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かずら野

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かずら野
かずら野
(かずらの)
乙川優三郎
(おとかわゆうざぶろう)
[市井]
★★★★☆☆

出版される作品が次々ヒットする乙川さんの待望の文庫化。「運命に流されまいと必死に生きる女の、ひたむきさと切なさにあふれた感動の時代小説。」という裏表紙のコピーが読む気をくすぐる。

海のない信州松代から始まる話なのになぜ海の絵が装画にあるのか? かずら野=葛の野とが意味するものとは? 気になりつつ読み始める。宮尾登美子さんの作品や昔のNHK朝のテレビ小説を思わせる、女の一生をテーマにした物語だ。宿命に翻弄されながらも強く生きるヒロインの姿に感動を覚える。

解説の川本三郎さんが指摘しているように、労働小説と呼べるほど、仕事の現場が生き生きと描かれている。ヒロインの菊子はどんな境遇に置かれても、真摯に仕事に打ち込むことで生きる糧にしている。蚕の糸繰り、藍染め、旅籠での女中の働き、漁場での漁と魚の加工…。彼女ばかりでなく、矜持を持って仕事に取り組む人たちの姿を丹念に描くことで、この作品に何ともいえない清冽な雰囲気を醸し出している。

物語●信濃国松代藩の足軽九原石之助の次女・菊子は、父の命令で十四歳にして、糸師の大店・山城屋彦市に妾奉公に出された。幼なじみの菅井静次郎に見送られて一生の奉公にでる菊子。絶望に沈む彼女の前で若旦那の富治が彦市を殺害する。嫌疑を逃れるために山城屋を出奔し、富治とかりそめの夫婦となった…。

目次■なし

カバー装画:川合玉堂『荒海』(山種美術館蔵)
カバーデザイン:菊地信義
解説:川本三郎
時代:文政十三年。
場所:信濃国松代城下下田町同心町、関屋町、地蔵峠、関宿、深川・蛤町、紺屋町、深川・平野町、弁慶橋、行徳、木颪、銚子ほか
(幻冬舎文庫・533円・04/04/10第1刷・315P)
購入日:04/04/10
読破日:04/04/18

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