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絵巻

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絵巻
絵巻
(えまき)
永井路子
(ながいみちこ)
[平安]
★★★★☆☆

栄枯盛衰の源平の世を、信西の子であり時代の観察者である、静賢法印(じょうけんほういん)の「日記」をもとに描く連作小説。

巻末の付記によると、この作品は、絵巻物のように、ひとつずつの短編を絵画部分に見立て、それを繋ぐ詞書の部分を、静賢法印の日記(作者オリジナル)というかたちで綴っていくという、優雅で趣向を凝らした体裁で構成されている。短編部分の熱さと日記部分のクールさのメリハリが効いている。永井さんの作品を初めて読んだが、いきなりハマってしまった。

全体を通しては、平家の隆盛してゆく様子から、鎌倉幕府の体制確立までを、実力者の側にいて、権力の一部に関与した人物にスポットを当てて時系列で描いていく。

この時代最大のトリックスターともいうべき、後白河法皇像が、周囲の人物を丹念に描くことで、くっきりと浮かび上がっていく、その趣向は見事。もともと清盛や義経より、好きな人物だっただけに、生き生きと描かれていて、大いに楽しめた。

物語●「すがめ殿」やぶにらみの目が特徴の平忠盛。清盛の父が平家一門の発展のもとをつくっていく様を源為義の目を通して描く。「寵姫」後白河法皇の侍女として献身的に仕え、やがて法皇に寵愛されることになる、丹波局を扱っている。「打とうよ鼓」鼓の名手で、後白河法皇の側近だった平知康の引き起こす騒動の数々とは…。「謀臣」今様光源氏・源通親の権謀術数にたけた生き方とは…。「乳母どの」後鳥羽上皇のお気に入りの乳母・藤原兼子を主人公とした話。

目次■すがめ殿/静賢法印日記 その(一)|寵姫/静賢法印日記 その(ニ)|打とうよ鼓/静賢法印日記 その(三)|謀臣/静賢法印日記 その(四)|乳母どの/静賢法印日記 その(五)|解説 尾崎秀樹/付記

カバーCG:小笠原たけし
解説:尾崎秀樹
時代:寛治元年(1087)。白河法皇時代から後鳥羽上皇の時代まで。
場所:朱雀大路、最勝光院、法住寺殿の御所、福原、六条西洞院、六条堀川、鎌倉ほか。
(角川文庫・533円・00/08/25第1刷・282P)
購入日:00/08/26
読破日:00/09/17

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