寄場の仇 二本十手捕物控


寄場(よせば)の仇(かたき) (PHP文芸文庫)
寄場の仇 二本十手捕物控
(よせばのかたき にほんじってとりものひかえ)
早見俊
(はやみしゅん)
[捕物]
★★★★

時代小説の文庫書き下ろしで活躍されている早見俊さんの最新シリーズ。

細谷正充さんの巻末の解説によると、デビュー5年目で著作タイトルは60冊を超える(アマゾンで調べたら、2012年1月22日現在67冊だった)という。単純計算で、月1冊の刊行ということになり、すごいこと。一定以上のクオリティーを維持しながら、精力的に作品を発表されているという証し。

さて、この物語は、世を拗ねて喧嘩屋稼業で無頼の生活を送っていた若者・美代次が、岡っ引の寅蔵に出会い、人足寄場に入れられる。そこで寄場同心の波多野や、人足の音吉らのやさしさに触れ、ささくれ立った気持ちが平らかになり、人間的に成長していく。

一年近くが経って寄場を出ることになるが、身元引受人になったのは、何の面識のない聖天の龍蔵。龍蔵によると、寅蔵は十日ほど前に大川に落ちて溺れて亡くなったという。しかも何者かに殺された可能性もあるらしい。龍蔵は美代次に岡っ引を継ぐように命じるが…。

人から何かを命じられることに強い反発を覚える美代次がいやいやながら岡っ引修業に取り組む。そして、寅蔵の死の謎を追っていく過程が面白い。シリーズ第1作めというところで、お披露目編といった要素もあり、美代次の今後の活躍が楽しみになってきた。

文庫書き下ろしが中心の時代小説作家については、取り上げる人と作品が限られてしまっていた。そのため、早見さんの作品にはこれまでほとんど触れる機会がなかった。今後、もう少しチェックをしていきたいと思う。

主な登場人物◆
美代次:浅草の山猫と呼ばれ、喧嘩を生業にする若者
待乳山聖天の寅蔵:阿修羅の親分と呼ばれる、岡っ引
卯之吉:寅蔵の下っ引
お悠:卯之吉の娘
聖天の龍蔵:寅蔵の父で十手持ち
お由紀:美代次の母
お光:龍蔵の妾
神原慶四郎:龍蔵の賭場の用心棒をつとめる浪人
五郎太:賭場の帳場を預かる代貸
宇津木半兵衛:北町奉行所定町廻り同心
波多野助右衛門:人足寄場同心・役所詰
山中左馬之助:寄場奉行
森崎郡兵衛:人足寄場同心・見張鍵役
音吉:元飾り職人で、寄場の飾り職の手業所に従事する人足
お隅:柳橋芸者
お末:お隅の妹分の芸者
甚五郎:蔵前の金剛と呼ばれる、力士崩れの河岸人足
弥助:喧嘩小屋を仕切るやくざ者
剛太:伝法院の寺男
三吉:剛太の弟分
望月勘太郎:相州浪人

物語●女手ひとつで育ててくれた母お由紀が亡くなってから三年。美代次は、浅草奥山の喧嘩小屋(人間と人間が素手で殴り合う決闘場)での喧嘩見世物で、生計を立てる無頼の生活を送っていた。そんな美代次の周囲を岡っ引の待乳山聖天の寅蔵が嗅ぎ回っているという。二本十手を使い、阿修羅の親分と異名をもつ寅蔵に嗅ぎ回られる理由は思いつかない。
そして、喧嘩小屋での対戦相手の寺男の剛太とその取り巻きたちとの立ち回りとなった美代次は、現れた寅蔵にまったく歯が立たず、石川島の人足寄場に送られる。それから一年近くが経ち、人間的に成長した美代次は人足寄場を出られることに。しかし、身元引受人の心当たりなく、狐につままれた気分になったが…。

目次■第一章 喧嘩場の山猫/第二章 岡っ引の血/第三章 十手修業/第四章 寄場探索/第五章 非道の色恋/第六章 手柄と失態/第七章 真実の御用/解説 細谷正充

装画:安里英晴
装丁:上田晃郷
解説:細谷正充
時代:文政二年(1819)五月
場所:浅草奥山、浅草並木町、仲見世通り、浅草雷門、石川島人足寄場、待乳山聖天宮門前町、浅草田圃、浅草花川戸町、相伝寺、湊稲荷、越前堀、北紺屋町、駒形堂近くの稲荷、ほか
(PHP研究所・PHP文芸文庫・648円・2012/01/30第1刷・314P)
入手日:2012/01/19
読破日:2012/01/21

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