一手千両 なにわ堂島米合戦


一手千両_なにわ堂島米合戦 (文春文庫)
一手千両 なにわ堂島米合戦
(いってせんりょう なにわどうじまこめがっせん)
岩井三四二
(いわいみよじ)
[経済]
★★★★☆☆

世界で初めて、整備された取引所における先物取引が行われたのは大坂の堂島米会所で、享保十五年(1730)のことだとそう。

「やった、やったぁ」(売りたい)、「とろう」(買い)の言葉が飛び交い、数百人の仲買が売買を成立させていく、市場の臨場感が伝わってくる。そして、米の先物取引(帳合米市場)の売買方法や米会所のシステム、相場の動きなどが詳述されていて、知的好奇心を満たされながら、読むことができた。

物語中で、昔は羽振りが良かったが結局は大負けしてすべてを無くした元仲買の銅六斎が吉之介に、「利食い千両」「理外の理」「損切りしたいときが底」「相場師は知恵より度胸」「不作に買いなし、豊作に売りなし」「高きをば、せかずいそがず待つは仁」など、相場の格言を教えるところが面白い。

そして、相場師として成長していく、吉之介が幼なじみの仇をとるために、帳合米相場で乾坤一擲の勝負を仕掛ける、大コーフンのクライマックスに物語は向かう。

ただ、経済について関心が薄くて、先物取引の仕組みを理解していないと、作品の世界を難しく感じるかもしれない。

本書は江戸中期(宝暦時代)の大坂を舞台にしていて、土地勘がない身には地理的なところで少しイメージしづらいところがあったが、大坂庶民の教育機関(後に官許学問所になる)だった懐徳堂についても触れられていて興味深かった。

主な登場人物◆
吉之介:米の仲買の小さな店の主
播磨屋弥五郎:米の仲買で、吉之介の幼なじみ
山城屋藤吉:米の仲買で、吉之介の幼なじみ
高岡作右衛門:寺子屋の師匠で、吉之介の学問所仲間
善太郎:唐高麗物商で、吉之介の学問所仲間
武兵衛:米問屋八角屋本店の主で、吉之介の父
小兵衛:吉之介の兄で、本店の跡継ぎ
清助:吉之介の大叔父
六兵衛:米の仲買で、吉之介の叔父
嘉助:吉之介の叔父で、尼崎の米問屋
庄左衛門:本店の番頭
十文字屋喜兵衛:米仲買の大物
柳屋甚九郎:十文字屋の側近
紀州屋忠兵衛:十文字屋の側近
仁三郎:十文字屋の子分
吾吉:山城屋の手代
清四郎:仲買店駿河屋の手代
入舟屋:元仲買の男
大坂屋:年行事(堂島米市場の代表)
上水の嘉兵衛:水役人(市場実務を取り仕切る)の幹部
銅六斎:相場の動きをよく知る老人
与平次:髪結いで下聞(下っ引き)
三吉:吉之介の店の丁稚
初嶋:新町の天神(太夫に次ぐ位の遊女)
新助:幇間

物語●大坂堂島で米の仲買を営む吉之介は、同業の幼なじみの藤吉と女郎の心中を不審に思い、同じ学問所・懐徳堂で学んだ、弥五郎、作右衛門、善太郎と、その死の謎を追う。やがて、藤吉が米相場の売買を装った博打を行っている現銀店を調べていたことがわかる。
その頃、吉之介が仲買をする堂島米市場の帳合米相場(先物取引)では、「買いの大明神」と呼ばれる新興の仲買・十文字屋が連戦連勝で大きな相場をものにして、大分限者として席巻していた…。
吉之介は、死んだ女郎を調べるうちに、天神・初嶋を知り、一目ぼれしてしまう…。

目次■第一章/第二章/第三章/第四章/第五章/第六章/第七章/第八章

イラスト:小倉マユコ
デザイン:関口信介
時代:宝暦十一年(1761)三月五日
場所:大坂・お初天神、堂島、浜通り一丁目、堂島裏二丁目、堂島中一丁目、堂島北町、新町、三郎右衛門町、曾根崎新地、船大工町、江戸堀、坐間神社、順慶町、天満天神近く、堺ほか
(文藝春秋・文春文庫・743円・2011/10/10第1刷・418P)
購入日:2011/11/11
読破日:2011/11/19

Amazon.co.jpで購入

コメント

コメント