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棒手振り同心事件帖 初水の夢

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棒手振り同心事件帖 初水の夢棒手振り同心事件帖 初水の夢
(ぼてふりどうしんじけんちょう はつみずのゆめ)
千野隆司
(ちのたかし)
[捕物]
★★★★

最近、幅広い活躍ぶりを見せている千野隆司さんの新シリーズ。

主人公は、以前は日本橋の大店の若旦那だったが、店が潰れて、今は深川の裏長屋に暮らす、棒手振り稼業の若者・雀太郎。父雲右衛門は家業に身が入らず、店を潰した五十絡みのオヤジ。素寒貧で、借金の尻を倅に回しても恥じることのない太平楽な男。母は家が潰れて二月後に、心労から亡くなっている。

設定だけ聞くと暗く悲惨な境遇だが、物語は明るい。雀太郎は、もともと体を使うことが嫌いでなく、人に頭を下げるのも苦痛でない。代々続いた店を失ったのは残念ではあるが、くよくよしても以前の暮らしに戻れるわけではないと、気持ちを早く切り替えて、棒手振り稼業に精を出していた。

そんな雀太郎も、元の許婚のお雅に祝言の話があると聞くと、衝撃であり、心穏やかではない。そして、最初の事件に巻き込まれる…。

このシリーズの魅力は、若旦那から棒手振りに大きく境遇の変わった主人公の雀太郎。棒手振りらしく、天秤棒を捕物の際の武器に使っている。若旦那時代に、九鬼神流の棒術で奥伝の免許を得ていて、侍の手練の剣にも引けを取らない。

雀太郎の青春と人間的な成長も描かれ、爽やかな読み味の捕物小説。

主な登場人物
雀太郎:日本橋通町の両替商大空屋の若旦那だったが、店が多額の借財を作り潰れて、棒手振りとして竹笊を売る
雲右衛門:雀太郎の父で、大空屋の三代目で店を潰す
磯貝八郎太:北町奉行所定町廻り同心
薫:八郎太の娘
お楽:黒江町で小料理屋を商う後家
舟右衛門:新四日市町の酒問屋和泉屋の主
舟太郎:和泉屋の若旦那
千之助:和泉屋の番頭
お雅:雀太郎の元の許婚で、京橋南伝馬町三丁目の呉服商筑前屋の娘
豊吉:三郎兵衛配下の船頭
宇之助:和泉屋の元手代
粂蔵:渡り中間
後藤丈三郎、浪人
房吉:渡り中間
竹内喜久兵衛:和泉屋の用心棒
お里:小料理屋『菊邑』のおかみ
ときじろう:お里を殺めた侍
布施源左衛門:新大御番組頭で家禄七百石の旗本
綱次郎:鉄砲洲本湊町の田楽屋『つな屋』の主
お梅:綱次郎の女房
与兵衛:日光街道越ヶ谷宿の旅籠河内屋の主
九兵衛:越ヶ谷の百姓
大垣屋忠右衛門:千住宿を取り仕切る貸元の親分
辰七:小塚原町を仕切る掃除屋の上州屋の親分
常吉:辰七の側近
角井枡五郎:辰七の用心棒

物語●「雪の狐火」日本橋の大店両替商大空屋の若旦那だった雀太郎は、三代目の父親雲右衛門が店を潰し、今は深川北川町の裏長屋住まい。天秤棒の両端に、竹の笊を山盛り括り付けて、棒手振り稼業を始めて七ヶ月。この商いにも、だいぶ慣れてきたところ。父親から、大空屋が潰れて縁談が破談になった元の許婚のお雅の祝言が決まったという話を聞く。どうしても相手になる舟太郎という男の顔が見たくなった雀太郎は…。

「初水の夢」北町同心磯貝八郎太の娘薫は、友達の家からの帰りに、万年橋の下にある船着場で、武家の男が町屋の女と並んで歩く後ろ姿を見かける。舟に乗り込もうとしてした男は、刀を抜いて女の脇腹を突き刺すところを見かける。男はそのまま舟で逃げる。薫は、棒手振りの雀太郎の手を借りて、逃げた男の行方を追う…。

「新春縁結び」鉄砲洲本湊町の裏通りにある田楽屋の「つな屋」は、無口で無愛想な亭主の綱次郎が板場で田楽を焼き、女房のお梅が客の応対をしていた。ある日、「つな屋」に遊び人ふうと浪人者がやって来て、店の客といざこざを起こした。店の中で喧嘩騒ぎになっても、出てくることはなく、意気地なしで知られていた主人の綱次郎が浪人者を撃退した。しかし、その翌日から、女房のお梅の姿が店から消えた…。

目次■雪の狐火|初水の夢|新春縁結び

カバーイラスト:宇野信哉
カバーデザイン:妹尾浩也
時代:明示されず
場所:新四日市町四丁目、深川北川町、南伝馬町三丁目、下谷善徳寺、箱崎町、北六間堀町、菊川町、猿江御材木蔵、市谷御門、万年橋、熊井町、八丁堀、北森下町、浜町河岸、鉄砲洲本湊町、越ヶ谷、千住、ほか
(学研パブリッシング・学研M文庫・638円・2011/12/27第1刷・283P)
入手日:2012/04/08
読破日:2012/04/25

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