アイスクリン強し


Mightier Aisukurin (Kodansha Bunko) (2011) ISBN: 4062770768 [Japanese Import]
アイスクリン強し
(あいすくりんつよし)
畠中恵
(はたけなかめぐみ)
[明治]
★★★☆☆☆

『しゃばけ』シリーズや『まんまこと』シリーズなど、江戸を舞台にしたユーモア時代小説で大人気の畠中さんの新シリーズ。新シリーズは、明治(それも二十三年ごろ)の築地居留地や銀座を舞台にしていて、難しい時代を選んだチャレンジングな作品。

明治二十三年といわれてもどういうことが起こった時代なのか、なかなかイメージしにくい。そのせいか、物語の序で、維新から二十三年までのめまぐるしい時の流れについて、触れられていた。ちなみに日清戦争は明治二十七年に開戦する。
(女学生の沙羅の登場から、大和和紀さんのコミック『はいからさんが通る』を想起したが、あちらは大正時代が舞台だった。)

主人公の皆川真次郎は、「寂しがり屋でお人好し」と友人から評される性格だが、剣の腕はからっきしだが、ピストルの腕はたいしたもので、男気があって、洞察力もあり、語学力もあり、明治のヒーローにぴったり。何よりも西洋菓子をつくる、パティシエとしての腕が見事で、作中でクリームケーキやワッフルスなどスイーツを作るシーンが颯爽としている。

最近、江戸を舞台にした料理小説がブームになっているが、目先を変えたい人には、明治のスイーツ小説もおすすめかも。

物語で、真次郎とともに、さまざまな事件を解決する良き仲間たちが、「若様組」と呼ばれる元旗本の跡継ぎで今は巡査をつとめる若者たち。とくに、長瀬との掛け合いが面白く『まんまこと』の麻之助と清十郎の名コンビに匹敵し、笑いを誘う。畠中さんらしいユーモアが生きている。

主な登場人物◆
皆川真次郎:西洋菓子屋「風琴屋」の店主。居留地ではミナと呼ばれる
小泉沙羅:真次郎の昔なじみの女学生
小泉琢磨:沙羅の父で、貿易商で成金
滝川:小泉家の使用人頭
長瀬:巡査で「若様組」のリーダー
園山:巡査で「若様組」の一員。超イケメンながら歩く凶器と呼ばれる
福田:巡査で「若様組」の一員
小沼:巡査で「若様組」の一員
高木:巡査で「若様組」の一員
林田:巡査で「若様組」の一員
相馬小弥太:某松平家一万一千石の元藩士のせがれ
ケイト・パーク:女学校の教師で、沙羅の恩師
安野一馬:万年町の親分
古河:安野と万年町の貧民窟を二分する親分
笹本:長瀬家のじいやの息子
野々山かの子:万年町の長屋に住む美少女
紫堂志奈子:紫堂子爵の姪で、女学生で沙羅と同じ学校に通う
丹羽:多報新聞の記者
杉浦:丹羽の上司
多賀村:多報新聞の記者
三津谷:新聞社に乗り込んできた男
西宮浩光:西村伯爵の弟の次男
大河出泰時:警視
加賀三太郎:東京専門学校の元学生で、自由民権運動家
楠田頼子:沙羅の女学校での友人

物語●「江戸」が「明治」という名に改まり、西洋文化が日本に大量にもたらされ、時が急に速くうつろうようになった、明治も二十三年。築地の居留地で孤児として育った皆川真次郎は、西洋菓子屋風琴屋を開店した。
その風琴屋に、昔なじみの長瀬ら三人の巡査が、真次郎のつくる西洋菓子を目当てにやってきた。いずれの旗本の跡取りで、維新で禄を失い、金に困っている若殿様のなれの果てで、なけなしの教養を頼りに試験を受け、警官という官吏の身分の端に採用され、糊口ををしのいでいた。そんな徳川方の元身分高き者たちが警察で自然と集りグループをつくり、『若様組』と呼ばれていた。
そんな『若様組』と真次郎のもとに、『若い御仁方へ』空始まる、謎解きをすべしという差出人の名前のない風変わりな挑戦状が届いた…。

目次■序/チョコレイト甘し/シュウクリーム危うし/アイスクリン強し/ゼリケーキ儚し/ワッフルス熱し/解説 チョコレイトをかじってみれば、文明開化の味がする 福田里香

カバー装画:丹治陽子
カバーデザイン:大久保伸子
解説:福田里香
時代:明治二十三年
場所:築地の居留地近く、銀座、上野、下谷万年町、鍛冶橋の警視庁、根岸、浅草の外れ、京橋北、ほか
(講談社・講談社文庫・552円・2011/12/15第1刷・341P)
購入日:2011/12/19
読破日:2011/12/24

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