宮本伊織


宮本伊織
宮本伊織
(みやもといおり)
大塚卓嗣
(おおつかたくじ)
[剣豪]
★★★★☆☆

知られざる戦国武将の生涯を描いた『天を裂く 水野勝成放浪記』でデビューした、大塚卓嗣さんの第2作目。今回取り上げたのは、剣豪宮本武蔵の息子(養子)の宮本伊織である。
 
 寛永三年(1626)の夏頃――。
「伊織よ。今日からお前は、俺の息子だ」

 播磨国米田村の庄屋の次男、伊織は、叔父・武蔵の養子にされた。養父の武蔵は、申楽『熊野』を舞ってみせて、ひと月の間に舞えるようにしろと言う。伊織は、叔父の思うとおりに動きたくないと反発しながらも、人から「やってくれ」と言われればやらずに済ますことができない性分から、死ぬ気で修練し、ひと月後に戻ってきた武蔵の前で、仕舞を謡い終える。
 
 武蔵は申楽の教授のみで、播磨国明石の領主小笠原忠政に伊織を小姓として仕えさせられる。武家の作法を知らず、武家の作法を知らず、剣すら振れない伊織は、同僚のいじめられ、馬鹿にされながらも、一人前の武士となるために、礼式、四書五経、武芸につとめる。
 
「この伊織貞次。ただひたすら、小笠原家に忠を尽くしたいと思います。ですが、死に急ぐことだけは致しませぬ。生きて、生き抜いて、生き抜くことで、小笠原家の役に起ちたいと思います」

 偉大なる養父武蔵の息子という重責を果たすために、律儀に働く伊織は、二十歳にして小笠原家の家老に抜擢される。伊織の敵役として、剣豪荒木又右衛門が登場する。二人は将軍家光の御前試合で相まみえ、さらに小倉に転封された小笠原家が巻き込まれ、幕府を震撼させた事件でも敵味方に分かれて戦うことになる……。

 誉れを胸に、死に急ぐ武士が持てはやされた江戸初期に、新しい価値観で生き抜き、小倉藩筆頭家老になった武蔵の養子・伊織を爽やかに描いた青春時代小説。『バカボンド』ファンの方にもおすすめしたい、エンターテインメント時代ロマン。

目次■第一章 宮本伊織貞次/第二章 徳川千/第三章 宮本武蔵守玄信/第四章 松平伊豆守信綱/第五章 荒木又右衛門/エピローグ/あとがき

挿画:宮川雄一
装幀:齋藤視倭子
図版:鈴木規之
時代:寛永三年(1626)夏頃
場所:播磨国米田村、明石、柳生城、江戸城、吉原、小倉、対馬、ほか
(学研マーケティング・1,350円+税・2014/11/11第1刷・321P)
入手日:2014/10/28
読破日:2014/11/12
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