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二本の銀杏 上・下

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二本の銀杏 上
二本の銀杏 上・下
(ふたもとのぎんなん)
海音寺潮五郎
(かいおうんじちょうごろう)
[幕末]
★★★★☆

海音寺さんというと、どうも大家のイメージが強くて、今まで敬遠していた。しかし、この本の解説で、司馬遼太郎さんがこの作品を高く評価していたという箇所を読んで、にわかに興味が湧いた。

読みはじめてみて、いい意味で期待を裏切られた。重厚さや息苦しさが全然なく、先へ先へと読み進めたくなるストーリーテリング見事だった。主人公の源昌房が、山伏という設定もよかった。

この源昌房は、作者の郷里(鹿児島・大口)の英雄・堀ノ内良眼坊をモデルにしているということ。郷士として重税に苦しみ悲惨な生活を送る農民の救済事業で活躍する反面、女性に対してバイタリティー旺盛な山伏の不気味さが渾然としていて魅力的であった。また、天保時代ではおなじみの藩家老調所笑左衛門が登場し、いい味を出している。

物語●赤塚村の郷士頭・北郷隼人介(ほんごうはやとのすけ)の屋敷で、部落の郷士らの主だった連中が十数人並んでいた。関所を守る任務を帯びた彼らは、領内の百姓らが逃散するところを取り締まり、抵抗するものを斬ろうとしたところを、同じ郷士の源昌房(げんしょうぼう)に邪魔されたのだ。そして、源昌房のしたことをめぐり、当事者を呼び出して、その陳述を聞くことになった…。

目次■逃散/夜這星/お国とあぐり/蒔いた種/魂のふれあい/海の風/先祖たずね/桃李の春/山寒む/新しい計画/月おぼろ/雨晴る/丸山の月/お香/忘れ貝/曼珠沙華/ささやき/紅い椿/渦(以上上巻)|魚によする心/暈を着た月の夜/呪術/その夜/日暮れの雨/蛇/亢龍の悔/その前夜/遠雷/花を砕く/共犯者/月に思う/人こそ知らね/雨しとど/光と暗/梢の星/解説 磯貝勝太郎(以上下巻)

カバー:木本百子
解説:磯貝勝太郎
時代:天保八年
場所:薩摩、長崎
(文春文庫・各505円・98/02/10第1刷・上388P、下421P)
購入日:98/02/11
読破日:99/05/04

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