2023年時代小説SHOWベスト10、発表!

巣立ち お鳥見女房

アドセンス広告、アフィリエイトを利用しています。
スポンサーリンク

巣立ち お鳥見女房
巣立ち お鳥見女房
(すだち・おとりみにょうぼう)
諸田玲子
(もろたれいこ)
[武家]
★★★★☆

「お鳥見女房」シリーズの第5弾。深井国さんの表紙装画で伝わるように、今回は矢島家の嫡男久太郎と水野忠邦の鷹匠の娘“鷹姫さま”の祝言がヤマ場の一つ。

文庫解説の縄田一男さんも触れているが、作中人物と時代との関わりが見事。作者はシリーズ物を書くとき、季節感を重視すること、作中人物が年齢を重ねて成長していくさまを活写すること、作中人物に年齢ごとの苦難を経験させること、時代背景にきちんと関連性をもたせることなどを心がけているという。

弘化三年に時代設定がされている。失脚して山形に転封される水野忠邦家の家臣のことが描かれたり、矢島家の次男・久之助が養父より、異国船を警戒し、異国との戦いを覚悟するように教えられたりと、幕末が近付いていることを感じさせる。シリーズが今後、どんな展開を見せるか楽しみ。

『巣立ち』をほのぼのとした人情味溢れる江戸のファミリードラマと読んだら、少しもったいない。お鳥見役の担う、過酷な役目についても作中で触れられている。今巻の最終話の「剛の者」を読んでいるとき、不覚にも涙がこぼれた。(最近、涙腺が過敏にはなっているが…)電車の中でなくてよかった。

第一話の「ぎぎゅう」とは鯰のこと。結城秀康は、ぎぎゅうにそっくりの顔から、家康に於義丸と名付けられたとか。

◆登場人物
珠世:御鳥見役矢島伴之助の妻
矢島伴之助:珠世の夫
久太郎:御鳥見役として出仕する。伴之助の長男
久之助:伴之助の次男。馬庭念流の栗橋道場の指南役を務める
幸江:伴之助の長女。小十人組の家に嫁ぐ
君江:伴之助の次女
久右衛門:珠世の実父で、矢島家の隠居
和知正太夫:水野越前守忠邦の鷹匠
恵以:正太夫の娘。鷹姫と呼ばれている
松井次左衛門:和知正太夫の家臣。珠世の幼なじみ
永坂甚兵衛:大御番組与力
綾:久之助の許婚
近藤求馬:甚兵衛の姉の継子
石塚源太夫:元小田原藩士でかつて矢島家に居候していた
多津:かつて源太夫を仇と狙った女
里:源太夫の長女。しっかり者
秋:源太夫の二女。お転婆。
雪:源太夫の三女。引っ込み思案
源太郎:源太夫の長男
源次郎:源太夫の次男
登美:珠世の従姉
治助:登美の下僕
辰吉:四家町の岡っ引
内藤孫左衛門:御鳥見役組頭
石川幸三郎:御鳥見役仲間
相田八助:御鳥見役仲間
伊佐:御鳥見役の妹
庄兵衛:清土村の百姓
兵太:庄兵衛の息子
中嶋賢次郎:医者
安吉:腕白な男の子
藤助:しゃぼん玉売り
八兵衛:品川の綱差
荘助:葛西の綱差

物語●矢島家の嫡男・久太郎の祝言の日が近づいていた。相手は、珠世の夫伴之助に過酷な陰働きを命じた前の老中水野越前守忠邦の鷹匠・和知正太夫の娘で「鷹姫」と呼ばれていた恵以。祝言の日まで心労、当日の思わぬ騒動、そして次男久之助も人生の岐路を迎えて。矢島家の主婦・珠世に安寧の日々は訪れるのか…。

目次■第一話 ぎぎゅう/第二話 巣立ち/第三話 佳き日/第四話 お犬騒ぎ/第五話 蛹のままで/第六話 安産祈願/第七話 剛の者/解説 縄田一男

カバー装画:深井国
デザイン:新潮社装幀室
解説:縄田一男
時代:弘化三年夏
場所:御鳥見役組屋敷、小日向中ノ橋に程近い大御番組屋敷、鬼子母神、下雑司ヶ谷幽霊坂、護国寺、水野忠邦家下屋敷、寛永寺黒門、清土村、稲垣対馬守下屋敷、内藤新宿・太宗寺、品川御鷹場ほか
(新潮社・新潮文庫・476円・2011/10/01第1刷・312P)
購入日:2011/09/29
読破日:2011/10/02

Amazon.co.jpで購入[文庫版あり]