返り忠兵衛 江戸見聞 春嵐立つ


春嵐立つ-返り忠兵衛江戸見聞 (双葉文庫)
返り忠兵衛 江戸見聞 春嵐立つ
(かえりちゅうべええどけんぶん はるあらしたつ)
芝村凉也
(しばむらりょうや)
[武家]
★★★★

作者芝村凉也(「凉」の偏が「さんずい」ではなく「にすい」であることに注意)さんのデビュー作。プロフィールによると、1961年宮城県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒で、二十数年のサラリーマン生活を経て著述活動に入ったそう。

主人公の筧忠兵衛は、遠州の小藩定海藩の上士の弟で部屋住、つまり兄に養われ、継ぐ家や仕事がない厄介叔父の立場。早くに両親を亡くして、十歳以上も年の離れた兄がたった一人の肉親であり、父親代わりでもあった。

忠兵衛は藩から追われて、江戸で生活を始めることになる。郷里では兄夫婦の下で、部屋住ながら肩身の狭い思いをせず、のうのうと暮らしていた。上士の子弟として生まれ育った身である以上、内職仕事のような日銭稼ぎには手を染めたこともない。特技は、藩の道場で修めた立身流の剣法ぐらい。

 兄に似ぬ忠兵衛は、良く言っても一本気、紗智の目からすれば、短気で粗野な上、口のきき方も知らぬ男に見えた。壮太郎の弟でなければ見離してしまっていたかもしれぬが、なぜか、ふと手を貸してやりたくなるような不思議なところをもっていた。

(『返り忠兵衛 江戸見聞 春嵐立つ』P.46より)


真っ直ぐで正義感の強い性格と、武家らしい立ち振る舞いの端正さと育ちの良さから、応援してあげたくなるようなキャラクター。主人公が脱藩して江戸で生活を始めるというのは、時代小説における黄金率のようなもの、楽しめるものが多い。本編も、今後の展開を追ってみたいシリーズである。

主な登場人物
筧忠兵衛:定海藩の御蔵奉行の弟で、部屋住
筧壮太郎:忠兵衛の兄で、定海藩の御蔵奉行。百五十石
菊坂右門:定海藩の急進派の旗頭
御前:忠兵衛を助ける謎の人物
御前に仕える用人
紗智:御前に仕える奥女中
洲崎屋の番頭
浅井蔵人:御家人
健三:蔵人の使用人
与茂平:蔵人の使用人
勝弥:深川の芸者
おしげ:忠兵衛の住む長屋の住人
おまつ:忠兵衛の住む長屋の住人
弥太郎:おまつの亭主で大工
おみつ:おまつの娘
袖宮の総兵衛:香具師の元締
文次郎:総兵衛の小頭
粂辰:町火消よ組の纏持ち
甚吉:よ組の平鳶
小山内伝兵衛:南町奉行所年番方与力
加寺武右衛門:南町奉行所与力
岸井千蔵:南町奉行所同心
樺島直篤:定海藩主
神原采女正:藩主御側御用取次
佃屋彦右衛門:魚問屋組合世話役
木村勘左衛門:木更津の網元
玄三郎:火消し一番組頭取
植木職人のような老人

物語●ある夜、遠州の小藩定海藩で御蔵奉行を兄に持つ筧忠兵衛は、兄の壮太郎から「化け物屋敷」への使者を命じられる。定海藩は、打ち続く凶作と悪政により財政は逼迫し、藩政改革を求める声が上がっていた。壮太郎のもとに、「改革急進派が君側の奸を斬って主君へ上訴に及ぶべく、今夜半に最後の密議を開く」との報せがもたらされた。御蔵奉行の壮太郎は、面々を慰撫説得し、穏便に収めようと、謀議の場である無住の寺へと向かった…。

目次■第一章 定海騒動/第二章 長っ尻の与茂平/第三章 海辺大工町裏店/第四章 向こう両国の騒ぎ/第五章 江戸真っ二つの大喧嘩/第六章 天の声、人の営み

カバーイラストレーション:浅野隆広
カバーデザイン:長田年伸
時代:明示されず。天保元年(1830)ごろか。文政七年(1824)からは数年後?
場所:遠州の小国・定海(架空)、江戸深川の海辺大工町、本所北割下水、島田町、向島長命寺、本所側両国広小路、深川霊巌寺、ほか
(双葉社・双葉文庫・619円・2011/05/15第1刷・306P)
入手日:2012/04/15
読破日:2012/04/28

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