璃の」東両国。「夜叉鴉」田耕村。ほか
(新潮文庫・476円・04/03/01第1刷・242P)
購入日:04/02/28
読破日:04/03/12

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