こいしり


こいしり (文春文庫)
こいしり
(こいしり)
畠中恵
(はたけなかめぐみ)
[市井]
★★★★

神田の町名主の跡継ぎの麻之助が活躍するユーモア市井小説「まんまこと」シリーズの第二弾。

表題作のほかに、三匹の子猫から化け猫騒動、そして大きな事件に発展する「みけとらふに」、百物語が語られた夜に起きた怪異譚が語られる「百物語の後」、落し物の神田明神の勝守をめぐって清十郎と吉五郎の間で起こる諍いを描く「清十郎の問い」、余命一年を告げられた大店の主の願いを聞くことになった麻之助が巻き込まれる騒動が綴られる「今日の先」、差出人不明の懸想文から、新婚の麻之助とお寿ずの間に不穏な空気が…(「せなかあわせ」)の全六篇を収録。

ミステリーをベースに、社会事件あり、怪異譚あり、恋ばなしありと、一話一話趣向を凝らした話が楽しめた。2作目になり、ますます、「まんまこと」の世界が広がってきた。それにあわせて、麻之助の町名主見習いぶりがだいぶ板についてきた感じがする。町名主といえば、玄関(ふつうの町人の住まいには玄関は許されていない)があり、その玄関で町内の揉め事を裁定していた。

「何しろ私は、そりゃ当てにされ見込まれている町名主の跡取りだからね。玄関で裁定したことだってあるし、…」(『こいしり』P.26より)


作者は、作品の舞台となる江戸の町(地名)を巧みにぼやかしている(両国や浅草といったランドマーク的な場所をのぞいて)。そのため、ふわふわとしたファンタジーっぽさととっつきやすさを与えている。この辺りが多くの読者に支持される要素の一つかもしれない。とはいえ、江戸の考証をおざなりにしているわけではない。

主な登場人物◆
高橋麻之助:神田の古町名主の跡取り息子
高橋宗右衛門:麻之助の父で、神田に八つの支配町をもつ古町名主
おさん:宗右衛門の妻
お寿ず:麻之助の許婚
野崎宮三郎:お寿ずの兄
八木清十郎:麻之助の親友
八木源兵衛:清十郎の父で、隣町の町名主
お由有:源兵衛の後妻で、麻之助の幼なじみ
幸太:お由有の息子
相馬吉五郎:麻之助の親友で、見習い同心
丈吉:岡っ引き
おこ乃:吉五郎の姪
お伊代:元筆屋の娘
辰之助:居酒屋笹屋の主でお伊代の亭主
お鶴:元の奉公人
貞吉:お鶴の亭主で、両国橋の遊び人の顔役
与助:廻り髪結い
長嶋磯右衛門:両国の盛り場の総元締
多賀屋:吉五郎が出入りする商人
梅丸:百物語の主催者
百一:百物語の参加者
おせん:二百五十石取の旗本太田孫九郎家で行儀見習いをする娘
山中屋:献残屋でおせんの父
塩谷:おせんの縁談相手
大倉屋角右衛門:札差でお由有の父
彦三:大倉屋の番頭
大岩屋正蔵:余命一年を告げらる炭屋の主
おゆら:正蔵の弟の娘
万次郎:大岩屋の手代で、おゆらの従兄弟
丸三:金貸し
大林:手習所の師匠
米津尚吾:元手習所の師匠

物語●ついに祝言をあげることになった麻之助。花嫁の駕籠を迎えようとしたそのとき、親友清十郎の父で高砂を謡うことになっていた源兵衛が卒中で倒れてしまう。祝言は日延べになって行われるが、卒中の源兵衛から「昔、訳ありだった二人のおなごが幸せに暮らしているか確かめてほしい」と頼まれた清十郎は仰天し、麻之助と二人でその消息を探ることに…。

目次■こいしり|みけとらふに|百物語の後に|清十郎の問い|今日の先|せなかあわせ|解説 細谷正充

装幀:南伸坊
解説:細谷正充
時代:明記されず
場所:日本橋の堀沿い、神田川、両国橋と新大橋の間、浅草近くの寺、吉原の先、神田明神、入谷、隅田川、回向院の南、上野の近く御徒士衆の組屋敷ほか
(文藝春秋・文春文庫・552円・2011/11/10第1刷・350P)
購入日:2011/11/22
読破日:2011/11/24

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