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啓順凶状旅

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啓順凶状旅啓順凶状旅
(けいじゅんきょうじょうたび)
佐藤雅美
(さとうまさよし)
[股旅]
★★★★☆☆

帯のコピーを読んで、映画『逃亡者』を連想した。濡れ衣の町医者が逃亡生活を送り…、という話らしい。映画の『逃亡者』を見ていないので、どういう展開になるかはまったくわからないが、この作品の主人公は、義理のある人から身代わりを頼まれたことから逃げまわる羽目になる。その事情と義侠心あふれる主人公・啓順(啓次郎)の性格が何とも好ましい。追われる身で、関わり合いになりたくないと思いながらも、病に苦しんでいる人を見ると、ほって置けない。そこで見せる心の葛藤。

啓順の治療方法が、症状ごとに漢方薬を調合する本格的なもので、描写が細かくてとても興味深く、ためになった。

主人公が渡世人のように旅をするということで、ロードムービー風の楽しさもある。佐藤雅美さんの作品の魅力の一つである関八州の風物と人間模様も楽しめる。

物語●秩父の立場茶屋で、渡世人啓次郎こと、元医者の啓順は、腹痛に苦しむ茶屋の主人の様子を見るに見かねて、治療することになった。しかし、啓次郎は、娘浄瑠璃語りの千代春と町火消し十番組の頭取、聖天松五郎の倅を殺した犯人として、凶状持ちとして、聖天松一家に、その行方を追われていた…。

目次■立場茶屋の女/牢番の正体/頼朝街道/下田の旅芸人/波浮の湊/伊三郎の声/江戸の一日/消えた証拠人

装画:横塚繁
装幀:幻冬舎デザイン室
時代:南町奉行が筒井紀伊守政憲の頃(文政四年~天保十二年)
場所:秩父、甲府、三島、下田、川奈、大島、奥州石巻、下総行徳、下谷練塀小路、池之端仲町、品川町、中御徒町、八王子ほか
(幻冬舎・1,700円・00/10/10第1刷・352P)
購入日:00/09/30
読破日:00/11/05

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