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黒頭巾旋風録

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黒頭巾旋風録黒頭巾旋風録
(くろずきんせんぷうろく)
佐々木譲
(ささきじょう)
[蝦夷]
★★★★☆

『ベルリン飛行指令』『エトロフ発緊急電』など、第二次世界大戦下を舞台にしたスパイ冒険小説で活躍されている、佐々木さんの最近文庫化された時代小説。「北海道ウエスタン」ともいうべき、アクションシーンがふんだんに盛り込まれ、楽しめそうな一冊。

「黒頭巾、破邪の鞭が悪を討つ。痛快時代小説!」という帯のキャッチどおりに、スカッとする読み味の作品。天保期の蝦夷地で不正と非道の限りを尽くす和人(松前藩の武士や悪徳商人ら)の前に立ちはだかり、虐げられたアイヌを助ける、正義の味方、黒頭巾の活躍を描いている。

読者はすぐに黒頭巾の正体に気づくが、他の登場人物たちは黒頭巾に扮する人物になかなか気づかないところがミソ。しかも、殺生に直結した剣ではなく、鞭を振るうところもヒーロー度とサスペンス性を高めている。この辺りがストーリーテリングのポイントか。

巻末に収録された、作者の佐々木譲さんと逢坂剛さんの対談であきらかなように、北方謙三さんが『林蔵の貌』、船戸与一さんが『蝦夷地別件〈上〉』を書かれたように、冒険小説を代表する人たちがこぞって、幕末の蝦夷地に注目し、面白い時代小説を書かれている。佐々木さんは、その訳を日本の中でも特に他とは違った歴史を持つ地域であることをあげている。

また、「時代小説を書く楽しさとは、現代に設定したら絶対あり得ないような、メリハリのきいた大きなドラマがつくれることですね。もう一つの面白さは、因果応報が非常にくっきりすること」と述べられていて、なんとも興味深い。

物語●臨済宗の青年僧・惠然(けいねん)は、東蝦夷地のモロランの入り江に船でやってきた。そこで、アイヌの青年が三人の和人に足蹴にされているのを見かけて割って入って乱暴を止めさせた。騒ぎを聞きつけて松前藩の侍がやってきたが、和人の乱暴を黙認していた。惠然は、もともと武家の出で、撃剣と乗馬は小さい頃から習っていたという。十七歳のときに、江戸で役人になるよりも禅の道を選び仏門に入り、この度、幕府が建立した官寺、臨済宗のアッケシ国泰寺に向かうところだった。…。

目次■はじめに/第一章 悲しみの蝦夷地/第二章 黒頭巾現る/第三章 広まる噂/第四章 地獄山の風景/第五章 疑念のほこさき/第六章 鞭と短銃/第七章 仕掛け罠/第八章 三度目の正直/第九章 嵐のきざし/第十章 旋風沸き立つ/エピローグ/特別対談 逢坂剛+佐々木譲

カバー装画:百鬼丸
時代:天保八年(1837)五月
場所:モロラン、シャマニ、アッケシ、シベツ、地獄山、トウロ、クスリ、トカプチ、ノツケ半島ほか
(新潮文庫・552円・05/06/01第1刷・386P)
購入日:05/06/02
読破日:05/06/05

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