神無き月の十番目の夜


神無き月十番目の夜
神無き月の十番目の夜
(かみなきつきのじゅうばんめのよる)
飯嶋和一
(いいじまかずいち)
[武家]
★★★★☆☆

『雷電本紀』の作者の新作ということで、とても気になっていたのだが、帯の“大虐殺”という文字や農村が舞台ということで、何やら悲惨な物語のような感じがして二の足を踏んでいた作品を遂に読む。この本を推薦してくれたひょこひょこさんのおかげだ。(感謝しています。)

名作『雷電本紀』にも通じる、作者の視点の確かさや、清冽な語り口から、当初懸念していた題材の暗さが気にならない物語だった。

関ケ原の戦い直後という時代背景のもと、戦の経験のある大藤嘉衛門や月居(つきおれ)騎馬衆の石橋藤九郎と、辰蔵ら戦未経験の小生瀬の若衆たちの対比が面白かった。

月居騎馬衆の馬の育成をする厩頭・袋田の藤兵衛が、「月の満ち欠けと日の運行による秘伝の算術を駆使して」馬を産み出すという個所が、イタリアの馬産家フェデリコ・テシオを彷彿させて面白い。また、月居騎馬衆が馬への負担をできるだけ減らし、いざという場面に備えるという考え方も、競馬ファン、馬好きをうならせてしまう。

物語●奥州との境に近い常陸の山里、小生瀬(こなませ)の地へ急派された比藤村(ころふじむら)の旧騎馬衆の大藤嘉衛門は、悪い夢を見ているようだった。強烈な血の臭い、人影の無い宿場――いったい、この村に何が起こったのか…。関ケ原の戦いの記憶も新しい、慶長七年十月、古文書に数行記されたまま、歴史から葬り去られた事件の真実とは?

目次■序章/第一章/第二章/第三章

装幀:ミルキィ・イソベ
時代:慶長七年(1602)年
舞台:常陸・小生瀬。
(河出書房新社・1800円・97/6/25第1刷、97/10/3第3刷・339P)
購入日:97/10/29
読破日:97/12/30

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