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捕物犬金剛丸 深川門仲ものがたり

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捕物犬金剛丸 深川門仲ものがたり
捕物犬金剛丸 深川門仲ものがたり
(とりものけんこんごうまる ふかがわもんなかものがたり)
岳真也
(がくしんや)
[捕物]
★★★★

文庫書き下ろし。

ある企画で、犬が登場する「文庫書き下ろし時代小説」を探しているときに見つけた一冊。犬が活躍する時代小説は多くないが、文庫書き下ろしとなるとその数はとても少ない。本書のほかには、稲葉稔さんの『武者とゆく』が思い出されるぐらい。

作者のあとがきに代えてで、「すべての犬好きの歴男歴女に捧ぐ」と書かれているとおり、犬好きの時代小説ファンにはおすすめの一冊。深川を舞台に名犬が活躍する捕物小説である。

新米駆け出しの下っ引きの裕太が、大晦日の日に借金取りから逃れために潜り込んだ空の天水桶の中で、瀕死の犬を見つけたところから物語が始まる。

やがて、身分の高い者が飼っていた犬らしいことがわかり、裕太は事件に巻き込まれていく…。

裕太が助けた犬は甲斐犬のメスで、永代寺門前の野良犬の群れの頭領であるマタギ犬のタモンとの間に仔犬を設ける。捕物犬金剛丸の誕生である。

 ありがとう、と素直に頭をさげて、土間におり立つと、裕太はなにげなく金剛丸のほうに眼をやった。
 すると、背を丸めて寝ていた金剛丸め、首をもたげ、間をおかずしてすっくと起きあがった。
(なんだ、出かける気、充分じゃねぇか)
 それも、ただの散歩という気配ではない。
 吠えはしないが、足踏みをくりかえし、
「おいおい、おれといっしょに捕物にでも行こうってふうだな」

(『捕物犬金剛丸』 P.237より)

愛犬家の著者ならではの犬の描写が楽しめる一冊。

主な登場人物
裕太:下っ引き
謙吉:元岡っ引きで、飾職人
お涼:裕太の幼なじみで、煮染め屋「染八」の娘
八太郎:「染八」の主人で、お涼の父
お里:お涼の母
安田屋の半兵衛:酒屋の主
相原勝治郎:むじな長屋に暮らす浪人者
八目の登喜蔵:深川佐賀町を縄張りにしている岡っ引き
お絹:登喜蔵の女房で、船宿の女将
嘉吉:登喜蔵の子分で、籠物職人
弥平次:登喜蔵の子分で、ぼて振り
平作:むじな長屋に暮らす大工
おふみ:平作の女房
竹富宗庵:町医者
五郎衛門:むじな長屋の大家
建隆:永代寺の僧
鶴丸:常陸国陸中藩藩主の嫡子
桐生松之助:陸中藩藩士で、元留守居役のふところ刀
池田宗十郎:陸中藩藩士で、小納戸役
狩野辰左衛門:陸中藩藩士で、鶴丸の守り役
時任又三郎:南町奉行所定町廻り同心
唯八:平作の大工仲間
おかね:唯八の女房
松川屋甚兵衛:北浅草の両替商
忠次:唯八の大工仲間の遊び人
お栄:日本橋の太物問屋大村屋の内儀
三次:大村屋の手代頭
名村丹三郎:市原座の女形役者
甲星:雌の甲斐犬
タモン:またぎ犬
金剛丸:タモンと甲星の間の仔

物語●安田屋の半兵衛が溜めていた酒代の「掛け取り」にやってくる師走の大つごもり、むじな長屋に住む新米の下っ引きの裕太は、空の天水桶に身を隠す。と、その中に血まみれの犬が投げ込まれていた。息も絶え絶えで瀕死の犬に気づいた裕太は、安田屋の「掛け取り」のことも忘れて、犬を天水桶から外に出した。

何やら身分が高そうな人が飼っていたらしい甲斐犬で、裕太は懸命の看護をする。元気になった犬はお甲と名付けられて裕太が飼うことに…。

目次■第一章 手負いの甲斐犬/第二章 若ぎみ救出/第三章 金剛丸誕生/第四章 初手柄/終章 再会/すべての犬好きの歴男歴女に捧ぐ――あとがきにかえて

カバーイラスト:室谷雅子
カバーデザイン:芦澤泰偉
時代:文化七年(1810)の大晦日
場所:門前仲町、三十三間堂、富岡八幡宮、佐賀町、洲崎の浜、永代寺、海辺大工町、浅草、日本橋通一丁目、木挽町、ほか
(祥伝社・祥伝社文庫・562円・2011/04/20第1刷・284P)
入手日:2012/05/25
読破日:2012/06/03

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