闇の後醍醐銭
(やみのごだいごせん)
久住純<
(ひさずみじゅん)
[南北朝]
★★★☆☆
♪奇しくも『邪しき者』と併行して読んでいたのがこの作品。南北朝をテーマにした物語は、あまりないだけに、どうしても惹かれてしまう。この本は、後醍醐銭という聞きなれない言葉と、叢文社というあまり大きくないながらも、ときどき、「おっ」というような作品を刊行するので注目していた出版社から出されているということで、Get!してみた。
建武の親政当時の乾坤通宝という鋳銭づくりと普及のことが詳細に描かれていて興味深い。銭(経済的な側面)から、南北朝の動乱を見るという視点も面白かった。
物語●吉野衆の頭領の遺児・桂丸は、比叡山で八瀬童子たちと一緒に育てられたが、六波羅軍に追われて放浪の旅に出た。そして、吉野に辿りつき、そこで山の民・岩屋衆や鋳物師の集落・金屋衆と行動をともにすることになった…。
目次■山門の夕焼け/包囲された叡山/都落ち/郷民たちの一揆/山中の漂泊/吉野の山の民/神より賜りし枝/金屋の衆/神技の金細工/山間の行軍/熊野衆徒の蜂起/峡谷の屍/山里の夏/初冬の動乱/河内の悪党/吉野城の攻防/千早城の合戦/後醍醐帝還幸/鋳銭司/銭造り評定/元の国の紙幣/無謀な鋳銭計画/危険な護良親王/桂丸の暇乞い/帝の陰謀/銭の戦/ふたたびの動乱/落魄の冬/明日香の杜の殺戮/建武の落日/吉野の都/銭の徴発隊/名も知れず/帝の京都包囲作戦/後醍醐帝の遺言/黄金の銭造り/銭と鞭/海原に消えた乾坤通宝