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棒手振り同心事件帖 皐月の風

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棒手振り同心事件帖 皐月の風
棒手振り同心事件帖 皐月の風

(ぼてふりどうしんじけんちょう さつきのかぜ)

千野隆司

(ちのたかし)
[捕物]
★★★☆☆☆

文庫書き下ろし。
『初水の夢』に続く「棒手振り同心事件帖」シリーズの第2作目。主人公の雀太郎は、去年の四月まで、日本橋通四丁目の表通りに店を構えていた大店の両替屋大空屋の跡取りで、若旦那と呼ばれていた。ところが、三代目である父雲右衛門が大空屋を潰してしまい、店も土地も人手に渡り、深川北川町の裏長屋に越してきた。

雀太郎は、父子二人、食うために手っ取り早くできる棒手振り稼業を始めた。そして、ある事件を通じて、北町奉行所定町廻り同心の磯貝八郎太と知り合い、八郎太に気に入られて手先の真似事をするうちに、八郎太の一人娘薫ともなじむようになり、婿養子になること…。

大店の若旦那から棒手振りに落ちぶれたと思ったらすぐに同心の婿養子になる。難事件に関わっても、持ち前の頭の回転と九鬼神流棒術ですっきり解決。
こんなにとんとん拍子にうまくいくのかなあと思いながらも、読み味の良さに乗せられて、2作めも楽しく読む。

第一話の「お宝争碁」の物語がユニーク。犯人探しも面白いが、囲碁の対決シーンも門外漢ながら楽しめた。

主な登場人物
雀太郎:笊を商う棒手振りで、元両替屋大空屋の若旦那
雲右衛門:雀太郎の父で、元大店の両替屋の主人だが、店を潰して、今は囲碁を教えて生計を立てる
磯貝八郎太:北町奉行所定町廻り同心
薫:磯貝の一人娘
仙道郷四郎:北町奉行所定町廻り同心で、雀太郎の養父となる

「お宝争碁」
和泉屋長四郎:浅草天王町の札差
澤登枡之助:公儀御徒衆で、囲碁の名手
紗枝:枡之助の妻
丈太郎:枡之助の倅で十三歳
日達:僧侶で、争碁の出場者
染吉:丸薬売りで、争碁の出場者
伊予屋喜兵衛:繰り綿問屋の隠居で、争碁の出場者
楠本隼人正:家禄二百俵無役小普請組で、争碁の出場者
青山雷三郎:無頼の侍
川口屋:札差
大垣屋武左衛門:札差
豆造:駕籠舁き

「朔日祝言」
江与:千七百石の旗本貫井平右衛門の正室
貫井伝之助:平右衛門の次男
仁右衛門:筑前屋の主人
六太郎:呉服商筑前屋の手代
お雅:仁右衛門の娘で、雀太郎の元の許婚
文吉:三十間堀の船宿如月の船頭
巳之助:葉茶屋三河屋の手代
おつな:楓川河岸の田楽屋の手伝い女
久次郎:堀留二丁目に住む扇子職人
田近玄之進:大東流剣術道場田地下道場の主
丹沢吉次郎:田近道場の門弟で、家禄百五十石の御家人の次男坊
銀造:盗品専門の仲介人

「皐月の風」
芳吉:七歳の少年
美代吉:芳吉の父で薬種の振り売りを生業にしている
定七:舂米屋常陸屋の主人
五左衛門:薬種屋伊勢屋の主人
鬼殺しの鋳蔵:盗人の頭
お紺:常磐津の師匠
午次郎:浅蜊の棒手振り

物語●「お宝争碁」雀太郎の父、雲右衛門は、囲碁好きの八名の札差が企画した『お宝争碁』を見物する。札差の旦那衆がそれぞれ腕利きの棋士を伴って参加し、一等になると、棋士と札差が百両ずつを受け取るという。初日の対局が終わり、その夜、一等候補の有力棋士が何者かに殺される事件が起こる…。

「朔日祝言」雀太郎の許婚であったお雅の実家、呉服商筑前屋の手代が、顧客のお屋敷へ伺って納めた品の残金二十七両を受け取り、反物二十五両相当を持ったまま行方がわからなくなってしまった。自身の祝言を目前に控えて、前の許婚家の苦境を救うべく雀太郎は奔走する…。

「皐月の風」棒手振り姿の雀太郎は、汐留川の手前で、六、七歳ぐらいの男児芳吉に呼び止められた。父親が一昨日からいなくなり、探してほしいという。父一人子一人で暮らしていた、唯一の肉親である父親美代吉は、前は薬種問屋の番頭だったが、今は薬種の振り売りを生業にしていた…。

目次■お宝争碁|朔日祝言|皐月の風

カバーイラスト:宇野信哉
カバーデザイン:妹尾浩也
時代:明示されず
場所:下柳原同朋町、新シ橋、下谷二丁目、深川北川町、八丁堀、本所御竹蔵、深川万年町、深川元町、天王町、永代寺門前山本町、京橋南伝馬町、日本橋浜町堀西、熊井町、山城河岸、兼房町、深川東永代町、ほか
(学研パブリッシング・学研M文庫・638円・2012/05/22第1刷・269P)
入手日:2012/08/25
読破日:2012/09/10

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