占い屋重四郎江戸手控え


占い屋重四郎江戸手控え (【徳間文庫】)
占い屋重四郎江戸手控え
(うらないやじゅうしろうえどてびかえ)
池永陽
(いけながよう)
[痛快]
★★★★☆

湯島天神裏の貧乏長屋で、占い屋で生計を立てる浪人者・間瀬重四郎が活躍する連作形式の痛快時代小説。作者は、『雲を斬る』で第12回中山義秀文学賞を受賞した池永陽さん。

重四郎は、目の前に座った依頼人の顔を四半刻から半刻も睨みつけるように見ると、脳髄の奥に何らかの像が浮かび上がるという、天眼通の特技を持っていた。その重四郎のもとに、失せ物や人探しから、博打の勝ち負け、未来の運まで、いろいろなものを占ってほしいと客が訪れる。しかし、その天眼通の当たる確率は五度に一度ということから、騒動が巻き起こる。

一冊の本の中で、用心棒ものあり、ユーモアあり、チャンバラあり、盗賊ものありという、時代小説のもつエンターテインメント性を堪能できる。

重四郎の部屋に居候する十二歳のおさよとの共同生活を描いた「可愛い居候」のほのぼのとした話が気に入っている。芦田愛菜ちゃんのようなしっかりした子役キャラに翻弄される主人公がいい。

重四郎は天眼通のほかに、柳剛流(りゅうごうりゅう)の剣の遣い手でもある。柳剛流は、武州葛飾郡生まれの岡田惣右衛門が流祖で、幼いころから学んだ心形刀流に三和無敵流を加えて完成させたという。三和無敵流は、剣術、杖術、柔術、薙刀術などを取り入れた多彩な武術。

 臑打ちは薙刀術から出たものと推測されるが、戦国の世なら極めて尋常なこの技も太平の世ともなれば嫌われるのが道理で、多くの武士が冷ややかな目でこれを見ていたのは自然の成行きといえた。
「おや、せっかくの技を間瀬様はお遣いになりませぬので」
 しらっという庄兵衛に、
「そのような技を用いぬとも、拙者の剣は充分に強いからの」
 吐き出すように重四郎はいった。

(『占い屋重四郎江戸手控え』P.35より)


柳剛流は、司馬遼太郎の『燃えよ剣』をはじめ、敵役の遣う剣術として時代小説に登場することがあるが、主人公が遣うことは珍しい。

主な登場人物
間瀬重四郎:占い屋で生計を立てる浪人者、柳剛流の遣い手
神尾左内:百俵十人扶持旗本の次男坊で、重四郎の道場仲間
与一:重四郎と同じ長屋に住み、家でぶらぶらしている若者
太助:与一の遊び仲間
おみつ:重四郎と同じ長屋に住む、十七歳の娘で、不忍池近くの煮売屋で働く
庄兵衛:池之端で古着商「鈴の屋」を営む
おしげ:庄兵衛の娘
およね:庄兵衛の老母
忠助:「鈴の屋」の小僧
甚助:大工
おさよ:甚助の十二歳になる娘
おふね:重四郎と同じ長屋に住む左官屋の女房
与兵衛:金貸し
空木源内:金貸し与兵衛の用心棒で、無外流と居合いを遣う
利助:与兵衛の手下
柳田紋蔵:下谷三味線堀にある東軍流の小さな道場主
波江:紋蔵の妻で、前の道場主の娘
斎藤玄之丞:かつて紋蔵と同じ道場で腕を競った男
おさん:夜鷹
利吉:おさんのかつての亭主
備前屋五兵衛:廻船問屋の主
吉岡陣十郎:備前屋の用心棒
梅ノ市:按摩
筒井弥五郎:梅ノ市の用心棒
おふじ:梅ノ市のもとで働く小間使いの女
仁吉:岡っ引き
藤助:盗賊の男

物語●「天眼通の悩み」
占い屋で生計を立てる浪人・間瀬重四郎の湯島天神裏の貧乏長屋に、池之端で古着商「鈴の屋」を営む庄兵衛がやってきた。ここ数日、店の周りを怪しい者が徘徊している、押し込み盗賊の下見とも考えられるので観てほしいという。
重四郎の天眼通で見た像は、布団のなかでしっかりと抱き合っている男と女の姿だった。これでは、はした金にしかならない。
「ご主人の申した通り、これはやはり盗賊の類い、拙者の脳髄には四人の黒装束の姿が浮かびあがり申した。しかも、そのなかの一人は雲をつくような大男でござった」
重四郎は、「鈴の屋」に住み込んで用心棒をつとめることに…。

目次■天眼通の悩み/可愛い居候/老剣客の恋/夜鷹の宝物/一文字斬り/汚れた十手/闇の三兄弟/解説 縄田一男

カバーイラスト:村上豊
カバーデザイン:芦澤泰偉
解説:縄田一男
時代:明記されず
場所:湯島天神裏、池之端、不忍池近く、寛永寺脇、根岸、木挽町、吉原田圃、筋違橋門脇、相生町、市ヶ谷門、泉岳寺、ほか
(徳間書店・徳間文庫・648円・2012/02/15第1刷・395P)
入手日:2012/06/12
読破日:2012/06/23

Amazon.co.jpで購入

コメント

コメント