(ふううん・こうたいよりあいいなしゅういぶん)
(さえきやすひで)
[幕末]
★★★★☆
♪『変化』『雷鳴』に続く、「交代寄合伊那衆異聞」シリーズ第3弾。激変する幕末という時間軸が、波瀾万丈で展開の大きなストーリーとぴったりマッチして、今回も文句なしに面白かった。主人公の座光寺藤之助為清が、老中首座の堀田正睦に長崎行きを命じられ、激動する時代を乗り越えるためには、剣術で肚(はら)を練り、肝を鍛えることが役立つと答えるシーンがカッコいい。
物語は江戸から長崎に舞台を移して展開していく。佐伯さんの他のシリーズの主人公たちと同様に、藤之助がどのような成長ぶりを示していくのか、この後の展開が楽しみだ。
物語の冒頭で、異端の剣士、大石進を彷彿させる武芸者が登場する。大石進は柳河藩士で大石神影流の祖。天保三年(1832)に江戸へ出て、その実力を他流試合で問うた。江戸府内の名門道場に次々と挑み、彼の突きを打ち破るものはいなかった。千葉周作は、大石の突きを防ぐために樽の蓋を竹刀の鍔に使用し、辛うじて引き分けたといわれる。
ブログ◆
2006-05-21 幕末という時間軸で、魅力全開の佐伯作品
2006-05-19 佐伯泰英さんが描く幕末に期待
物語●千葉周作亡き後の北辰一刀流千葉道場玄武館に、かつて江戸の剣術界を震撼させた大石進ばりの道場破りが現れた。五尺三寸の長竹刀、左利きを利しての左手片手突きを得意にする武芸者熊谷十太夫である。熊谷と立ち合った千葉道場の高弟佐和潟清七郎は喉を突き破られ重体になる。師の千葉道三郎の代わりに座光寺藤之助為清が立ち合う……。
目次■第一章 左片手突き/第二章 講武場の鬼/第三章 伝習所候補生/第四章 カステイラの味/第五章 鉈と拳銃/解説 縄田一男