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高瀬川女船歌 三 銭とり橋

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高瀬川女船歌 三 銭とり橋

(たかせがわおんなふなうた3・ぜにとりばし)

澤田ふじ子

(さわだふじこ)
[市井]
★★★★☆

『高瀬川女船歌』『高瀬川女船歌二 いのちの螢』に続く、高瀬川沿いの名物居酒屋に集う人々の想いを豊かに綴る、シリーズ第3集。

シリーズ3作目の今回は、宗因が出合った僧・普照(ふしょう)を中心に、連作形式の物語が展開する。

宗因は、以前に僧形に身をやつし、四条小橋の南・斎藤町の庚申堂に住みついていた。その頃、托鉢僧として門付けにも立ったが、ひどく侮られることも、再々だったことから、何かと托鉢僧の普照の面倒をみることになる。普照は、木賃宿の小倉屋に泊まりながら、托鉢して浄財を得ていたが、そのほとんどが木賃宿の支払いに充てられて、物乞い同然の姿だったので、以前に宗因が住まいにしていた庚申堂に住めるように世話をした。

宗因の居酒屋に集う常連客たちが、澤田さんの作品らしく、貧乏ながらも人情味あふれる人たちで、読んでいくうちに心が温まっていく好編。しかも、前作で隠岐島に遠島になった、お蕗も帰ってきてファンにはうれしいところ。

泥鰌の蒲焼や茄子の田楽、松茸昆布の佃煮など、宗因のつくる居酒屋メニューがおいしそうで、読んでいると酒が飲みたくなる。

物語●木屋町筋で高瀬船の船頭や曳き人足を相手に、居酒屋・尾張屋を営む宗因こと奈倉宗十郎は、僧・普照が故郷の川に立派な橋を架けようと銭を集めるために勧進していることを知る。
「短夜の笛」お蕗は、生薬問屋に嫁いだものの、夫の悪だくみで追い詰められた末に、進退に窮して遊び人を刺殺して、隠岐島へ流罪に処せられた。そのお蕗が赦免されて半年振りに京に戻ってきた…。「やぶからし」尾張屋の近所に荒物問屋を構える泉屋太郎左衛門は、温厚でしられていたが、ある日、手代に解雇を口にするほど激怒しているところを見かけた宗因は仲裁を申し出て、太郎左衛門の話を聞いた…。「密かの藪」尾張屋の客で、下駄の歯入れ屋を営む九兵衛は、ふとした出来心で、大切なものを掏摸とってしまった…。「扇塚」普照は、荷物を載せた大八車が、道端の溝に車輪を落として往生しているのに出くわして力を貸すことになったが…。「八坂の剣」普照のもとに、木賃宿小倉屋の太郎左衛門がやってきた。小倉屋に滞在している広瀬村の清七という男が相談事があるという…。「銭とり橋」三人のならずものを泊めた普照は、勧進された浄財を奪い取られて失意の底にあった…。

目次■短夜の笛/やぶからし/密かの藪/扇塚/八坂の剣/銭とり橋/解説 縄田一男

装画:蓬田やすひろ
カバーデザイン:松田美由紀(幻冬舎デザイン室)
解説:縄田一男
時代:明記されず(安永九年か)
場所:錦小路、木屋町、斎藤町、三条、西洞院三条下ル、鞘町、米屋町、六角牢屋敷、八坂ほか
(幻冬舎文庫・533円・04/08/05第1刷・305P)
購入日:04/08/11
読破日:04/08/29

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