平家武人伝


平家武人伝 (PHP文芸文庫)
平家武人伝
(へいけぶじんでん)
嶋津義忠
(しまづよしただ)
[源平]
★★★★☆☆

正直に言うと、江戸時代以外はあまり得意ではない。平安時代末期(源平時代)というと、その歴史をたどることも覚束ない、ていたらくぶりである。源氏ならともかく平氏となると、清盛と敦盛以外は名前も出てこないぐらい。そんな自分だが、この本は堪能できた。

重盛(清盛の嫡男)、忠度(清盛の末弟)、敦盛(清盛の三番目の弟の三男)、重衡(清盛の五男)、維盛(清盛の嫡孫)、教経(清盛の三番目の弟の次男)、知盛(清盛の四男)、宗盛(清盛の三男)の八人の平家の武人のエピソードを綴った連作小説。それぞれが血気盛んだったり、勇壮だったり、凛としていたりと、個性的に描かれていて面白い。

連作形式で治承三年(1179)から寿永三年(1184)までの五年間のエピソードを時系列につないでいっている。頼朝挙兵から壇ノ浦の合戦まで、源平の戦いの物語が平家側から描かれていて興味深い。

大きな収穫は、主要な平家の人物たちがイメージできるようになったことと、平家と源氏の違いがこの作品で明確に捉えることができたことだ。一門の栄達が進み、朝廷での重みを増し、権力をつかむにつれて、歌を覚え、洗練され、公家化していく平家。反面、武芸の熟達、勇猛さ、荒々しい心を失ってしまう。

平家の伝統は長幼の序を大切にしている。一族一門が権力を巡って争うことはないし、結束も固い。その長所は一族の者なら誰もが心得ていた。ひきかえ源氏は主導権を巡って一族で争い、殺し合うのを常としていた。

この本を読んで、NHK大河ドラマ「清盛」を見るのがますます楽しみになった。

主な登場人物
平清盛:平家の総帥
平忠正:清盛の叔父
平重盛:清盛の嫡男
平忠度:忠盛の六男、清盛の末弟
平敦盛:清盛の二番目の弟、経盛の末子
平経正:敦盛の長兄
平重衡:清盛の五男
平維盛:重盛の嫡男
六代:維盛の嫡男
平師盛:重盛の次男
平資盛:重盛の次男
平教経:清盛の三番目の弟教盛の次男
平通盛:清盛の三番目の弟教盛の長男
平業盛:教経の弟
平基盛:清盛の次男、早世する
平知盛:清盛の四男
平知章:知盛の嫡男
平宗盛:清盛の三男
平清宗:宗盛の嫡男
源義朝:源氏の棟梁
源為義:義朝の父
源為朝:為義の八男
源義平:義朝の嫡男、鎌倉悪源太の異名をもつ
源頼朝:義朝の三男
源範頼:頼朝の弟
源義経:頼朝の弟
源義仲:木曾の武士
鎌田政清:義朝の乳兄弟
長田忠致:政清の舅
後白河天皇:鳥羽天皇の子
崇徳上皇:鳥羽天皇の中宮・待賢門院の子
高倉天皇:後白河法皇の第七子で、母は平滋子
安徳天皇:高倉天皇と平徳子(建礼門院)の間の第一皇子
藤原忠通:関白
藤原信西(通憲):後白河天皇の側近。正五位下少納言
藤原忠実:忠通の父で藤原氏の長者
藤原頼長:忠通の弟で左大臣
藤原経宗:権大納言
藤原惟方:検非違使
藤原信頼:権中納言右衛門督
藤原成親:権中納言
俊寛:法勝寺の執行
多田行綱:武士
経子:藤原成親の妹で、重盛の北の方
六代丸:維盛の嫡男
平貞能:重盛の家人
藤原基房:忠通の子で摂政
祇王:白拍子
仏:白拍子
藤原忠清:侍大将
藤原俊成:三位で名高い歌人
岡部六野太忠純:源氏軍の武士
熊谷直実:源氏軍の武士
熊谷直家:直実の息子
河越重房:義経軍の武士
後藤盛長:重衡の乳母子
平時子(二位尼):清盛の正室
坂四郎永覚:南都の悪僧
梶原景季:源氏軍の武士
庄高家:源氏軍の武士
土肥実平:源氏軍の侍大将
平重国:重衡の家人
木工右馬允知時:八条の女院(鳥羽天皇の皇女)に仕える侍
大納言佐殿:重衡の北の方
斎藤実盛:維盛の家臣
斎藤五:実盛の子
斎藤六:実盛の子
小宰相:通盛の北の方。上西門院(後白河法皇の姉)に仕える女房
滝口時員:通盛の譜代の家人
菊王:教経の従者
木村成綱:源氏の武士
玉井資景:源氏の武士
佐藤嗣信:義経の家人
佐藤忠信:嗣信の弟
田口重能:阿波の豪族
田口教能:重能の嫡男
治部卿局:知盛の妻
監物頼方:知盛の家人
藤原景経:宗盛の乳母子
伊勢義盛:義経の腹心
堀親経:義経の郎党
三郎丸:宗盛の牛飼童
北条時政:頼朝の岳父
文覚上人:高雄神護寺の僧
滝口入道:高野山の聖。もとは斎藤時頼と名乗り、重盛に仕える武士
岡部泰綱:駿河国の有力御家人

物語●保元・平治の乱を通じて、武力を基盤に朝廷内での地位を確固としたものにし、ライバルの源氏を追い落として、「平氏にあらざれば人にあらず」といわれた全盛の世を作った平家。
しかし、清盛が重病の床に臥し、嫡男の重盛が四十二歳でこの世を去ると、磐石と思えた平家の繁栄に暗い影が差してくる。重盛の死の一年後、源頼朝が伊豆で挙兵をする…。

目次■序 保元・平治の乱|早過ぎる死 平重盛|文と武 平忠度|小枝の冴え 平敦盛|次なる戦い 平重衡|嫡流の血 平維盛|五人張りの弓 平教経|最後の一兵 平知盛|誇りと恐れ 平宗盛|結 六代啾々|あとがき

装画:平家物語絵巻 巻十一「遠矢」(提供:林原美術館)
装丁:神長文夫+松岡昌代
時代:治承三年(1179)
場所:東三条殿、仁和寺、紀伊田辺、御所、六波羅、熊野本宮大社、小松殿、福原、西八条、清見寺、富士川、倶利伽羅峠、一ノ谷、生田の森、和田岬、屋島、長門国彦島、壇ノ浦、鎌倉、近江国篠原、高野山、田越川、ほか
(PHP研究所・PHP文芸文庫・705円・2012/01/30第1刷・379P)
入手日:2012/01/17
読破日:2012/02/28

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