2023年時代小説SHOWベスト10、発表!

八丁堀同心 加田三七 上・下

アドセンス広告、アフィリエイトを利用しています。
スポンサーリンク

八丁堀同心 加田三七 上
八丁堀同心 加田三七 上・下
(はっちょうぼりどうしん かださんしち)
村上元三
(むらかみげんぞう)
[捕物]
★★★★☆

いやー、面白かった。まさに「半七捕物帳」の系譜にあるシリーズ。オーソドックスな捕物帳だ。

南町奉行所の加田三七は、三十前の若さで定廻り同心に引き上げられたために、叔父の年番方与力蜂屋五左衛門のお蔭とか、妻女のお民の実家が新川筋の酒問屋で裕福なせいだとか、悪口を言われていた。しかし、その働きぶりと金に淡白な性格を、刺青奉行として有名な遠山左衛門尉景元に買われ、正義感が強く情に厚いことで市井の人たちにも好かれていた。この三七を助けるのが、本所石原の幸助と日本橋銀町の清五郎の二人の御用聞だ。

高野長英の自刃を扱った「いやなやつ」や江戸の下肥事情を描いた「黄金仏」など、テーマの面からも興味深い話がある。

物語●「犬と猫と鼠と」岡場所で殺人が行われた…。「色餓鬼亡者」新場の魚市場へ向かう漁師船の男が屋根船の中の男女の死体を見つける…。「夜鷹三味線」夜鷹狩りの子どもたちを懲らしめていた夜鷹の女が…。「犬」岡っ引清五郎の乾分の金助は同じ同輩の留八と捕物に参加するが…。「ぼうふら」チンピラが湯屋で、他の組の親分が殺されるのを目撃する…。「雪駄一足首三つ」木場の材木商が行方不明になり土左衛門で見つかる…。「いやなやつ」四谷鮫河橋の久八は十手を預かるかたわら、夜鷹の元締めをやっていた…。「忘れ霜」堅物の具足商儀兵衛は、隠居したとたん、十六歳の得体の知れない小娘に血道をあげていた…。「生き損ないの女」松の根元で心中くずれの男女が見つかった…。「米を食う狐」浅草御蔵の人足小頭が行方不明になった…。「本所狸」延命寺の境内で、狸と腰元の首くくりが見つかった…。「片腕の骸骨」幽霊がでるという長屋の床下から出てきた骸骨には右腕がなかった…。「鬼灯遊女」三七は吉原に誘われる…。「師走の湯」金のかかった身なりのわりに下帯をしていない刺殺体が見つかった。「ひとり萬歳」三河萬歳の才蔵が牢内で自殺を図った…。「八丁堀貧乏小路」八丁堀の火事で振袖の少年が脇腹を刺された…。「おぼろ月」寺子屋の先生が殺され、その脇に泥酔の男が寝ていた…。「幽霊三味線」金貸しの座頭のもとに、死んだ養妹が幽霊になって現れ、毎晩三味線を弾くという…。「琉球の簪」長髪の若い男の全裸死体が道浄橋の下で見つかった…。「今戸焼の猫」霊験あらたかな猫の置物が市中の話題になっていた…。「親の心子知らず」殺人現場に鳥さしの姿が…。「夏祭宵宮の酒」加賀藩下屋敷から猪が逃げ出した…。「黄金仏」糞尿に窒息した男の死体が見つかった…。「尺八一千両」虚無僧と比丘尼の心中死体が発見された…。「因果小僧」少年たちは、夜鷹狩りを楽しんだ…。「角兵衛獅子」長屋で心中した男の死に様が妙で、角兵衛獅子の逆立ちのようであった。

目次■(上巻)犬と猫と鼠と/色餓鬼亡者/夜鷹三味線/犬/ぼうふら/雪駄一足首三つ/いやなやつ/忘れ霜/生き損ないの女/米を食う狐/本所狸/片腕の骸骨/鬼灯遊女|(下巻)師走の湯/ひとり萬歳/八丁堀貧乏小路/おぼろ月/幽霊三味線/琉球の簪/今戸焼の猫/親の心子知らず/夏祭宵宮の酒/黄金仏/尺八一千両/因果小僧/角兵衛獅子/解説 磯貝勝太郎

カバーイラスト:佐多芳郎
カバーデザイン:秋山法子
解説:磯貝勝太郎
時代:嘉永三年(1839年)
(徳間文庫・上485円、下505円・上88/5/15第1刷、89/7/25第3刷、下88/5/15第1刷・上343P、下382P)
購入日:97/8/4
読破日:97/8/31

Amazon.co.jpで購入